第31話 今後の暮らし

 ライルとセレスの二人から過去の行いを赦され、親子としての関係も無事に修復出来た。

 食堂は非常に良い雰囲気に包まれているが、話にはまだ続きがあるようで、ライルが改まって、


「……まあ、今日何が言いたかったかというと、お前のことを認めるから、今後は過去の事で私達に負い目を感じる必要はない、ということだ」


 と告げた。

 これからは昔のことを気にして、必要以上に畏まる必要は無いということだろう。


 すると続けて、


「とはいえ、それはあくまで私達に対しては、という話だ。我が家に仕えている者達や街の住民達については、また各々に認めて貰えるまで努力しなければならない。………まあ今更私が言う必要も無いな」


 と、今回赦したのはあくまで自分達だけであり、その他の人達については別の話だと言う。

 ライルの言葉は当然だろう。

 二人は親ということもあり中々に早い段階で認めてくれたが、他の人達もそうとは限らない。

 ラースが迷惑を掛けた人達全員に認められるまでは、償いが終わることは無い。


「はい、理解しています」

 

 そう告げると、俺の言葉が真剣なものであると感じたのか、ライルは満足そうな表情をしていた。

 セレスも「頑張ってね」と笑顔で応援をしてくれた。


 

 そこで話は一段落着いたと思ったが、どうやらまだ続きがあるようで、


「そうだ、今話した件に関係することだが」


 と、前置きをして、



「ラース、普段の生活を本館に戻すか?」

 

 と、ライルが尋ねてきた。

 そして、そのまま続ける。


「元々はお前への罰として命じたことだが、過去のことは気にしないと告げた今、これからも離れで生活しろ、と言うつもりは無いが……」

 


 ライルの言葉は理解出来る。

 ラースが離れで暮らしていたのは、悪童であったことへの罰という意味合いだ。

 しかし、改心した今ならばその罰を継続する必要は無いように思える。


 とはいえ、


(俺としては、今の暮らしが気に入ってるけど……)

 

 離れでの暮らしはアンナと二人だけなので、非常にリラックス出来る。

 本館で生活するとなれば人は多いし、何をするにも常に人が付きそうで落ち着かないと思う。

 出来ることなら、今の生活を続けたい。

 ただ、


(アンナさんの負担は相当減るよな)


 今は離れでの事の大半をアンナが行ってくれている状況である。

 暮らしを本館に移せば、その負担もかなり減ると考えられる。

 アンナの事を思えば、本館に移るべきなのだとは思うが、


(……………)


 どうしても納得が出来ない。

 アンナとの生活が崩されてしまうような、そんな気がしてしまう。

 

 俺の感情でアンナを縛り付けることなど出来るはずもないのに。

 それにアンナがラースの専属メイドだということは、本館に移っても変わらない。

 だから問題は無い、……無いはずなのだが、



 すると、そうやって悩む俺に気付いたのか、


「すまんな、別に今すぐ決めろなどと言うつもりはない。お前達にも今までの暮らしがあるだろうからな。一度アンナと相談して決めると良い」


 と、こちらを気遣ってくれるライル。


「そう、ですね。………一度アンナと話し合ってみようと思います」


 確かにアンナにも考えがあるだろうし、俺の独断で決めて良い話では無かった。

 アンナの意見も聞いた上で、改めて決めることにしよう。

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