第4話いじめを行えば退学!
いじめが横行し続けてから一ヶ月近くの時間が経っていた。
彼女はお昼休みは生徒指導室で俺と過ごし、授業にも真面目に取り組む模範的な生徒になっていた。
休み時間には授業の振り返りを職員室に聞きに来るような優秀な生徒となっていた。
それも必然的な話である。
生徒との間に不和が生まれれば身近な大人と関わるようになる。
そのため白河恵の完全なる信頼を受けるための布石を打つ為に行動に出る。
生徒指導のおばさん教諭に聞こえるように職員室を訪れた白河恵と話をした。
「偉いですね。授業の復習を尋ねにくるだなんて。敵にも自分にも立ち向かえるだなんて大人でも出来ませんよ。素晴らしいです」
敵という言葉を強めに発音すると思った通りおばさん教諭は顔をしかめていた。
そして、彼女が職員室を後にするとその教諭は俺を呼び出した。
「野村先生。ちょっといいですか」
それに返事をするとそのままおばさん教諭の席に向かった。
「何でしょうか?」
「白河さんは何か問題を抱えているの?」
その言葉を耳にして俺はほくそ笑みたいのを押し殺した。
「えぇっと…。彼女の名誉の為言いにくいのですが…」
「構いません。他言無用にします。言ってみなさい」
その言葉を待っていた。
やっと訪れたチャンスを一撃で始末するには的確に事実を盛らずに話すことが大切だ。
「彼女は入学当初から目立っていましたから、それを僻んでいる生徒が多いそうです。隠れていじめが横行しているらしく…その相談を受けていたのですが彼女は戦うと言って他の先生には言わないようにと忠告されました。毎回限界かどうか確認していますし、その様な兆候も見受けられません。昼休みは生徒指導室で一緒に過ごして最近では笑顔も増えました。ただしクラスでは居場所がないようです。私もそれは歯痒いところでありますが次第にいじめも鎮圧化されると思います。今下手に大人が手を出せば彼女の心が折れないか心配で黙っていました。申し訳ありません」
そこまでつらつらと口を開くとおばさん教諭は何度も頷いた。
「いじめとはどのようなものですか?」
「はい。トイレで水浸しにされたり直接的に暴力を振るわれたこともあるそうです。陰湿なものから直接的なものまで多種多様で…。本当に可哀想なものもあって…。きっと凄く辛いはずなんです。それなのに彼女は精一杯に頑張って生きています。歳下の少女ながら本当に尊敬します」
その言葉を聞いた正義感に強いおばさん教諭は青筋を立てて怒りを顕にした。
「いじめを行っている生徒の名を教えて下さい」
最終的にその言葉を待っていたと言っても過言ではない。
俺は今まで昼休みに白河恵と食事を取りながらメモをしていた生徒の名をリストにしていてそれをおばさん教諭に見せた。
「ここに書いてある生徒が主犯格です」
そこには数十名の生徒の名が書いてあり、いじめの悲惨さを物語っていた。
「こんなに…!今から全員呼び出します!事情聴取の末、謹慎または退学も視野に入れます!野村先生、本当に感謝します。白河さんが自殺などをせずに今でも一生懸命に学校に来られているのは先生のおかげです。これからも白河さんの様子を見てくださいますか?」
「もちろんです」
そして、校内放送でいじめの主犯格は別々の部屋で一人づつ取り調べを受けていき翌日にはその全員が罪を認め退学と相成った。
「当校ではいじめを絶対に許しません」
後日開かれた全校集会では異様な光景が繰り広げられていた。
一年生だけが異様に数が少なくその異常性は他学年にも見て取れるようだった。
「当校では以前、いじめを原因にその生命を断った少女がいました。そしていじめから守ってあげられなかった教師も心を病んで実家に帰省し今でも定職につけない暮らしをしています。わかりますか?いじめは他人の人生を狂わせます。当校の教師はいじめを絶対に許しません。今後、バイト先や進学先でその様な光景が待っていても当校では絶対に許しません。何が何でもです。停学などの謹慎処分で許されると思わないでください。見つけたら必ず一発退学にします。いじめとはそれだけ重たい罪なのです。それなので皆さんはその様なサルの真似事はせずに人間らしく知的に振る舞ってください。一年生12名の生徒はいじめに加担していたため全員が退学となりました。もしもまだ当校にいじめがある場合、どの先生にでも良いのでご相談ください。これはチクリではないのです。正義です。ただ虚偽の申告をした場合は同じ措置を取らせていただきます。以上で私からのお話を終わりにさせていただきます」
校長が演説のように話を進めると静かな拍手が体育館には鳴り響いていた。
そして、所属する生徒が少なくなったクラスで白河恵の居場所は出来始めていた。
それでも彼女は未だにお昼休みは生徒指導室で過ごしていた。
「先生すごいね!本当にいじめはなくなったし最後は私が笑ってる!本当にありがとう!」
彼女は満面の笑みを浮かべていて、その顔が元恋人の里央にそっくりで俺は苦笑する。
「いいんですよ。当たり前なことをしたまでですから。それに直接動いてくれたのは他の先生方ですからね」
などと自分を卑下するようなことを言うと彼女は首を左右に振る。
「先生がいなかったら私自殺してたかもしれないから…」
その言葉を耳にして内心でほくそ笑んだ。
「そんな事言わないでください。白河さんならこれから何があっても戦い抜けますよ。私は何も心配していません」
「ありがとう…先生…」
彼女は潤んだ瞳を俺に送ってきて次の目標も恙無く進行していると気付く。
「夏休み前には三者面談もあります。勉強は疎かにしないでくださいね」
その言葉に彼女は頷いて応えると久しぶりにいじめから解放された生活を送るのであった。
第二目標完了! 100/100
第三目標、白河里央との再会。 91/100
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。