第6話 黒猫亭① 打ち上げ開始
「いらっしゃいませ~。あー、ジョーさんだー、いらっしゃい。皆さんお待ちですよ」
黒猫亭の看板娘'sの1人である、シルフィーがジョーを見つけ声を掛けてきた。シルフィーは黒猫亭オーナーデイズの末の娘で女将さんと同じく猫獣人で薄茶の色の毛をしている。
「ありがとう、シルフィーちゃん。今日も元気だねぇ、エールをお願いできるかな?」
シルフィーはニッコリ笑顔で「はーい」と元気に返事をしてジョーのオーダーを厨房にいる父親に伝えに行く。黒猫亭の食堂を見渡しスクット達がいる席に近づいて行く。
「もう、遅いですよジョー!待ちくたびれて先に始めてしまいました」
すでにほろ酔い状態のキャシーが少し頬を赤くしながらジョーを手招きし隣に座らせる。キャシーの説明通りテーブルの上には肉串が盛られている皿とゆでたジャガイモの皿、そして黒猫亭名物山盛りミートパスタが乗っていた。
「そうよ、日にちを間違えてるんじゃないかと思ってたくらいなんだから…ロー食べてる?」
「だ、大丈夫。一人で食べれるから。すまないねジョー君が来るまで注文を待つように言ったんだけど無理だった…あー、もぐもぐもぐ」
ローは酔っている2人に代わり宴会を始めてしまった事を謝罪した、その間にも酔っぱらたナタリーに結局アーンをされ口いっぱいにミートパスタを突っ込まれそれ以上しゃべる事が出来ず眼でもう一度謝罪をしてくれた。
「ガハハ、ジョーやっと登場か?ほれおまえの分を取ってきてやったぞ!さぁまずは一杯、乾杯じゃぁっ!」
そこにジョーの分のエールのジョッキをもってダナンが戻って来た、自分の分を取りに行くついでに先ほど頼んだジョーのエールを持ってきてくれたようだ。
押し付ける様にエールのジョッキをジョーに手渡すと返答を待たずにジョッキをぶつけ一気に飲み干し大きくげっぷをした後、笑いながらもう一杯エールを取りに厨房に戻っていった。
あっけにとられながらダナンを見送りつつダナンが持ってきてくれたエールを一口飲んだ。少し酸味がある炭酸弱めのエールはぬるくジョーはこっそり生活魔法でエールを冷やした。エールは冷やすと酸味が薄まり弱めの炭酸も気にならなくなる。エールを飲むたびにビールを飲みたいと切に思うのだった。
「あっ、ジョー。寄ってしまう前に今回の謝礼を渡しておくよ。中身を確認して欲しい」
席について本格手に飲み始めようと思っていたジョーにローが硬貨の入っている革袋を渡す。『ああっ』と思いながら革袋を持ち上げると想像より重くローの顔を見返すと説明をしてくれた。
「成功報酬が金貨5枚、3日分の延長料金が1日金貨1枚で3枚の合計金貨8枚だ。確認して欲しい」
「えっ?多いいぞ!成功報酬の金貨5枚はわかるが延長料金は1日分で全部で金貨6枚でいいんだけど?」
「いや、全員の総意だ。契約より1日長く待っていてくれたから僕達はこうして宴会が出来ている。受け取って欲しい」
酔って笑いながら話していたナタリーとキャシーもまじめな表情で頭を下げてきた。ジョーはそれ以上は何も言わず「ありがとう」と言って受け取った。
「そういえばトラ男は?どこか行ってるの?あいつが飲んでいないなんて珍しいね?」
ジョーが席に座ってから大分経つがスクットが現れない、不思議に思い質問をした。それを聞いた3人の表情一気に暗くなり同時にある方向を指さした。そこにはエプロンをし頭に三角巾を被ったトラ男(お)が他の客の注文取りを行っていた。
「えっ?何あれ?」
ジョーが頭の上に?をいっぱい浮かべていると黒猫亭の長女のカレンが現れ注文に戸惑っているスクットの尻を蹴り上げていた。
「えっ?何あれ?」
ジョーは視線の先にある状況に処理が追い付かず頭の上に?をいっぱい浮かべた。すると黒猫亭の長女のカレンが現れ注文に戸惑っているスクットの尻を蹴り上げた。
「あんたは、ただ注文を取ってくるだけでどんだけ時間がかかっているの?お客さんすみませんね、何分新人なんで。今日のお勧めはミートパスタですね…はいありがとうございます。
お父さーん、ミートパスタ2人前追加で。 ほら、あんたはあそこのテーブルの皿でも片づけてきなさい」
スクットは、カレンに注文業務から早々に外され片付けに係に降格されたようだ。ブツブツと文句を呟きながらも指示されたテーブルの片づけを素直に行っている。
「あれはね・・・ダンジョンからの戻るのが予定より3日も遅かったじゃない?ここに(黒猫亭)に戻ってきたときにスクットがカレンに説明しに行けばよかったんだけど
余程疲れていたのか、そのままベッドに直行し今日まで起きてこなかったんだよね。
カレンも私達が戻ってきた時は夕食時の忙しい時間だったから後で来るだろうと
思っていたらしく徹夜で待ってたらしいんだよね・・・そして昼過ぎにスクットがへらへら笑いながら現れたものだから大変だったんだ。何とかなだめて店の手伝い1週間で収めたんだ」
「そ、それは大変だぁ。トラ男も・・・まあ無理かぁ?別れ話にならなかっただけ良かったと思うしかないね」
ジョーのコメントに3人はうんうんとうなずいていた。スクットも手伝いを嫌がっている様子も見れないので彼女のいないジョーから見れば、イチャイチャしているだけかと思うのだった。そうこうしているとスクットがジョーに気が付きテーブルに近づいてくる。
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