第3話
十月七日(金)
学校に到着すると朝から下駄箱で中園さんと遭遇してしまった。
「あ、おはよう…」
どうしていいか、分からず思わず挨拶をしたものの心臓がバクバクと鳴っていた。
「あれ?、それさ、みいかわのあみぐるみじゃん! なにそれ、カワイーんだけど」
中園さんは私のカバンについてるキャラクターのあみぐるみを見つけ驚いたように声を出した。
「これは、自分で作ってみたやつで…」
「へー、自作なんだぁ、すごっ」
クラスで見る中園さんの表情とは少し違って、驚いたように自分を褒めてくれる事に戸惑うも嬉しくなってしまう。
「あこー、おはよー」
「おはよー、じゃね、見せてくれてありがとー」
友人に声をかけられ、自分には用が無くなったのかスタスタと去っていく中園さんを見て少しホッとした自分が居た。
(マトモに話すの委員会とか必要なこと位だったから変に怒らせないか緊張したけど、大丈夫だったよね)
教室に向かいながら亜心との会話を思い返しては、不安とほんの少しの喜びの気持ちを胸にしまっていた。
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午後の授業が始まる前に、あまり混まないトイレに来たものの、今日は手洗い場に女子数人が固まっており、出るに出にくい雰囲気になってしまった。
「二人とも知ってる?、ウチの学校でパパ活やってるの、いるらしーよ」
「裏サイトのでしょ、見た見た、誰なんだろうね」
「ウチのクラスとかだったら、どうする?」
「マジ即晒しあげでしょ」
「学校の制服来てパパ活とかウチらにも迷惑だしね」
「変なオッサンに声掛けられるのそいつのせいっしょ」
「パパ活するような汚いビッチは潰してもこっち悪くないし」
メイク直しやお喋りタイムが、終わったのか甲高い声が去っていったのでようやく個室から手洗い場へ向かった。
(裏サイトか、明ちゃんやお姉ちゃんには見ない方が良いって言われて見なかったけど…ウチのクラスの事とかも、書いてあるのかな…)
さっきの話が頭に残っており、少し気になっている自分がいた。
(後で少しだけ見てみようかな…)
携帯で検索を始め出てきたサイトをブックマークしてからポケットに携帯をしまった。
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放課後になり、部活に向かう明ちゃんを見送って、昨日図書室に忘れたノートを取りに向かおうと図書室に来たら、また川波さんの姿を見かけた。
(何してるんだろう…)
後ろからそっと、書き物をする川波さんに近づくとノートに遺書と書かれた文字が見えた。
「…ッ」
「あれ? 静見さん、どうしたの?」
「…あの、川波さん、それ…」
「ああ、別に何でもないの」
遼子はさも、なんでもないかのようにノートに書き続けた。
「何でも無くないよ!」
「何か気に触っちゃった?」
自分でも、驚く程に大きな声が出ていたのか、川波さんが目を大きく見開きながら、私を見つめていた。
「なんで…そんなの…書いてるの?」
「うーん、準備かな?」
「準備って…」
「これからの為に必要になる気がして」
川波さんはノートに目を向けながら、困ったような声で返答してくれた。
「自殺とか良くないよ…」
月並みな言葉しか出てこない自分に苛立ちや焦燥感でいっぱいになる。
「やっぱり静見さん、優しいのね、大丈夫よ」
「大丈夫って…」
「静見さん、泣かないで」
気づかない内に泣いていたみたいで川波さんにそっとハンカチを差し出された。
断るのも申し訳ない気持ちになりハンカチを受け取り涙を拭った。
「ごめんなさい…この事は忘れてくれていいから」
「…ハンカチ、洗って返すね」
「そんなの良いのに」
柔らかい声を出しながら、優しく見つめられ私はどうしていいか、分からない気持ちになってしまったいた。
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