最初の事件を解決せよ1
ボク達はシャロさんの指示で一つの民家に集められた。そこはボクが念のため聞いていた、アズカさんの今暮らしている場所で、つまりジェロウさんの借り家でもあった。
現在ここには、ボク、シャロさん、マリィさん、アズカさん、そして治安部隊4番隊隊長のヨルさんにも同席してもらっている。
「まさか、ジェロウが自分が暮らす以外の家を持っていたとはな……」
家の中を見渡し、感心している様子のヨルさん。
「あ、あの、この方達は……」
と、アズカさんはいきなり押し掛けてきた、ボク以外の人達に驚きを隠せないでいる。
「すみません。勝手に……」
ボクはシャロさんの方を見ながら、
「シャロさんが事件解決を話すにはここがいいって言って、譲らなくて。ボクも迷惑だと思って否定したんですけど……」
「君は、確か助手の、トワソン……君だったかな?」
アズカさんに状況を説明している最中、なりふり構わず間に割り込み、ボクの顔をまじまじ見つめて訊ねてきたヨルさん。
「いや、まぁ、はい。そうですけど……」
その顔の距離が近すぎて、視線に困り、目をキョロキョロさせてしまうボク。
「先日、及び今回の事件に協力してくれていたことはシャーロット公や、部下から聞いている。治安部隊を代表して礼を言おう。」
と咄嗟に両手を握られ、ブンブンと振り回される。
「あ、はい、どうも……」
ボクはされるがままに、
(この人も、超絶マイペースタイプなのか……)
と心の中で、もう一人の超絶マイペースロリータ名探偵を思い描き、姿を重ねた。
その超絶マイペースロリータ名探偵、もといシャロさんは、この状況を作った全ての元凶ながらにして、アズカさんとヨルさんの相手をするため板挟みにあい、困っているボクの様子を見ながら、ニヤニヤするだけで何も助けてはくれなかった。
「あの、それで。ジェロウさんは……? 集まられたってことは、何かわかったんでしょうか? 事件解決と言ってましたけど……。」
アズカさんは真剣な眼差しをボクに向ける。
「そ、それは……」
この状況でボクの口から言ってしまっていいのかわからずに口籠っていると、
「では諸君ら、お待ちかねの事件解決タイムといこうじゃないか」
いきなり大声を出し、宣言するシャロさん。タイミングを見計らってでもいたのだろうか。
「やはり、解決できたのか。待っていたぞ」
ヨルさんが食い気味に反応する。
「とはいえ、非常に言い難いのだが……。結論を言ってしまえば、彼はもうこの世にはいないだろう。」
「え………………」
彼女なりにアズカさんに対して、言葉を気遣ってはいたのだろう。ただ、先に結論を言ってしまわないと、無意味に期待させることになってしまう。
そんなことはボクでもわかるが、実際、真実を告げることは残酷で、無慈悲な行為であって、それを易易と出来てしまっているシャロさんの姿は確かに名探偵なのだった。
「そうか。それは私達にも惜しいな。」
ヨルさんのその言葉は戦力的意味なのだろうか、あくまで冷静に真実を受け取っている。
シャロさんは事件の説明を始めた。
「事が起こったのは、2番隊が休日に入る前の晩。シェカントの近くに滝が落ちる湖があるだろう?」
「あぁ。そういえば私がシャーロット公の元を訪ねた日には、そこで別の事件もあったな。」
「彼はそこで亡くなったのさ。」
「……何故、それが解った?」
「……別の事件じゃないからだよ」
「何?」
「?」
アズカさんは、下を向き黙って話を聞いていたが、その事件のことを知らないため、顔を上げて説明を求めていた。
シャロさんはその様子を汲み取り、全容が理解るように続ける。
「そこにいるヨルは部隊こそ違えど、ジェロウと同じ騎士隊長で、二日前、2番隊の休日明けかな? 今回のジェロウ失踪事件をワタシに持ち込んできたのさ。……ただその日は、彼ら騎士達にとってはとても忙しい一日だった。」
「そうだ。朝から出勤しないジェロウの捜索を、全部隊総動員でしていたからな。それに──」
「そう。そこで、別の事件が起こる。時間帯的には午後になったばかりくらいかな?」
「あぁ、その湖で巨大スライムが出没したとの連絡があってな。捜索の人員を裂き、巨大スライムを討伐する隊、捜索を続ける隊に分かれ、我々は捜索の代わりにシャーロット公の元を訪れたのだ。」
その日を思い出すようにしてヨルさんも、事象を連ねる。
「だが何故、その事件が、消えたジェロウと関係があることになるんだ?」
そして、この場では当然の疑問をシャロさんにぶつける。
「ソレ、が彼だった。からだよ」
「「っ!?」」
ヨルさんとアズカさんに衝撃が走る。
「何を言っているんだ? 人間がスライムになんて……」
「スライムの性能を思い出せば、ありえない話ではないさ。落ちどころが悪かったんだ。」
「落ちどころ……?」
「そもそもの話、何故彼はそんなところへ行ったのか? その理由は君にあるだろう。」
「私……?」
アズカさんは震える声で聞き返した。
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