3章 マジックポーチとエルフの少女

第14話 ビッグチシャフロッグ

ダンジョン都市 スプーナーの魔導王の実験場と名前のついたダンジョンの23階を一人の冒険者が魔法の明かりをともした杖を片手に持って迷いのない足取りで進んでいた。その冒険者は目の前に表示されている地図に表示されている赤〇を避ける様に立ち止まったり、少し遠回りをしながら24階に続く階段を目指し進んでいた。


その冒険者は目的の場所である小部屋の前にたどり着くと立ち止まり一度大きく深呼吸をした後、持っていた杖を構え戦闘態勢のまま踏み込んでいった。


部屋の中には緑色の草を束ねたような物に木の枝で作った手足が伸びており、3体ほどの緑の塊がわさわさと歩いていた。部屋に入って来た冒険者にはまだ気づいていないようで部屋の中を行ったり来たりを繰り返していた。


冒険者が目標を定め歩いている1体に向かって踏み込み杖を下段から攻撃を加えそのまま上方まで振り上げると、攻撃された1体は天井まで吹っ飛び衝突後チリに返った。仲間の1体が攻撃され侵入者に気づいたのこり2体が冒険者に向かってお辞儀をするように頭をすこし下げた。一拍後魔物の体から緑色の葉が無数に飛んでいく。


冒険者は「ふっ」と息を素早く吐いて今いた場所から右に移動する。一瞬あと冒険者がいた場所の一帯に飛んできた葉が突き刺さった。

「あっぶな。マリモットのくせに生意気。【突撃 1式 螺旋】」


ジョー(冒険者)は右に移動した反動を前に移動する力に変え杖を手前のマリモットに向けて回転を加えた杖を突きだす。


回転が加わった杖は手前のマリモットを突き抜けその後ろのもう一体までにも突き刺さった。2体目に攻撃が当たった事を確認し素早く杖を引き抜くと2体は同時にチリに返っていった。


「今のはやばかったな…マリモットが魔法を使ってくるなんて…ダンジョンから出たら冒険者ギルドの図書館に行って魔物の特性を調査が必要だな。

 いつも一撃で倒していたし、ほぼ体当たりだけだったから油断していた。ちょっと気を締めなおして進もう、さあ宝箱、宝箱♪」


先ほどまでマリモットが歩いていた部屋の奥に先ほどまでは無かった宝箱が鎮座していた。ジョーは念のため右側から杖を使って宝箱を開ける、特に仕掛け矢や落とし穴などのトラップは仕掛けられていなく宝箱が開いた。それでもたっぷり10秒ほど待ってから宝箱に近づき中を確認すると予想通り緑色の瓶が1つ入っていた。


「ハイポーション、ゲットだぜっ!」

この小部屋には7日周期で部屋の中の魔物を倒すとハイポーションの宝箱が現れる。ジョーは7日毎に訪れハイポーションを入手しているのだ。ハイポーションを柔らかい布で包みちょうどの大きさの木箱に入れて背負い袋にしまった。


「さってと、もうこの階層には用は無いしセーフティルームまでの間にも何もないから一気に移動しよう。スキル発動【ムーブ】」


スキルを使うと小部屋からジョーの姿が消えしばらくするとからの宝箱もダンジョンに吸収される様に消えていった。


ジョーは【ムーブ】を使ってスクット達が隠し部屋に移動したと言っていた30階層の部屋で落とし穴を作動させるスイッチを探していた。


「…えーっと、この辺のはずだけど…お、あった。これだな、これを押すと一気に5階層分落ちるからな気を付けないと」


魔力操作を使用して身体強化を脚部に行い杖を使ってスイッチを押すと足元の床が無かったように消えた。そしてジョーは足元に現れた暗闇に吸い込まれる様に落ちていった、数秒後堅い床の感触をとらえた瞬間、全身を使って衝撃を逃がして立ち上がった。着地した場所はボス部屋と同じくらいの大きさの部屋で前方に”ビッグチシャフロッグ”と思わしき巨大なカエルが鎮座していた。

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