忠告

梅福三鶯

第1話 忠告

 数日前から、変な格好の幽霊がつきまとってくる。


 ソイツは、妙な異国のお面を被り、ピンクのワンピースを着た女だった。


 幽霊だとわかったのは、誰もコイツに気付かないからだ。


 ああ、気味が悪い。いつまでもどこまでもつけ回しやがって。


 そんなある日、この幽霊がしゃべりかけてきた。


『気を付けろ。会社には行くな。バスには乗るな』


 気味が悪いと思いながらも、無視をして会社に行った。


 すると、バスが事故を起こし、俺は入院するハメになった。


 アイツの忠告は、本当だったのか……。


 それから俺は、アイツの忠告が出た時には聞くことにした。


『今日はどこにも出かけるな。店に入るな』


 この忠告の時、休みで出かけたかったが我慢した。


『友人と昼ご飯を食べるな』


 俺は友人からのメシの誘いを断った。


「なんだよ、お前いい幽霊じゃん」


 気味が悪いが、怖くない存在ならいい。


 そして俺は、ちょっとコイツのお面が気になり、調べてみることにした。


 すると、アフリカの奥地にある、小さな部族の物と同じ物だとわかった。


 このお面は、ある呪いの儀式に使う物で、術者の姿をした幽霊が呪いの対象者に、10回災難を知らせてくれるらしい。


 だが、この忠告を10回聞いて回避してしまうと、呪いが成立して対象者に降りかかるらしい。


 まずい……俺はすでに10回忠告を聞いて、災難を回避してしまっている。


 じゃあ俺は、コイツのせいで死んでしまうのか?


 じっとソイツを見ると、ソイツはお面を外した。


「あっ、お前は……!!」


 その時だった。外で「火事だー火事だー」と言った声が聞こえる。


 俺の身体は金縛りにあって、動けない。


『お前はこの部屋で焼け死ぬ。逃げられない』


「俺が悪かった、許してくれ!」


 あの時に振った女と同じ顔をした幽霊に、俺は必死に謝った。


 お面を取った女は、ニタリと笑った。


 ───

 ─────


 消防車が来て、火事は2時間後に消し止められたが、5階の部屋で男性の死体がひとつ見つかったという。


 その火事を見ていたピンクのワンピースを着た女は、野次馬に混じって笑っていた。




 完


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忠告 梅福三鶯 @kumokuro358

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