第13話 お母様は心配性
「あれっ?リンアーナ?あああぁ、初めてだって言ってたから転送に失敗したんじゃないだろうな?」
譲がリンアーナに向かって悪態をつきつつキョロキョロしていると、背後から笑い声が聞こえたので振り向くと銀髪のロングヘヤ―でギリシャ神話に出てきそうな白いワンピースの来た美女が長い錫杖を持って立っていた。
「あ、あの?あなたはどちら様でしょうか?」
目の前の美女からとても神々しい気配がただ漏れており、後光が発生しているのでリンアーナよりも上位の神様だと一瞬で理解し敬語で質問をしていた。
「そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。もうお気づきかと思いますが私はグロリアーナです。娘のリンアーナが大変失礼をしました、娘に代わり謝罪いたします」
『ええぇぇ??グロリアーナって、創造神様じゃなかったけ?いやいやいや、謝罪なんて恐れ多いぃ。知らずに失礼をしたら消滅させられたりして』
「ふふふ、異世界の方は発想がやっぱり楽しいですね。大丈夫です、言葉遣い位で消滅なんてしませんから」
「あれ?心の声が駄々洩れだったりしますか?」
「はい、ふふふ」
グロリアーナはとても楽しそうな表情でコロコロと笑っている。譲は心の声を読まれている事に全身から冷汗をかき必死で何も考えないようにしていた。
「そ、それでわたくしめにどの様なご用件でしょうか?ん?」
「はい、あの娘。リンアーナのしてしまった事へのお詫びとヤチヨさんへ私からのプレゼントをお渡しするためにこちらにお呼びしました。末の娘なので とても気になって気になってしょうがないのです」
グロリアーナは少し恥ずかしそうな表情をした後、「ふふふ」と笑った。そして何もない空間から皮で出来たリュックを取り出し譲に手渡す。手渡された
リュックを恭しく受け取り中を確認する。
リュックの中には、簡素なシャツとズボンと下着と靴下などの衣類。小さなナイフ、水筒(革袋)そして金貨と銀貨と銅貨が10枚づつ入った小さな革袋が
入っていた。譲がこれは?いう表情でグロリアーナを見る。
「生活する上の必需品です。初めての仕事で緊張して渡し忘れた品々です、異世界に呼んでいて一文無しで放り出すなんてありえませんよ。後でお説教です」
譲は笑顔のまま目が座ったグローリアを見て「ははは」と苦笑いをした。
「あとは、私からヤチヨさんに…はい、これで大丈夫です」
グローリアは自分の胸の前で右手を握り手のひらを開きながら譲の胸をそっと触る。何かが体の中に入って来た感覚があり再度グローリアの顔を少し首を傾げながらみる。
「大丈夫です、せっかくマナウェルスに来ていただいたので魔法を一つ授けさせて頂きました。まあ、魔法と言ってもマナウェルスの住人であれば誰でも使用できる【生活魔法】ですが。でも少しだけ特別な力をつけておきました。ステータスを確認していただけますか?」
「ステータス?ですか?どの様に確認出来るのでしょうか?」
「はぁ、重ね重ねごめんなさいね。マナウェルスの住人は【ステータス】と言えばステータス画面が現れる」
グロリアーナの説明を聞いて譲はすぐに「ステータス」と唱えるとA4サイズくらいのウィンドウが目の前に現れ、名前、性別、体力などのステータスとそして
先ほど決めた職業、固有スキル、称号などが記載されていた。そして、先ほど授かった【生活魔法】の文字があった。
「ああ、すごい。まさに元の世界で遊んでいたMMORPGと同じだ。ありました【生活魔法】、あっでも”プラス”ってなってますが…これは?」
「はい、それが特別な力です。使える【生活魔法】を同時に行使して効果を融合できるようになっています。効果はヤチヨさんのイメージ力によりますので色々試してくださいね。新しい【生活魔法】を生み出して頂ける事を楽しみにしています」
グロリアーナの説明が今ひとつ理解が出来なかった譲はグロリアーナに質問しようと手を上げようとすると先ほどと同じように体が透け始める。
「ああ、もうお時間の様です。ヤチヨさん娘が大変ご迷惑をお掛けしてすみませんでした、どうかマナウェルスでの人生をお楽しみください。お気をつけて」
グロリアーナが笑顔で手を振って見送ってくれている姿を見て譲は頭を90度下げたお辞儀をして謝辞を伝えた。浮遊感が終わり顔を上げるとグロリアーナの姿は無く目の前にはMMORPGで見たような石の城壁で囲まれている街が草原の先に見えた。
「良し!今度こそ転移成功の様だ。さあ、このマナウェルスの異世界の地図を頑張って作るぞ!まずはあの街の地図の作成だ!」
譲は年甲斐もなく右の拳を高々と上げ、恥ずかしげもなく大声で宣言したのだった。
それから譲は、最初の街と周辺の地域の地図を半年ほどかけて作成し次の街へ移動した。その街には初級のダンジョンがあり当初の目的通り隅々まで探索し完璧なダンジョンの地図を作製した。マッパーの固有スキルである【地図作成】には、地図の作成達成度が表示される機能がありその数値が100%になるまで文字通り歩きまわった。
地図の空白部分が埋まっていくのがとても楽しく、譲はそれこそ寝食を忘れて地図作成にハマった。このスプーナーの街に来るまでに大変な事や大変な事や大変な事や良い事があり、今はあまり思い出したくないとジョーは誰にも話していない。
「リンアーナは元気かな?俺の時の様に失敗していなければいいけど」
ジョーがそう呟くと桜の花びらが少し淡く光った様に見えた。
「元気よってかな?明日からはまたダンジョンだしもう寝よう。おやすみなさい」
誰に言うわけでもない、「おやすみ」を呟いてジョーは眠りについた。
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