第3話 間に合ったかな?

ジョーはダナン達から見えない場所まで離れると再び「マップ」と呟きマップ画面を出しスクットの場所を確認する。マップ画面には赤い〇が3つ通路に並んでいた。

そして、真ん中の赤い〇に向かって他の2つの赤い〇が動き出すのが確認できた。


「いたいた、そんなに離れては無いな。おっと、これはまずいかも…よし【ムーブ】」


ジョーがマップ画面を触りながら呟くと次の瞬間ジョーに向かってヘルハンド飛び込んでくるのが見えた。左手に持っていた杖を一瞬で両手で構えヘルハンドを迎撃する


「【強撃 1式 不動】」

ドシンという踏み込みと共に両手で構えた杖でヘルハンドの噛みつき攻撃を受けるとヘルハンドは何かの壁にでもぶつかったかのように逆の方向に吹き飛び通路に落下するとチリとなり消えた。


「ふう、危ない危ない。トラ男(お)~大丈夫かぁ?怪我してないか?…いつまで固まっているんだよ?!」


「おっ、う、動け俺の腕…って? あれ?俺生きている?やったぁっ!俺生きてるっ!」


「当たり前だ、俺が助けに来たのに!」


「えっ?ジョー?ジョーじゃないか?ッと言う事はダナン達は無事なんだなぁ? 良かったぁー」


スクットはそう呟くと涙を流しながらジョーに抱き着く。そして体中で喜びを表すようにジョーを抱きかかえくるくるとその場で回った。


「バカ、おい、苦しいって、臭いって!いい加減にしないと本気で怒るぞっ!」


ジョーが殺気を膨らますと漸くジョーを下ろし「すまん、ちょっと悪ふさげが過ぎた」と謝罪をした。それから2人はヘルハウンドのドロップ品である火の魔石を広い通路に突き刺さった大剣を回収しセーフティルームへ戻った。


セーフティルームへ姿を現したスクットをダナン達が見つけると無言でスクットに駆け寄り抱き合い生存を喜び合っていた。その横を『若いっていいねぇ』と老人の様な事を思いながらジョーはテントに戻りごそごそと荷物を取り出す。


「さてさて、まずはあの臭いをどうにかしないとね。それから食事かな?それとも一度寝るのかな?おーい、そろそろ仕事に取り掛かりたいんだが?」


「お、おおっ。すまん待たせた上に救助までさせてしまって」


「良いって、その分はあとでしっかり請求させてもらうから。それよりもそちらのお嬢さんの手当てを急がないと手遅れになっちゃうよ?」


ダナンが喜び抱き合っている輪から離れジョーに感謝を述べるがジョーはそんなことしている暇ないよと指摘をした。


「しかし、ナタリーの足は骨が複雑に骨折していてハイポーションでも治せない…僕の治癒魔法であれば治せるけどもう魔力が…」


「なんだ、そんな事か。これを使え、料金は貰うけどな」

ローが苦悩に満ちた表情で『治せるのであればとっくに治している』と心の内を言うとジョーはテントから取り出した背負い袋から紫色の瓶をなげてよこす。急に物体を投げられしっかりとキャッチできずあたふたと手の中で紫の瓶をお手玉して床に落ちる直前で何とかキャッチした。


「き、君!危ないじゃないかっ!そ、それにこれは何のポーションだい?」


「ただのハイマナポーションだけど」


「なんだって!ハイマナポーション!?そんな高価なポーションを投げてよこすなんて、それにこれが幾らすると思っているんだ」


「えっ?いらないの?いらないなら返して?」


「いらなくはないっ!、有難く使わせてもらうから」

ローは何やら投げやりな感じでハイマナポーションの蓋を開け中身をあおった。ローがハイマナポーションを飲み終わるとローの体が少し鈍く光る。


何やら納得がいかない感じでぶつぶつと何かを呟きながらナタリーの負傷した足に手を当てて呪文を唱え【グレートヒール】を掛けた。【グレートヒール】の光が消えると今まで内出血をして紫色をしていたナタリーの足が元の白い肌に戻った。


そして再び喜びの輪を作り抱き合い始めた。ジョーはそれ少し離れた場所から眺めながら『良くその臭さで抱き合えるよ』と心中で嘆息を漏らした。いつまでたっても終わらない様子にジョーはしびれを切らし一塊になっているスクット達に生活魔法の【浄化】を掛け体中から漂う臭いや汚れを落とした。


驚くスクット達をほっておきジョーは食事の準備を始める。生活魔法で鍋に水を張り先日購入した魔導コンロでお湯を沸かし始める。テーブルの上にまな板を用意し干し肉を刻んでいく。


干し肉以外は自作の干し野菜をどっさり入れていく、ダイコン、キャベツ、ニンジン、サツマイモ、ゴボウをどさどさと入れて煮込んでいく。干し野菜が水分を吸い始めたら塩と先日漸く手に入れた味噌で味付けを行う、最後に水で溶いた小麦粉の塊いわゆるすいとんを入れ再度煮込むとセーフティルーム内に味噌の良い香りが漂い始めた。

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