第4話 手荷物
「えっーと、抹茶キャラメルフラペチーノにホイップクリーム追加にアーモンドミルクに変更お願いします!」
「は?え、それっていったい何・・・?」
ある晴れた日曜日の午後、私たちは両手に買い物袋を持ち、隣接されているカフェへと足を運んでいた。
「はぁ、家で本でも読んでいたかった。こんないい日は久しぶりだったのに・・・」
「いや、だからでしょ。こういった日こそ年頃の女子高生ってのは外に遊びに行くわけ、そんなに引きこもっているとキノコでも生えるよ?」
この話は彼女に分がありそうなため、私はすぐに口を閉ざした。
確かに今日の午前、10時頃だったような。その時間帯まで私は家のリビングで本を読んでいた。先日好きな作者の新しい文庫本が出たと
聞いていたため、まとまった休日である土日に読み進めようと思ていたからだ。
しかし、その安らかなひと時はすぐに無くなってしまう。いつもならこの時間帯まで部屋で寝息を立てている隣部屋の主が
階段から降りてきてリビングで私を見つけた瞬間、髪の色と同じぐらい眩しい瞳と休日の朝にそぐわないテンションで私に詰め寄ってきた。
「灯!!今日の午後、買い物行くよ!!」
「・・・まずはおはようでしょ」
☆☆☆
「ってかさ、まだ怒ってるの?いいじゃん別に~、新しい本も買ってあげたんだからさ」
「もう怒ってないよ。ただ、ゆっくりと時間をかけて本を読みたかっただけ」
「灯あの作者の本、昔から好きだよね~、叔母さんの家に遊びに行ったときも読んでたっけ?」
私たちは本来、地元である東北仙台の地で生まれ育った。家系柄、親戚関係であり年も同じ私たちは姉妹のように接していた
(本当に見違えるぐらい変わったな…)
当時の彼女は内気であった、私と会った時でさえ自分の両親の背に隠れるほどに。
私自身、懐かしさを覚える反面、拒絶されてしまったという気持ちもあったのは今でも覚えている。
きっと彼女自身も辛かったのだろう、内気な性格に反して周りとは違った髪の色、どこにいても目立ってしまうソレは
少女にとってはあまりにも酷なものであり、白く塞がれた片目といった出で立ちは海外の人形なようであった。
その姿を見て当然、過去の自分もそのような出会いをしたな、と思い返す。自分の出で立ちからくる自信喪失それも
全くの一緒であった。だからこそ、いつの日か自分自身が立ち上がることができるということも・・・
「葵と会ってからかな?読むようになったのは。私もおしとやかになりたくてね」
「あ~、昔は荒れてたもんね」
にやにやした顔で頼んいた見るからに体に悪そうな飲み物に口を付ける彼女。
憎たらしいけど愛らしい、今のその素顔がやはり伊達政宗であったことを再認識させられる。
私は頬を緩ませて笑ってしまった、本当にこの人が今の人生でも私の近くにいてくれて本当に良かったと思えてしょうがなかった。
☆☆☆
「結局、灯は本だけしか買わなかったね。もうちょっとオシャレしてもいいのに」
「私は別に興味なんてないよ、好きなことが1つあるだけで十分」
「いやいや、私は見てみたいと思っているよ?灯がミニスカートを履いたりしてさオシャレを楽しんでいるのをね。せっかくスタイルいいんだしさ」
「いや、それはちょっと……恥ずかしい」
「かわいいな、おまえ」
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