11.謎の死と遺言

 プロフェットには熱心な客が多く、そういった人々がファンクラブ紛いのものを結成していた。

 そのリーダー格であるAという男が、ある日、連絡を寄越してきた。

 そこで、私はサワベの死を伝えられたのである。サワベは店の事務机に突っ伏して亡くなっていた。机の上、遺体の直ぐ脇には遺書があった。サワベは独身、遺書の宛名はAであった。蔵書の処分はAたち有志に任せること、その他雑務諸々……。そして迷惑な話だが、末筆あたりに、仏像を私に渡してほしい由、私の連絡先と共に記載されていたのだという。

「遺書って、サワベさんは自死されたんですか」私はAに訊ねた

「それが妙でね」Aは答えた「突然死ってやつだよ。体には外傷も、毒を飲んだ跡もないんだ」

 突然死でありながら遺書が残された謎について、Aは自らの推理を得意げに話した。

「虫の知らせって言うのかな。突然死をした人間が、事前に自らの死を予見していたかのような言葉を遺した例は、結構あるものなんだよ。サワベさんも長いこと、そういう世界を研究していたから、今際のきわになって、神がかりを発揮したのかもね。それで遺書を残したのかも。ま、警察は相当困ったみたいだけど」

 そこまで話して、思い出したかのようにAは言った。

「そうそう、それで仏像の件、悪いけど、プロフェットまで取りに行ってもらえないかな。下手に触って傷でもついたら悪いしさ、店の中に置いたままなんだ。店では有志が作業をしているから、僕の名前を出せば入れるよ。気になる本があれば、持ち帰ってもいいからさ」

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