第26話 本当の黒幕
落ち着かないまま次の日を迎えた。
リコも暴露したあとすぐに眠り、タケシは暴露の途中ですでに寝ていたため、朝から二人は元気だった。
「昨日大丈夫だった?」
呑気なものだ。
こっちは色んなところに気を回して大変だったというのに。
「問題なかったよ」
二人とも記憶が曖昧な様子だった。
朝になりアレクも帰ってきた。
「ただいま!」
寝ていた二人は状況が呑み込めていないようだった。
「昨日しずくを送ってどうなったの?」
二人が理解できるよう質問をした。
「告白したんだけどさ、お酒も入ってる状態で言われてもお互い半信半疑になってしまうから今は答えを出せない」って。
「そっか。でもこれからってことだな!」
昨日のしずくの状態でそこまで考えられていることが疑問だった。
合わせて、昨日のリコの最後の暴露。
「実はさ......カスミとキョウコの問題のときあったじゃん?あのとき、いろんな人の話を聞いてたんだけど、カスミに、キョウコに対して“仕返し”しようと言い出したのはしずくだったらしいんだよね」
しずくの意図が分からなかった。
ただ、終わったことだったのと、アレクのこともあって、今は言及しないことにした。
学校も残り数日となり、まわりは冬休みの予定作りに励んでいた。
俺は年末年始は良くも悪くも予定が決まっているため、違う焦りがあった。
“どう乗り切るか”
そもそもどんな年末年始を過ごしているのか、予想外の出来事は起こらないか、将来のことなど聞かれたら何と返答するか。
頭の中は答えのない自問自答を繰り返していた。
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今日、18時に駅で合流ね!
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気づけば今年も最終日だった。
俺の心情と反比例するかのように街は閑散としていた。
灰色の鎧戸に覆われた街並み、その無垢な情景が羨ましくなった。
二度目だったこともあり、頭の中では到着までのタイマーが始まっていた。
「ただいまぁ!」
「おかえり。早かったわね」
今回は仁王立ちじゃなかっただけ安心した。
「お邪魔します。すいませんご多忙の時期に。お招きいただきありがとうございます。こちら皆さんでお召し上がりください」
事前に用意していた手土産を渡した。
「あら、いいのに。こちらが来てほしいって言ったんだし。ありがとうね」
旅行の時の話が頭をよぎるが、なるべく考えないようにした。
「ご飯までは私の部屋でゆっくりしてるね!」
「えぇ、もちろん。お父さんももう少しで帰ってくるみたいよ」
“よかった”
こないだのお父さんの言葉の意味は気になるままだが、不思議と恐怖心はなかった。
キョウコの部屋ではたわいもない会話をして過ごしていた。
ゼミの話、サークルの話、年明けのテストの話など学生らしい会話だった。
部屋の外を人が歩く音に少し敏感にはなっていた。
「ただいま」
「おかえりぃ~」
「お邪魔してます!」
「ゴメンね、待たせてしまって。少し年末の挨拶周りをしてたんだ」
「とんでもないです。お忙しい中、お招きいただきありがとうございます」
「相変わらず堅いな~。今日は飲むぞ!」
「お共させていただきます!」
日本語がぐちゃぐちゃだった。
対面するとまだ緊張すると改めて感じた。
とても豪華な食事だった。
寿司、すき焼き、沖縄料理、食後にはケーキとフルコースに舌鼓を打った。
「ごちそうさまでした!」
「もっと食べないと大きくならないぞ!」
「パパは横にしか大きくならないんだから控えてよね!」
「そんなこと言うな」
どこにでもある家庭の笑い声だった。
日付が変わる頃にはみんなウトウトしていた。
テレビではアイドルがカウントダウンを始めた。
「3,2,1、明けましておめでとう!!」
「今年も宜しくお願いします!」
無事に新年を迎えた。
当然のことだが、それすらも疑っていた分、少しホッとした。
「今年の抱負は?」
突然の質問に言葉に詰まった。
「なぁにぃ~考えてなかったのぉ?」
「キョウコこそ考えてるの?」
お母さんが助け舟を出してくれた。
「もちろん!実習をしっかりクリアして国家試験の模擬試験も今年中に問題ない状態にすること!」
現実的な回答に、頭に浮かんでいた回答をしなくてよかったと思った。
「で、達也は?」
「俺も同じかな」
何ともおもしろくない回答だ。
「達也君は就職先は考えたりしてるの?」
「いえ、まだ何も」
「そうなのね。二人とも近いところだといいわね」
「その辺はまた追々話していこうね!」
就職のことなど全く頭になかった。
昔から楽観的で、その時々に一番他人に期待されている行動をとるだけだったからだ。
女性陣の世間話を聞き、お父さんのマッサージをしている頃にはみんな眠っていた。
「起こしてゴメン、俺はどこで寝ればいい?」
「ゴメンごめん、寝ちゃってた。部屋に戻ろっか!」
部屋に戻り寝る準備をした後、キョウコはおもむろに口を開いた。
「そういえばさ、タケシ君とリコが付き合ったって聞いた?」
少し間が空いたとき、キョウコが居心地の悪そうな表情をした。
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