第6話 明らかに気がありますねぇ!!


「……日比野君。どうして、ここに」


 目の前にいる男が計人だと知り驚いたメイだったが、しばらくすると顔を赤らめた。


「私が呼んだのよ、メイ姉! 助けてもらおうと思って!」

「……ど、どういう事?」

「そ、そいつに頼まれたんだ。『保護者』が困った状態になってるから助けてほしいって……。まさか雛櫛が保護者だとは思わなかったけど」

「メイ姉、前に話してたじゃない! 同じクラスに強い能力者がいるって! しかもちょっとかっこいいって! それが彼でしょ!? だってメイ姉の部屋に写真が……」

「……ちょ、ちょっと黙ってマロン……!」


 珍しい。無表情で有名なメイが赤面しながらマロンの口を必死に塞いでいた。

 口を塞がれたマロンは「ンッーンッー」と必死に何かを訴えていた。


「……聞いた?」


 メイが計人のことを恨めしくにらんでくる。


「いや、聞いたけど、何の話か、さっぱり……」


 いくつもいくつも事件が襲い掛かって何が起きているか欠片も把握できなかった。

 普段のメイからは想像できない感情豊かな姿に計人はすっかり飲み込まれていた。


「……そう、ならいいの」


 リンゴのように顔の赤いメイは目を伏せ口を尖らせた。


 しばらくしてメイが口を開く。


「……それと、私の子供たちが迷惑かけた。……ごめんなさい」

「いやいいよそんなん! 気にしないでよ! てゆうか雛櫛は今困ってるの!?」


 責任を痛感しているメイを手をぶんぶんふり何でもないとアピールする。

 どこぞの馬の骨とも知らない男なら迷惑千万だが、メイなら話が別だ。

 何なら困っていることがあるなら聞きたくなる。


 と思い訳を聞こうとすると―― 


「ホントよ! ホント迷惑かかったわ!」


 藤花が気炎をまきメイに突っかかった。


「まったく保護者役やってるのなら子供たちの面倒はしっかり見なさいよね!」

「……あなたは、柊、藤花さん……」

「はい、柊藤花ちゃんでーす。雛櫛メイさん?」

「……いつも日比野君の、隣にいる……」

「そ! 計人とは切っても切れない仲なの。ね~計人?」


 藤花は作り笑いにしか見えない平べったい笑顔を作ると計人にその腕を絡ませてきた。


「お、おう……」


 それにより藤花の柔らかな双丘が計人の腕にダイレクトに伝わってくる。


 意味不明な行動に計人が事の次第を見守っていると、二人をメイは無表情で見つめ、藤花は挑発するような笑みを浮かべていた。


「アラ? 何か文句でもあるのかしらメイさん?」

(……!?)


 ふと彼女たちの間で火花が飛んだように見え、計人はごくりと生唾を飲み込んだ。


 どうなるんだこの展開は?! 


 と計人が汗をかいていると空気を読まずマロンの発言が飛び込んできた。


「ねえねえお兄ちゃん! だからね、メイ姉を助けて欲しいの!」


 しかも彼女はすでに女性としての武器を心得ているらしく上目遣いで庇護心を煽るように頼んできた。


「……ちょ、ちょっとマロン。もうやめて。……日比野君が困る」


 そんな彼女をメイが慌てて止める。


「でもメイ姉、こうでもして頼まないとダメよ! ほらメイ姉は可愛いんだから、私みたいに上目づかいで小首を傾げれば大抵の男はイチコロだって! 日比野さんも落とせるよ!」

「……え?」


 その一言でメイの目が一転大きく見開かれる。

 そして顔を仄かに染めると、そのまま計人と向き合い


「……!」


 恥ずかしさから、真っ赤になり慌てて視線を下げた。


 カワイイ……! なにこの可愛すぎる生き物……!


 メイの仕草があまりにも可愛くて計人がフリーズしていると


「チッ」


 藤花は面白くなさそうに舌打ちをし、絡めた腕を万力のように締め上げていた。


 ……それは止めて欲しい……、痛いから……。

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