第25話 開幕
「お邪魔しまーす!」
集合場所から皆を拾ったタケシが到着した。
一通り部屋の準備が終った頃。
「ごめん、ギリギリになっちゃった」
耳を真っ赤にしたしずく。
「なんでそんな恰好なの?」
サンタ姿のしずくが不思議で仕方なかった。
「達也は知らないと思うけど、しずくは漫画やアニメが好きで、コスプレも趣味なんだよ」
リコが仮装してくるようにお願いしていたらしい。
完全に場違いな発言をしてしまったようだ。
「ごめん、全然知らなくて」
素直に謝罪。
「ううん。でもほぼ初めての会話がなんでそんな恰好?だったことは死ぬまで忘れないかも」
しずくに対してもアレクに対してもバツの悪い俺以外は、みんな笑っていた。
「全員そろったことだし、始めますか!」
ビールを片手にタケシは意気込んだ。
「そうだね」「うん」
「じゃあクリスマスパーティーを始めます!乾杯!」
「かんぱ~い」「メリークリスマス」
「アレク~ファジーネーブル作って」
「俺はスノーボールで」
「私チャイナブルーがいい」
一杯目のビールを飲みほした面々がバー感覚で注文をした。
「OK、でもちょっと味は違うかも~」
難しい注文にも難なく答えるアレク。
飲み会の会場としてアレク宅は最高だった。
一通り、飲み食いも終わり、ひと段落した頃。
「なんかゲームしようぜ」
珍しくタケシが悪い顔をしている。
「いいねいいね」
皆酒が入っているから上機嫌だ。
「じゃあ大富豪をして負けたらテキーラショットでどう?」
「オッケー」
満場一致でゲームが始まった。
ゲームが大富豪だったことが救いだった。
中学でトランプが流行ったときに、最下位にならない戦略を考えていた。
10回ほど繰り返した。
タケシとリコ、しずくがほとんど飲んでいた。
俺は一度も負けずに済んだ。
「大富豪だと偏るから王様ゲームにしようぜ」
完全に出来上がったタケシが提案する。
反対する気配すらなかった。
「王様だ~れだ」
「はい!」
マヤだった。
「じゃあマヤさんお願いします!」
タケシのテンションも少し面倒になってきた。
「じゃあ1番と5番がポッキーゲームをする」
一番大人しいはずのマヤが、いきなりパリピな提案をしてきた。
改めて酒の怖さと自分の運のなさを実感する。
「1番だ~れ?」
「はい」
俺だった。
「5番だ~れ?」
「はい」
しずくだった。
“最悪だ”
恥ずかしいという感情の前に何がベストかを必死に考えていた。
とりあえず、周りが盛り上げるぐらいにしておいて変な誤解を招かないようにしよう。
ポッキーの両端を咥える形になった。
アレクの表情が気になるが見える状態ではなかった。
気になりすぎて、動くことができなかった。
俺の気持ちに反して、しずくは平然と噛み進める。
「はい!食べました!」
しずくが満足気に話すが周囲は反応が薄い。
それもそうだ。
完全に接触したのが俺だけじゃなく、周りにも理解できたからだ。
それを見たタケシが正気に戻ったのか、
「いきなり激しいわ!もう少しマイルドなお題でいこう!」
無かったことにしようとしていた。
「そう?海外では挨拶なんだし、そんなに気にするかな?ねっアレク?」
どこかで聞いたことがあるセリフだった。
アレクは怪訝な表情でうなずいていた。
“本当にごめん”
珍しく素直に謝罪したかった。
しずくのテンションのせいでゲームは続くことになった。
その後は
「酒を飲む」
「誰かが飲んだ飲み物で間接キス」
「次のゲームが終るまで手をつなぐ」
「膝枕でゲームをする」
「おでこを合わせて20秒」
など飲み会ではありそうな罰ゲームが続いた。
同性同士で指名されることも多く、笑い声にあふれていた。
飲み会も終盤に差し掛かり、罰ゲームがハードになってきた。
「そろそろいい時間じゃない?」
タケシに問いかけた。
アレクとしずくの時間も作ってあげる必要があったし、早めの解散を打診した。
が、リコとタケシは帰れる状況ではなかった。
「泊まってもいいよ」
アレクは無事に帰れないことを心配してタケシとリコに伝えた。
「じゃあ泊まる~」「私も~」
二人はベロベロになりながらアレクの提案を呑んでいた。
しずくも泊まりたいと話していたが、マンションが同じということもあり、アレクが送っていくと伝えた。
「リコとタケシの面倒を見切るのが一人だと心細いから達也もいてくれないかな?」
王様ゲームのこともあり、アレクの話を素直に受け入れた。
マヤはテンションが高い割にははっきりとしていて、一人で帰宅した。
一応、心配だったので適宜連絡は入れたが問題なく帰れたようだった。
マヤを送り出した後、アレクがしずくを送っていった。
タケシとリコと三人になった。
またゲームが始まった。ただのじゃんけんだ。
負けた人が暴露する。シンプルだけど何とも恐ろしいゲーム。
勝負が一瞬で決まり、あとは暴露の時間。
内容は
「誰が付き合っている」
「誰が誰を好き」
「実は夜の仕事をしている子がいる」など
絶対に学内で漏らすと嫌われるような内容ばかりだった。
「もうそろそろ寝よう。次で最後な」
アレクも戻って来ないし、二人は際限なく続けそうだったので、寝かせることに注力した。
最後に負けたのはリコだった。
「実はさ…」
衝撃で結局一睡もできなかった。
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