呪物殺し

ぶざますぎる

1.仏像との出会い

 変な仏像だった。その奇妙な外見からして、それは器用ではあるが仏教や仏像に不案内な人間の手によるものか或いは、アヴァンギャルドな仏師による挑戦的な労作のどちらかだろうと、私は判断した。仏像は高さが20cmほど、薬師如来と文殊菩薩と不動明王が混ぜこぜになったようなデザインだった。統一的な美とは無縁な代物で、仏像や聖像に不可欠な威厳や静謐さは欠片も感じられなかった。この珍妙な仏像が、過去に何人もの人間を死に追いやった恐ろしい呪物だとは、とても信じられなかった。

 私はその仏像を、ある職業霊能力者から預けられた。50がらみの中肉中背の男で、名を桜木と言った。彼は気さくで親しみやすい雰囲気を醸し出していたが、それらはどこか演出めいており、会話の間の取り方や挙動の端々には、私に威圧感を植え付けるようなフシがあった。正直な印象を言えば、外面はいいが、身内や配下に対しては高圧的な態度を取るタイプだろうな、と私は感じた。

 この呪物を祓いたいのだ、と桜木は言った。しかしながら、呪物の力はあまりに強く、祓うにしてもそれ相応の準備が必要である。その準備の間、呪物を放っておくわけにもいかない。かといって無責任に他人へ預けるには、これは危険すぎる。そこで、これを君に預かってもらいたい。話を聴く限り、君は適任だと思う。彼はそう言った。

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