第46話 絶体絶命

目を覚ますと俺は仮眠室のベッドの上だった。下半身が重く、冷たい。


「飯田さんっ!分かります?美月です!良かったぁ、良かったぁ!!」


美月が目に涙を溜めて俺の手を握っている。


「あ、俺、打たれたんだよな・・・やっちゃったなぁ、こんな時に打たれちゃって、マズイなあ・・・」


「ごめんなさい、私があんな所に居たから・・・」


「いやいや、美月はなんも悪くないよ、俺がもっと気を張って見張っていたらこんな事にはならなかったんだ」


「でも・・・」


仮眠室のドアがガチャリと開いた。川村が心配そうな顔つきで入ってくる。


「飯田君、起きたか!大丈夫か?痛むか?」


「あ・・・はい、大丈夫です。痛いですけど・・・あの、俺を打ったのは・・・」


「ああ、敵の兵士だ。大谷がすぐに応戦したんだが、大谷の打った銃弾が奴の脇腹を貫通してな・・・すぐに帰したいんだがあの状態じゃ動かす事ができないんだ。医療室のベッドで酸素マスクを着けて寝かせているが、ずっと昏睡状態でな」


「打った奴は・・・死ななかったんですね、良かった・・・でもこんな時にすみません、皆に迷惑かけてしまって、俺がちゃんと見張っていたらこんな事にはならなかったのに」


「いや、あいつは恐らくずっとドアの横の配電ボックスの中に隠れていたんだ、俺達がここへ入る前から。遅かれ早かれ隙を見て打つつもりだったんだろう。あの時、飯田君が気が付かなかったら、たぶん美月や大谷も打たれていたかもしれん」


「そうですか・・・あの、俺、どれくらい意識を失ってたんですか?」


「そうだな・・・1日とちょっとかな、院長先生の所から持って来た薬が役に立ったよ。かなり出血が酷かったんだが、あの薬のおかげですぐに出血が止まったんだ。臀部に3発、腿に2発食らっててな、腿の2発は貫通してたんだが、ケツに埋まった3発は何とか取り出したよ」


「あちゃー、そんなに打たれちゃってたんですか、そりゃ痛いわけだ・・・で、誰が弾を取り出してくれたんです?」


「あ?ああ、吉野さんがやってくれたよ」


「え?吉野さん?つーことは、吉野さんに・・・ケツとか見られたって事ですか・・ね?」


「いや、ケツどころじゃないぞ。腿は貫通してたからな、着ていた服全部引っぺがしてな、身体ひっくり返さなきゃならないだろ?吉野さんが弾の摘出と傷口の縫合をして、美月と凛子が手伝ってくれた」


「えっ?それって女性陣全員じゃないですか!何で男衆でやってくれなかったんですかっ!」


「いや、だって俺達自衛官は持ち場を離れられないからな、女性陣にやってもらうしかなかったんだ」


「うぇぇぇぇ・・・」


マジかよ・・・女性全員に、ケツどころか前も見られたなんて・・・何て事だ。吉野さんは男に興味が無いから良いとして、いや、良くないけど・・・凛子に見られ、そして・・・目の前に居る美月にも・・・ああ、もう生きて行けない。


「まあ、取り合えず飯田君は安静にしていてくれ。後の事は心配するな」


川村はそう言うと戦闘指揮所に戻って行った。


「あのさ、美月・・・その、俺の手術、手伝ったんだよね」


「はい、手伝いましたよ。最初は足からの出血が酷くて、お尻の弾を取り出す間、凛子さんと一緒に足の傷口を押さえてたんですよ、薬が効くまでなかなか血が止まらなくて・・・」


