第3話 照らす黄金

「ふぁぁ~…眠い」


「二度寝なんてするからだよ、だいたい気持ちのいい睡眠ってのはね・・・」


「はいはい、灯のお説教なんて朝から聞きたくない」


紺色のプリーツスカートに同系色のブレザー、袖やブレザーの端から見える白とグレーの色をした

ものはカーディガンであろう。

後ろから見れば二人の女子高生は対照的であった。片方は背も高く背筋も伸びてきっちりと歩いている

髪の色も黒髪となっており、見る人によっては日本人らしさを感じることだろう。

そしてその隣を歩いているもう一人は、対照的に背も小さく小柄。髪の色に関しても外国人かと思ってしまうような

金色をしている。しょっているバックが重いのだろうか、少し猫背気味に歩いており二人が歩いている姿は

どこか月とそれをかがせる夜のようだった。


「それよりも目がゴワゴワする、、、灯が急いでいたせいでコンタクト無理やり入れたからかも」


「私のせいじゃないっての。学校着いたら目薬さしてあげるから」


揃って歩いているようにみえても、きちんと広く視野をもって彼女を守っている。

姉妹のようにみえつつも、とっている行動というのは実に主人を守る姿であった。



「ほら、目を開けて。瞬きしないの!!」


「いや、ほんと無理なんだって!、、、入ったやっと」


朝のやり取りから電車に乗って学校まで着くと私は葵のクラスまで足を運びそのまんま彼女の右目に

点眼液を入れていった。


彼女は昔から右目が弱い、その理由に関して叔父さんたちも当の本人も知らないでいるが前世の記憶を持っている

私としてはコレという思い当たる節があった。それは私、片倉小十郎が前世で主の右目を切り取った話。

5歳ほどの年齢の時に当時の病であった天然痘にかかった伊達政宗、梵天丸の飛び出た右目を私が切り取ったこと

心を鬼にした、自分が主人でもあり元服もしていない幼子に刃を向けるだなんて考えたくもなかったのだから。

そして痛みからか、出血量か彼は意識を失った。そのときなんて本当に殺めてしまった気持ちが心を渦巻いて気が気でない状態

けれど、結果として彼はその出来事がきっかけに東北の地を駆け巡りすべてを収めて、徳川家が天下を収めた後は

大大名となっていった。

私自身、今の彼女が右目が痛いなんていうと息ができなくなることがある。今はもう関係のないことであるが、それでも

その因果を生み出したのは過去の私でもあるのだから何とも気が重い。


「ほんと昔から痛いんだよね~、そのせいでガチャ目だしさ。灯は目が良くていいよね~」


「私は葵みたいにゲームなんてしてこなかったからね。叔父さんたちに隠れてやってたのが原因なんじゃない?」


「言ったな?このやろー」


そんな談笑をしつつ朝の予鈴がなりそうなタイミングで私は隣のクラスへと帰っていった。同じクラスであればよかったのだが

こればかりはしょうがない。次に会うのは放課後にだろうか、互いに生活には困らない程度の友人はいる。

仲が悪いわけではないが、互いにベタベタと干渉する気はない。

担任が居室に入り朝のHRが始まっていく。私は放課後に彼女と会うことを楽しみにしつつスマホの電源を落としていった



☆☆☆


「それじゃあ、来月から中間も始まっていくから赤点なんかとらないようにな。んじゃ、解散!」


(長かった・・・)


6時間という長い拘束時間も終わり、外は少しオレンジ色をした空模様へと変わっている。

部活へ行く者、なにか焦っているのだろうか終わり次第足早に帰宅をする者、放課後どこへ行くかを考えている女子グループ

と考え方が十人十色で面白い。


「お疲れー、片倉さんも放課後行ったりする?」


帰りの準備をしていた時に話しかけられたのは同じクラスであり友人の佐竹桃であった。

ふわりとした毛先を軽く巻いた髪型で右耳に緑色のピアスを付けている、所謂陽キャのような見た目と雰囲気を持っているが

彼女自身が向こうの乗りが分からないなどの理由で私たちと遊ぶことが多い。


「私はごめん、パスで。今日、人を待たせているから」


「あぁ、葵ちゃんのことね。りょーかい、また誘うから」


「そうしてくれると助かるよ。今度、何か奢るからさ」


そうして私は待ち合わせをしていた図書室へと向かっていった。なぜ図書室なのか、いわく教室だと

クラスの男子共が煩く声を掛けてくるかららしい。彼女は人懐っこい性格と体型に踏まえて度胸もある。

そんなところから男女問わず人気なのだが、やっぱり言い寄られるのは嫌なのだろう。


「やっほ、迎えに来たよ」


「遅い、、、暇つぶしに本読んでたけど遅すぎるよ」


「そんなこと言わないでよ、葵の方が早く終わったんだからそれぐらい我慢しなさい」


夕焼けを反射させる金髪、そしてそれを独り占めできる自分は今この時間が

最高に幸せを感じる時であった。





















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