第55話 蘇りし黄金の血筋

「フェ、フェルン?!」


「な?!! これは一体どうゆうことだ!!」


 やつは、目を見開いて驚いている。かくゆう僕達も驚いている。なんせ、急に遺体が光り輝き始めたのだから。


 よくみると、輝いているのは飛び散った大量の血で、黄金色に輝いている。血は、そのまま斬られた部位へと集まっていき、接着剤のように部位同士を繋ぎ合わせていく。


 そして……。


「戻って……きた……」


「フェ、フェルン!! 大丈夫なんですか!? というか生きているんですか?!!」


「えぇ。大丈夫よ、ニゥイル。なんとか生き返ったわ……」



 数分前。


「はぁ……はぁ……」


 目の前に、黄金の空間が広がっている。体中には、言葉にならないほどの痛みが駆け巡っている。もう何も……考えることができない。


 そんな状況に陥っていると、突然目の前に見覚えのある姿が映った。その女性は、満足気な顔をしながら礼儀正しい姿勢で立っていた。

 というかなんで喋れているんだ? なんで目が見えているんだ?


「あなたの無くしたものは、すべて再生させました。五感はすべて元通りになっているはずです」


 た、確かに五感が元に戻っている。シュリンさんの姿が見えるし、彼女の言葉も聞こえる。それに、舌が存在する感覚がする。というか、いつの間にか痛みが消えている!!


「どうやら実感できたようですね。それでは、本題に移りましょう。まず、あなたは今死んでいます」


 ……うん。それに関しては覚えている。斬られた時の痛みや感情なんかも、鮮明に覚えている。あんな思いは……もうしたくない……。


「これで2度目の死となりますが、気分はいかが?」


「聞かなくてもわかるでしょ。最悪よ」


「そうですね。普通はそうですよね。そんなあなたは今、水晶玉を破壊され、能力が使えない状態にいます。これはいいですか?」


「えぇ……はっきりと覚えているわ……」


「この状態のまま戻っても、あなたは再び殺されるだけ。死のループスパイラルです。そこで、です。特別に、時読の発動条件を、意識を集中させることに変更しようかと思います」


「え?!」


 マジ? ほんと? それだと、道具を持つ必要がなくなるから動きやすくなるし、両手が自由に使えるようになるじゃんないか!!

 でも、何か裏がありそう。


「ただし、その条件で時読を使えるのは2回まで。1回使うたびに遺伝子が傷つき、2回目を使うと遺伝子の半分が傷つき、数百年先まで黄金血殻が使えなくなってしまいます」


「イデンシ?」


「おっと、これは失礼しました。まだこの時代には無い概念でしたね」


 何この人。未来からきたの? それとも、私に寄生した外来人? ……考えても仕方がない。

 それより、能力についてだ。今の話を聞く限り、時読は2回しか使えないが、使うまでの間、黄金血殻による身体能力強化はなんぼでも使えるらしい。

 これまで以上に慎重にならなければ……また死ぬ。


「それでどうしますか? 覚悟は決まりましたか?」


「……えぇ、とっくの昔に決まっているわ。すべてをなげうつ覚悟なんて!!」


 やってやる。何回死んだとしても、何回悶絶する痛みを味わっても、私には……必ず成し遂げなくてはならない、絶対の目標がある!!!


「……その気高き覚悟。承りました。それではお行きなさい。あなたを思う仲間たちの元へ……」



 フェルンは、輝きながら立ち上がると、光が消えゆくのとともにゆっくりと目を開けた。


「戻って……きた……」


 そんなフェルンに、ニゥイルさんは目から大雨を降らせながら大声で叫ぶ。


「フェ、フェルン!! 大丈夫なんですか!? というか生きているんですか?!!!」


「えぇ。大丈夫よ、ニゥイル。なんとか生き返ったわ……」


 その声にフェルンは、喜びや悲しみ、疲れといったものが混じったような声で返答した。

 彼女が生き返ったことに、僕はすっころびそうなぐらいに驚いた。1度死んだ人間が蘇る瞬間なんて初めてみた。これも、前彼女が言っていた黄金の血のせいなのだろうか……。


 そんな状況を誰よりも驚愕していたのは、やつだった。


「な……ど、どうゆうことだ!! なぜ死人が生き返っている!!! この世の理に反しているぞ!!!!!」


「まぁ、当然の反応よね。私も最初はそうだった。こうも簡単に蘇ると、自分でも感覚がマヒしそうだわ」


 そんなさも当然かのように淡々と話すフェルンに向かって、僕は話しかける。


「だ、大丈夫なのか? フェルン」


「えぇ、大丈夫よ。体が少し重いぐらいで、他はなんともないわ」


「そうか……それならよかった……」


「ありがとう、心配してくれて。それよりも……」


 彼女は、すべてを覚悟した目であいつの方を向く。右手には短剣を持ち、心なしか髪色がここに侵入する時よりも濃くなっているように見えた。


 僕とニゥイルさんは、フェルンの動きを追いかけるようにして同じ方を向く。


「あぁ……そうだな。あいつを倒さないとな」


「こんの悪魔どもがぁぁぁ!!! 世に放たれる前に、この俺がぶっ殺してやるぅ!!!!!」


「やれるもんならやってみろよ。このボケナスがぁ。この僕を誰だと思っている。知っとるやつは知っとる。知らんやつは知らん。その者の名はカルターナ!!! この邸宅を、お前の葬式場に変える男だ!!!!!」


 もう、我を見失うようなことは金輪際しない。やつを倒す作戦なら数秒前に思いついた。今は、あいつを倒すことに全神経を注ぐんだ!!!


超集中状態フルモード!!!」

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