15.衝動と後悔

 感情的な振舞いをした際の、独特の後味の悪さ。

 経験のある人は多いと思う。特にそれが怒りに起因するものであった場合、その後の沈鬱さは増す。

 私は、胴の部分から真っ二つになった仏像を見て、そういった沈鬱さに支配されていた。感情を制御できずに暴れた自分への嫌悪感、そして、八つ当たりしてしまった仏像への、何だか申し訳ないような気持ち。

 ごめん、私は仏像を見つめながら独り言ちた。だが、時すでに遅し。

 今思えば、如何様にも修理の仕方はあった。だが、競馬の大敗と感情の暴発によって、私は冷静さを欠いていた。茫然自失。翌日はゴミ回収の日だったので、私はゴミ袋の口を結び、捨てる準備を済ませていた。その口を開き、私は仏像を中に突っ込んだのである。

 仏像を始末してから暫時、私は何も考えずにテレビ画面を見つめていた。現実逃避をしていたのだ。

 玄関のチャイムが鳴った。ハッとして、私は応対する。

 チャイムを鳴らしたのは警官だった。

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