武器に宿りし力

「ここら辺で良いか」


 緑の落ち葉降りしきる森をそこそこの距離を歩くと、いつも剣術を練習をしている開けた場所に躍り出た。

 ここなら人目につくこともない。

 思う存分、#スキル__・__#の反復練習と習得が出来るだろう。


「ふぅ…………よし、やるか」


 俺は木刀をギュッと握り、剣道の構えを取り集中する。

 直後、脳裏にあるイメージが浮かんだ。

 

「…………でたな、武器スキルのステータス」


 そう、頭に浮かんでいるのは、異世界系のラノベでお約束の、あのステータス画面って奴だ。

 と言っても、自分のステータスを見るものではなく、使用する武器に備わったスキルを見ることが出来る代物なのだ。

 原理は全く分からないが。

 まあそれはどうでも良い。

 大事なのは、この技。

 『スラッシュ』があと七回で習得出来るという事に尽きる。

 習得出来たらどうなるのかは知らない。

 もしかしたらパワーアップするのかもしれないし、変化するのかもしれない。

 だからこそワクワクする、早く習得してみたい、少年心が止まらない!

 ……そういう訳で、今日も今日とてスラッシュを繰り出していく。


「はっ!」


 脳内でスラッシュと叫びながら木刀を一薙ぎすると、ヒラヒラと舞う落ち葉が切り裂かれる。

 これがスキル・スラッシュの能力。

 斬りつけたものを本人の技量関係なく真っ二つにする技。

 大した技ではないが、木刀をそのまま振るよりかは相当強力だ。

 そしてその一撃と共に、スラッシュの習得カウントが一つ減った。

 これをあと六回繰り返さないとな。

 と、俺は呼吸を整え……。


「ふんっ! はっ! せいや!」


 まずは連続で三連のスラッシュ。

 続いて横一閃からのクロスさせてのスラッシュとバリエーションを交えながら放った。

 

「ふぅ……はぁ……。 これで200回到達だな。 これで何か変化が………………お?」


 やはりあのカウントは習得率だったらしい。

 カウントが200にピタッと揃った瞬間、脳裏に浮かぶイメージに新たな一文が表示されたのだ。


「えーと…………刀剣類使用時に発動可能?」


 文字通りに読み解くなら、木刀以外でもスラッシュを使える……という事なのだろうか。

 やってみないと分からないが、恐らくはそうなのだと思われる。

 まあ俺みたいな奴隷は、特定の条件を満たさない限り、実剣なんか持たせて貰えないから確かめる術なんか無いんだが。


「…………これで木刀のスキルはマスターか。 どうせなら他の武器も試してみたいな。 けど、無理だろうな。 ……しゃあない。 無い物ねだりはやめて、そろそろ帰…………」


 と、踵を返したその時だった。


「……ん?」


「お嬢様、あちらに追い込みます! 止めはどうぞ、セシリア様!」


 ふと森の奥から複数の馬の足音と怒号。

 そしてイノシシらしき鳴き声を耳にした俺は、咄嗟に木の影に身を隠した。

 

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