第5話 冒険者ギルド

冒険者ギルドがある北地区のグローリー通りを背中の大きな荷物が通行人に当たらないように細かくステップを踏みながら避けていく。冒険者ギルドが近づいてくると

仕事終わりの冒険者達を目当てにした出店が増えてくる。肉串は人気が高く何件もの屋台がしのぎを削っている、ジョーはその日の収入によって購入する店を変えて

毎日の買い食いを楽しんでいた。


「あっ、ジョーじゃないか。久しぶりだな、ダンジョンに潜ってたのか?」


「おっす、ギャンターさん。儲かりまっか?」


「ぼち、ぼっちでーなっ!…だっけか?」


「ぼちぼちでんなぁーですよ。帰りに寄るので焼きたてをお願いしますね」


ジョーはお気に入りの肉串屋のギュンター店長といつものおふざけをしていつもの肉串をオーダーし冒険者ギルドに入っていく。いつ来ても薄暗い冒険者ギルドの室内は仕事帰りの冒険者達でまあまあ混んでいた。


掲示板に張られている依頼の終了を報告に来た剣士やダンジョン帰りのドロップ品を素材買取カウンターに売りに来た魔術師、そして冒険者ギルドに併設されている酒場から聞こえる乾杯の掛け声。いつもと変わらないBGMを聞きながらジョーは素材買取カウンターに並んだ。


先に並んでいた魔術師の買取が終了しジョーの順番が回ってくるとカウンターの受付嬢がジョーに気づき笑顔で声をかけてくる。


「ジョーさん、お帰りなさい。無事のお帰り心からお喜びします」


「ただいま、レイアさん。これの納品をお願いします」


頭頂部のふさふさの耳をくるくると動かしながら笑顔を振りまく狐獣人のレイアに背負い袋から取り出した青く光るソフトボールサイズの鉱石をカウンターに3つ置いた。


この鉱石はスクット達を迎えに行くついでに寄った階層で採取してきた青魔鉄の鉱石だ。青魔鉄は水の魔力を帯びた鉄鉱石で水の属性武器を作る時に使用される。


「いつもありがとうございます、これで依頼元に顔が立ちます。ジョーさんでも採取できなかったら違約金を支払わなければなりませんでした」


レイアは右手を右頬に添えて首を少し傾け憂いの表情で小さくため息をつく。レイアのそのしぐさを見てジョーは『あざとい、でも可愛い』と心の中で突っ込む。


「ああっ、ごめんなさい。すぐに清算しますね、ボイドさんお願いします」


目の前のジョーを今思い出したかのように呟き青魔鉄の清算を買い取り査定係のボイドに業務を引き継ぎ、ジョーには引き換え用の札を渡した。素材の査定に時間が掛かる場合は支払いが後日になる為、引き換えの札を渡されるのだ。

ジョーは「でわ」と一言挨拶をして冒険者ギルドを後にした。


「あー、危なかった。わざとだと分かっていてもグラッと来たね。うん、こんな時は肉に限る、ギャンターさーん」


何かよくわからない事をブツブツ呟きながら何かに区切りをつけたのか、ジョーはギャンターの肉串屋に走っていくのだった。


翌日ジョーは、久しぶりに風呂屋に行き汗を流してすっきりしてから岩窟のメンバーが滞在している黒猫亭に向かった。ジョーが現在拠点としているダンジョン都市

スプーナーには風呂屋があり冒険が終わったり気分をすっきりさせたいときに等良く通っていた。


普段は生活魔法の【浄化】で体を綺麗にしている。風呂屋と言っても湯舟があるわけではなく、所謂サウナだ。サウナであれば湯を沸かさなくてもよくあまりコストがかからない事から大きな街には1区画に1軒くらい割合で存在する。


サウナに入って汗をかけば喉が渇くのは必然で自然と風呂屋の周りには酒場が多くあり、酒場が集まっていれば人も集まるので風呂屋を中心に繁華街が形成されていた。


また、夜の店に遊びに行くのであればさっぱりしてからというのがスプーナーの街では根付いていて夜の店が集まっている一帯には専用の風呂屋があったりする。


ちなみに風呂屋は男性用、女性用で別々の店になっておりジョーは噂でしか聞いたことがないが女性専用の風呂屋には小さいながら湯舟があるとか。髪を洗うのにお湯の方が汚れが落ちが良く評判がいいとか。


風呂上がりでのどを潤したいのを我慢しスクット達が待つ黒猫亭へ急いだ。黒猫亭は冒険者ギルドからダンジョンの入り口を挟んだ反対側の南地区にあり職人や商人が店を構える一帯にある。元々冒険者よりも商人達をメインの客層としているので値段はそこそこだが、食事がかなり美味しいと評判の宿だ。


ジョーも黒猫亭に移動しないかとスクットに何度か誘われたが、食事よりもセキュリティを重視し移動はしていない。黒猫亭に近づくとトマトソースの良い匂いが漂ってきた、名物のミートソースを作っているのだろうか?考えた瞬間にお腹が鳴ったので急いで宿の中に入った。

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