第4話
十月八日(土)
暖かい日差しに当たって心地よく感じる感覚と同時に優の頭は昨日の事でグルグルと駆け巡っていた。
(なんで私がこんな気持ちにならなきゃいけないのかな)
天気とは裏腹に黒く曇った気持ちが何より重くなっていく感覚に優はより頭を抱えた。
「おじいちゃーん」
お寺の敷地内に入ってから、優は蔵のある場所へと向かうと祖父が縁側にて待っていた。
「いらっしゃい、優、茶菓子用意しといたぞ」
「うん、ありがとう」
優は手に持っていた献花を優しく置き座って茶菓子を手に取る。
「今日はどうした?」
「うんとね…」
優は祖父にぽつりぽつりと、学校の近況や昨日の話を伝えた。
「そうか…お母さんやお姉ちゃんには言ったんか」
「お母さんは相変わらず仕事で時間合わないよ、お姉ちゃんにはLINEしてるけど、いつも通りかな」
姉のLINEを開きメッセージ画面を祖父へと見せる
¦そうやって、誰にでも良い顔しようとしてるから自分が1番しんどくなるんでしょ¦
「真も変わらずだな、優はどうしたいんだ?」
「分かんない…けど、このモヤモヤした気持ちとか人に対してイヤな気持ちになると苦しい」
昨日の事や学校での出来事を思い出しては自己嫌悪する毎日に嫌気がさしてるのか、優はぼんやりと枯葉の山を見つめた。
「優は名前通りに優しい子に育ったなあ」
「そんなんじゃないよ、ちょっと蔵の中行ってくるね」
「ああ、鍵は開けてあるからゆっくりしてくといい」
優は祖父の言葉をやんわりと否定しながら、立ち上がり献花を持ち直し、蔵へと向かった
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蔵の中は綺麗好きな祖父が管理してる為か中に陳列してある年代物の品々とは裏腹にとても綺麗だった。
(先月より物ちょっと増えたかな?…本が沢山積んである)
辺りを見回しながら優は二階の奥に着くと中央の柱に献花を供え、天井を見上げて手を合わせ始めた。
「お父さん……」
優は目を閉じると、父を思い返していたのか静かに涙を流した。
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