「そ、それってさ、その時ってさ、俺、うつ伏せだったの?仰向けだったの?」


「えーっと、銃弾が腿の後ろから入って表側へ抜けたみたいなんですけど、抜けた方からの出血が酷かったんですよ、だから仰向けでしたよ」


「あああ・・・そう・・・仰向けか・・・その時って、俺、ズボンとか穿いてたかな?」


「穿いてるわけ無いじゃないですかぁ、全身血まみれだったんですよ!戦闘服脱がせるの大変だったんですから!」


「へ?戦闘服脱がせた?ってコトは、俺、素っ裸だった?」


「はい、まごうこと無き、素っ裸です」


悪夢だ。最悪だ。打たれた痛みより、全身見られた事の方がツライ。心がイタイ。死ぬほどハズカシイ。


「あ、飯田さん、ひょっとしてハダカ見られたの恥ずかしいんでしょ!」


「ま、まあね・・・」


「飯田さんだって私を助けに来てくれた時、私の全裸見たじゃん!これでおあいこだよ、問題なーい!」


「あ、あははは・・・それもそうか・・・」


ああ、凛子と吉野さん、顔を合わせるのが恥ずかしいなあ・・・とか言ってる場合じゃない。俺達は戦争中なんだ。


「あの、飯田さん」


「ん?」


「私、また飯田さんに助けてもらっちゃったね」


「いや、俺がちゃんと見張ってなかったからこうなったんだよ、俺のせいで美月や皆に心配かけちゃって、ゴメン」


「そんな事ないよ、結局は隙を見て打ってくるだろうって、川村さんも言ってたし」


「そうだけどさ、でもな・・・」


「飯田さん、本当にありがとう、でもね、でもね、飯田さん、ずっと起きなかったから、私すごく心配だった、すごくツラかったよぅ、うっ・・・うっ・・・ううう、うえっ、うえっ、ううう」


「おいおい、泣くな!もう大丈夫だから・・・それよりもさ、ちょっと起きるの手伝ってくれないか?」


「ダメですよぅ!まだ安静にしてなきゃ!」


「いや、もう出血もしてないし、痛みも麻酔で和らいでるから大丈夫だよ。俺だけここで寝てるわけにも行かないよ」


「しょうがないなあ・・・」


俺は美月の腕を借りて上半身を起こし、打たれていない左足で何とか立ち上がった。美月の肩を借りてゆっくりと歩き、戦闘指揮所の椅子に腰かけた。麻酔が効いているのでそれほど痛まないが、麻酔が切れたら座る事なんて出来ないかもしれない。


俺が腰かけたすぐ横に、車いすに座った石田と石田に代わってコンピューターに入力をしている凛子が居る。二人ともかなり真剣な目つきで黙々と作業しているが、凛子は慣れない入力作業でいっぱいいっぱいな様子だ。


「うーん、これ、どうしようか・・・川村さん、ちょっといいですか?」


石田が川村を呼び、モニターを見ながら何やら説明している。川村もヒゲの伸びてきた顎を右手で押さえながら渋い顔をしている。何か問題なのだろうか?

俺は2人の会話に聞き入った。

石田が言うには、この空母に設置されている磁場発生装置は膨大な数の波長の異なった電磁波を同時に発生させ、そのすべての波長が、設定されたある1点の場所に重なった一瞬にパワーを一気に放出させなければならない。通常はその波長が重なるタイミングをソフトウェアで制御するので問題無いのだが、なぜかそのプログラムがうまく動作しない。恐らくプログラム上の問題ではなく、ハードに何らかの損傷があるのではないか?と言う事らしい。


「そうか・・・で、石田君、その一瞬のタイミングってヤツだが、プログラムが上手く動かないとなると・・・手動でできないか?」


「手動で、ですか?まあ、そのタイミングでキーボードのエンターキーを押すだけなんですけど・・・でもそれって例えて言うなら、空を飛ぶ飛行機からパチンコ玉を放り投げて、地上にあるパチンコ台のチューリップに入れるくらいの難易度ですかね・・・まあ、宝くじ当てる方が簡単かな?と」


「弱ったな・・・もしもそのタイミングがズレたらどうなるんだ?」


「そうですねぇ・・・何も起きないか、どこかへ転送されるか、あるいは時空の彼方に放り出されて原子レベルまでバラバラになるか・・・予測できないですね」


「そうか・・・・・バッテリーの充電具合はどうだ?」


「当初は48時間掛ると予想していたんですが、残存電力が20%ほどバッテリーに残っていたので満充電までの時間が早まりました。あと45分ほどで充電完了です」


石田と話す川村にも少し疲れが見え始めているようだ。川村は椅子に座ってしばらく天井を見る目ていたが、意を決したようにコンソールのマイクを手に取り、艦橋に居る朝倉を呼び出した。


