第6話
十月九日(日)
今日は楽しみにしていた明ちゃんと遊べる日だ。
普段が色々あるせいか、数ヶ月前から私にとって週末は前より楽しみな日になっていた。
学校も嫌いではなかったが今はモヤモヤばかりするので出来れば家に居たいくらいだとすら思ってしまう。
昨日と打って変わって小雨と曇り空だが出掛けることに支障はさほどなく、電車を乗り継ぎ一時間程離れた都心へと向かった。
駅ビルの近くで待っていると明ちゃんからLINEが入った。
¦兄貴と喧嘩して家出るの遅れた!ごめん!
30分くらい遅れる!マジでごめん!¦
打ちながら慌ただしくしている明の姿が目に浮かびながらすかさず了承したと返信を返した。
(30分か……ちょっと離れてるけど、確か個人雑貨とか手芸品扱ってる店あったし、行ってみようかな)
携帯を頼りに道を歩きはじめたものの見慣れぬ場所のせいかマップを何度も見直しては歩き直してすっかり疲労してしまった。
(なんか、変な雰囲気の所来ちゃった…引き返さないと)
路地を間違えたのか、やたら色味の強さや、装飾が激しい大きなビルがそびえ立つ通りに来てしまった。
休憩や宿泊など、ビルの入口に書かれている所ばかりである。
周りには大人の男女がチラホラと見える。
妙な気まずさを感じ足早に通り抜けようとすると、視界の端に気になる男女が通った。
最初に女性のよく見かけた服装が目に入った。
私も持っている学校指定のコートとよく似ている
胸元にも見慣れた校章がある。
男性は大きな傘で隠れて見えないがスーツを着て恰幅のいい男性だった。
女性はビニール傘だった為か、顔がよく確認できた。
真っ黒で艶やかな腰まである長い髪
パッチリとした大きな目
心配になるような真っ白い肌
頬に見慣れたガーゼがよく目立つ
ほんの数日前に間近で見た顔だった。
[#改ページ]
逆側の路地をもう一度見ると、やはり見知らぬ男性とにこやかに腕を組んでいたのは川波さんだ。
__
【二人とも知ってる?、ウチの学校でパパ活やってるの、いるらしーよ】
【裏サイトのでしょ、見た見た、誰なんだろうね】
【学校の制服来てパパ活とかウチらにも迷惑だしね】
数日前に聞いた会話が頭の中に蘇る。
(そういえば、あの後裏サイトで見たっけ……ただの噂と思って何も気にしてなかった)
-パパ活してるの二年らしいよ-
-ソースは-
-先輩が見たって-
-パパ活女子はハブりたい-
-まじ迷惑-
見れば見るほど気分が悪くなるのを感じたのと、馬鹿馬鹿しく思い信じてなかった。
頭に冷水をかけられたような気持ちになりながら、明との待ち合わせに遅れぬように駅まで重い足取りを引きずり向かった。
「よーっす!遅れてごめんな!」
「うん、大丈夫だよ、明ちゃん」
「なんか、顔暗くね?」
「寒くてさ!温かいの飲みたいな」
追求を逃れようと駅ビルの中に早めに足を進め、二人で一日を楽しもうと遊んで過ごした。
しかし、私の中には昼間に見た光景で頭がいっぱいだった。
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