第137話 令嬢は目覚める
エルヴィーラはぱっちりスッキリ目が覚めた。ほぼ丸一日眠っていたらしい。起きたらまた昼食の時間だった。
色々な人が交代で私の様子を見に来てくれていたらしいが、起きた時にいたのはデポラでグーパンされた。
「まぁまぁ痛いよぉ」
片時も側を離れなかったというユキちゃんにもペロペロされた。ごめんよ、心配かけて。でも眠かったんよ。
「魔力枯渇を起こしたのかと思って、大騒ぎになったのよ!」
デポラ、グーパンからのぐりぐりは普通に痛いよ。
「そんな感じじゃなかったよ。ただ、眠すぎて……」
「エルの体内、魔力、いっぱい流れたから、活性化した」
「活性化すると眠くなるの?」
ユキちゃんが首を傾げた。
「ユキは、雪猫、人、知らない」
ユキちゃんにもよくわからないらしい。でも、確かに何か今は凄い元気。そしてお腹が空いた。
昨日寝落ちした広間についた。交代で食事を取っているようで、今もたくさん人がいる。
ギルド員以外にも私を見てあっていう顔をする人もいたので、沢山の人が心配してくれていた様子。
「皆様、ご心配をおかけしましたぁ」
皆に聞こえる様にできるだけ大きい声で言ったら、一斉にギルド員が集まってきて頭をくしゃくしゃに撫でられたり、ハグされたり。
あ、またグーパン、誰だ! もみくちゃになった。あ、ぐりぐりも! 誰だぁ~! でも皆元気で良かった。
最後は悪のりのもみくちゃからお兄様に救出された。どっと疲れた気がする。さっきまでの凄い晴れやかな気持ちを返して欲しい。
落ち着いて昼食を頂きながら、どうなっているかをお兄様に聞いた。すっかり状況は好転していた。
私たちはこのまま領館に滞在して、魔法騎士団が到着してダンジョン内まで殲滅してくれるのを待つ。
だがしかし、その魔法騎士団が到着するまでに二週間以上かかる。
魔法騎士団は現在の任務が終了次第、そのままこちらへ来る。
普通の騎士団でもいいのではと思うが、騎士団の威信にかけて失敗はこれ以上許されないと魔法騎士団が派遣されることになったそう。
魔法騎士団も大変だわ。ギルド員で殲滅する話も出たらしいのだが、それだと国との関係性がね。
時間がかかっても人的被害は出そうにないし、土地に関しては既に荒らされている。今後の事も考えて、国を立てることを選んだらしい。
領館では避難する人に物資を分けていたので、食料の備蓄も心もとなく、武器も消耗が激しかったと聞く。
エーリヒが何だかんだで現場にいて本当に良かった。色々と間に合わなかったかもしれない。
昼食を食べて個室に戻り、聞きたかったことをイザーク様に追加で聞いた。お兄様はお昼寝しに行った。
「部隊長が余計な要望を出してエーリヒを呼んだんでしょ? だったら王都からサクッと騎士団を転移させられたよね? 転移魔法が使える魔法士が王都に不在とかも、アリなの?」
「全部ナシだな。それに騎士団がどこまで腐敗しているのかわからない現状で、どんな応援が来たかもわからない。何だかんだで俺たちが来たのが北の辺境伯的にも正解だったと思うよ」
「なるほどなー。部隊長に都合の良いような人たちが来ていたら、最悪だったってことか」
情報操作されたりとかね。
「そうそう」
今城では転移魔法が使える魔法士の管理がずさんだったことなど、問題が山積みされて荒れているらしい。
そちらはゲルン卿が頑張っているらしいので、任せておけばいいと思う。
聞きたい事を聞いたら、私がこんなに長い間行方不明では怪しまれることに突然気が付いた。
慌ててイザーク様に相談すると、既に各方面に連絡済みで根回しも済んでいた。お兄様がお母様たちにも連絡してくれていた。さすが。
「昨日ヴェルが連絡はしていたけれど、エルちゃんからもカリーナ様やノーラちゃんたちに通話しといたら?」
「あ、そうだね。するわ」
早速お母様とノーラに通話した。
お兄様が私が突然倒れたことは秘密にしてくれていたけれど、丸一日私からの連絡がないのでかなり心配させていた。ごめんね。
疲れて寝ちゃったで誤魔化しておいた。事実だし、嘘は言っていない。
クリスのご両親ともきちんと挨拶をした。ローヴィル卿はクリスと違ってがっちり系の武人って感じの人。
ローヴィル夫人は顔と雰囲気がクリスにそっくりだが、お迎えの時を考えれば普段とのギャップが凄い。
「私たちもエルちゃんと呼んでもいいかしら?」
夫人が柔らかく聞いた。あれだ、この感じはデポラのお母様に似ているとエルヴィーラは思った。
「ええ。勿論です」
呼び方くらい、どーぞどーぞ。
「部隊長に問題があるからと渋っていたギルド員たちに、声をかけて集めてくれたのがエルちゃんだと聞いたわ。本当にありがとう」
「いえ。お役に立てて何よりです」
クリスには普段からお世話になっているし、食材も沢山もらったし。
今はエルヴィーラじゃないから、お礼が言えないけれど。
「主人がこんな感じで怖いかもしれないけれど、そんなに固くならないで」
言われて改めてローヴィル卿を見たが、別に怖いとは思わなかった。ちょっと見た目が厳ついだけで、目は優しい。思わず首を傾げた。
「あら、主人が怖くないのね」
「えっ、はい。優しそうに見えます」
「……ありがとう」
照れたっぽいローヴィル卿に、何故かお礼を言われた。よくわからん。
そして国境を守っている立場上、怖く見える方が良かったのかも知れないと気が付いた。
皆配慮して本音を言わなかったのかも知れない。失敗しちゃった。今は庶民なギルド員だから、まぁいいか。
そのまま話をしてみても二人とも素敵で、凄く感謝されてびっくりした。
クリスがとにかく大袈裟に話したようで、困るよ。緊張しちゃう。
その後、忘れないうちにフラウも領館に転移魔法で呼んでおいた。登場は遅れたけれど、一緒に来た体です。
忘れてたんじゃないよ、覚えてはいたさ。ちょっと遅くなっただけで。
フラウはクリスから私が突然寝落ちしたと聞いていたらしく、滅茶苦茶心配された。ちょっと罪悪感。
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