7.桜木、音信不通

 この他にも、似たような話を聴かされたのだった。

 再三に述べたことだが、私は呪物というものに半信半疑であったし、これらの逸話に対しても同じであった。こんな話が本当だとしたら、呪物の域を超えて最早、この仏像は兵器として扱われるべきだし、そんな兵器が存在するのならば、人類はとっくの昔に滅んでいただろう。

 仏像を預かるにあたって、犯罪に巻き込まれるのではとの不安と、ひょっとしたら仏像の呪いは本物ではないかという期待に近い恐れがあった。しかし、夙に述べたように、私は人生に対してうんざりしていたのである。クソみたいな人生、破滅するならそれで好し。仮に呪いに掛かっても、私は死んで楽になれるし、待望の心霊体験もできる。結句、私にとって、この呪物預かりのバイトは大変に美味しいものであった。

 預かりの期間は2ヵ月だった。

 2か月経った。

 ところが約束の期日を過ぎても、桜木からは連絡がなかった。電話を掛けても、出ない。サワベに訊いてみても、彼も桜木とは連絡がつかないと言う。桜木に仏像を返さないことには、バイト代も手に入らない。その時分、私は無職だった。かつ競馬、パチンコ、ギャンブルでは完全にツキに見放されていた。金銭的な危機を迎えていた。焦りと苛立ちに充ちた私は、もう数日待ってみて連絡がなければ、直接、桜木の家へ向かおうと決めた。

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