第41話 誰何

 それはなんてことのない、普通の日の事だった。



 アリアの来訪から数日、俺が日々行なっていることは今までと特に変わらない。

 アリアの定めた条件があるため、一ヶ月という期限がある上で痩せなければいけないが、今でも中々オーバーワーク気味なので、これ以上負担を増やすつもりもない。

 日々の運動を継続出来れば十分だろう。


 そんな風に基本は体型改善のためのトレーニングを行いながら、数日が経ったこの日も特に何かある訳でもない、ごく普通の一日だった。


 強いて言うならば、俺がこの世界、そしてラース・フェルディアに転生してから丁度一ヶ月が経ったという位だろうか。


(一ヶ月、か…………)


 長いようで短い、そんな表現がピッタリと当てはまるような、そんな日々だった。


 辛いことも苦しいことも、それと同時に楽しいことも多かったこの世界での暮らしは、既に俺にとっての日常へと変化している。


 ラースの記憶があること、そして伯爵家の人間ということもあり、この世界で生きていくこと自体に困ったことは無かったが、それを含めてもこの世界での暮らしにも大分慣れた。


 そんなことを考えつつ、日課のトレーニングを終わらせ、アンナと共に夕食も取り終えた。


 

 思えばこの一ヶ月、アンナにもどれほど支えられてきただろうか。

 たった一月とはいえ、アンナは既に俺の中で最も信頼出来る存在になっている。


 彼女がいれば、これからもきっと頑張れる。



 

 

 一ヶ月、節目と言えるこの日。


 そう、正しく節目と言えるだろう。


 この日を境に、俺のこの世界での暮らしは間違いなく大きく変わる。


 そう思わせられる程に、最も信頼する相手に唐突に告げられたその言葉は、脳裏に強く反響した。






「……………………貴方は、誰なんですか?」

 

 

 

 時刻は、少し前に遡る。

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