第6話〜土佐煮〜
遥か彼方に灼熱の光槍。
相棒のへそのゴマと共に、日課の暴走族とカーチェイスをし、勝ち逃げしてきた崖際の境内で今日もひとり。
「ギリギリの日課だったな。みなさんも是非。」
木陰とタケノコに扮して、神社の備え付けのマイクに向かって、レジ袋を揉む音波をぶつけてサイバー空間に投擲している。へそのゴマはマイクの隣で仮眠を取っている。
『【日本の風景】焚き火【ASMR】』と称してレジ袋の音を垂れ流しているのは些か靄が残るが、自分の身体から土佐煮が産出されるよりかはマシだと言い聞かせる。
タケノコの姿の時に幾度となく土佐煮になって自滅したことで、少々磨り減っている奇怪な爪が何本か生まれてしまった。食べてみたいのだが、毎度の如く蒸発してなくなっている。蒸発するまでボコボコに土佐煮に圧をかけたつもりは無いのだがな。
寝て起きると、稀に爪が1本新品になっている事があるのは気のせいだろうか。その時に限って部屋から異臭がするので芳香剤が破裂している。散。
思いに耽っていると、遠くから自分の名を呼ぶ、けたたましい程の声が聞こえて来るのに気が付いた。まるでペンギンの群れの様だ。海に還ってくれないかな。
神社がかなりの高さの高台にあるためか、ペンギンの群れがさながら汚泥に嵌るかの如くちんたらと這っている。マスコットのようで愛らしいペンギンを横目に、レジ袋を揉み続ける。
平地にたどり着いたペンギンの群れが、一直線に自分のところに向かってくる。タケノコに必死になっている動物共が愛らしくてしょうがない。
自分の目下に来たペンギンたちが椅子を並べ、テントを建て、鍋の準備を始めた。
「今日は土佐煮にするからなー。丁度そこに唐辛子も落ちているしな。スパイシーだぜ。サンキュー!」
ありがとう、相棒。そしておれはショゴス。今日の晩飯はペンギンだ。今日も爪が磨り減る。
遥か彼方に冷涼の碧海。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます