ハロウィンの夜に
梅福三鶯
第1話 ハロウィンの夜に
昨日、首なし馬車に乗った騎士の妖怪が夜中に来て、玄関を開けるなり驚かせて来た。
正直、腰が抜けた。
そのままソイツは満足して帰って行ったんだが、玄関に忘れ物をしていった。
それは、首なし騎士が小脇に抱えた首だった。
生首を置いておくのは気味悪いが、仕方ないので保管した。
生首は謝り通しだった。
「驚かせてごめんなさい。最近身体が私の言うこと聞かなくて。今日、身体が取りに行きますので」
暇だったので話し相手になってもらったら、色々首なし騎士について教えてもらった。
妖怪名はデュラハンという、外国のお化けらしい。
「なんか、ジャパニーズハロウィンがすごいみたいで、遊びに来たんですよね。仮装している人間に紛れて、馬車に乗って登場したら、クオリティ高いねって褒められました。うふっ」
いや、ハロウィンだからって、日本遊びに来るなよ。本場のハロウィンで楽しめよ。
「なかなか有給取れなくて、今回やっと取れたんですよ。うちの会社、ブラックですよね」
妖怪も苦労があるらしい。というか、働いているんだ?
そこでピンポーンとチャイムが鳴る。ドアを開けるとデュラハン。
「じゃあ、お世話になりました」と、デュラハン。
メアドも交換して、短時間だったがおしゃべりは楽しかった。
『また来年来ます』と、メールがきたので『急に来るのはやめろ。驚くから』と、釘を刺しておいた。
そうしたら『了解です』と返事がきた。
来年のハロウィンは、ごちそうでも用意しといてやるか。
私はちょっと、来年のハロウィンが楽しみになった。
完
ハロウィンの夜に 梅福三鶯 @kumokuro358
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