2.霊感なし
私には霊感がない。
子ども時分から怪談話やホラーが好きだった。是非とも幽霊を見たいと切望してきた。
自分なりに、幽霊を見るための努力は重ねてきたつもりだ。降霊術の類は出来る範囲で片端から試した。全国各地の心霊スポットを訪ねた。その中には100%出るという評判の場所もあった。職業霊能力者に会ったこともある。
ところが、何ら成果は上がらない。降霊術は部屋が散らかっただけ。心霊スポットに行っても幽霊は出ない。それどころか、ガラの悪い連中に一晩中追い掛け回されたり、警察沙汰になったりと、エラい目に会った。職業霊能力者たちは、当たり障りのない誰にでも当てはまるようなことをしたり顔で言うだけ、私は何も得るものがなかった。反って大金と心の余裕を失った。ここまで来ると、私自身が霊的な存在から毛嫌いされているとしか思えなかった。
このことを、私はよく他人に愚痴撒いた。その裡の一人にプロフェットの店主、サワベが居た。プロフェットは精神世界や宗教関連の分野に強い古書店だった。そうした店を構えるだけあって、サワベはスピリチュアルへの造詣が深く、そちら方面に豊富な人脈を持っていた。
その人脈に桜木がいた。桜木はサワベから、霊感が欠缺した私のことを聞いたらしい。桜木はサワベ越しに、私へ連絡をよこしてきた。いいバイトがあるが、受けてみないか。君の好きなオカルト関係の仕事だ。ひょっとしたら、君は生涯初の霊体験ができるかもしれないぞ。
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