「朝倉さん、ちょっとCICに降りて来てくれないか?」


「了解です、すぐに向かいます」


朝倉が艦橋からCIVに戻って来た。いつでも出撃できるようにパイロットスーツを着たままなので、艦橋からCICに来るだけで額に汗がにじんでいる。


「朝倉さん、ここから横田基地周辺までF-35でどれくらいかかる?」


「そうですね、行って3分、帰って3分、何だかんだで15分あれば」


「よし、すまんがちょっと横田基地上空まで飛んで。基地にスタンバイしている敵航空機の様子を見て来てくれんか?さっきSeaRamで撃ち落としたヤツは恐らく偵察だと思う。そろそろ本隊が来る頃じゃないかと思ってな。それからF-35のレーダー索敵距離はどれくらいだ?」


「高度10,000mまで上昇すれば、約300kmちょっとですね」


「よし、それじゃあ横田基地上空で高度10,000mまで上昇して全方位にレーダー走査してみてくれ」


「わかりました!すぐ出撃します!」


朝倉はヘルメットを抱えてCICを出て行った。5分ほどで唸るようなF-35のエンジン音が聞たかと思うと、その音は次第に小さくなった。

さっき川村と石田が話していた電磁波発生装置プログラムの不具合の件、そして敵の大規模攻撃の件・・・何だか雲行きが怪しくなってきた。

でもここからは俺達民間人が出る幕はない。川村達自衛官の手腕と、石田の頭脳、そして幸運が訪れることを祈るのみだ。


「CIC、こちら朝倉。現在横田基地上空を飛行中」


F-35の朝倉からの無線だ。


「こちらCIC川村だ。どうだ?横田基地の様子は」


「それが・・・ものすごい数の航空機がスタンバイしてます」


「ものすごい数?いったい何機くらいだ?目視できる数で構わん」


「恐らく爆撃機と見られる大型の機体が100機以上、セスナ機クラスの小型機も合わせると200機くらいかと」


「えっ!?200機!?目視できる範囲でその数なのか?」


「恐らく全部で200機はあるかと。これから高度を上げてレーダー索敵を行います」


「了解」


朝倉の無線を聞いた後、川村と大谷は真剣な顔で話し込んでいる。

いくらプロペラ機とは言え、200機の航空機を相手にこの空母だけでどう闘うのだろう?

こちらにの航空戦力は朝倉のF-35一機だけだ。


「CIC、こちら朝倉。レーダーに多数の機影、・・・恐らく大多数の航空機と思われます」


「こちらCIC川村、レーダーに映ってるのは何機だ?」


「あまりにも多くて・・・数えきれない・・・たぶん200機以上!時速300km/hで南西よりこちらに向かっています」


この空母に搭載されているのはイージス艦のレーダーと同じSPY-1と呼ばれるフェイズドアレイレーダーだ。このレーダーの探知網力は半径500kmと言われているが、奥多摩の山間に鎮座しているこの空母は、そこから見通せる範囲でしかレーダー走査ができない。高度10,000mの上空から見渡せるF-35と違い、この空母のレーダーは狭い範囲しか走査することが出来ずにいた。


「朝倉、その多数の敵機の現在地は?」


「約100km南西、静岡付近です」


「210kmか・・・西から200機、横田から200機。バッテリー充電が完了するのと同時に来襲か・・・いくらプロペラ機と言えども400機を相手にするのはキビシイな・・・朝倉さん、ご苦労だった、すぐに帰還してくれ」


「了解、帰還します」


10分も経たない内にF-35の爆音が聞こえてきたかと思うと、その音はどんどん大きくなり、F-35が着艦した時の振動が僅かに艦を揺らした。そして朝倉が慌ててCICに駆け込んで来た。

それと同時に、レーダーを操作していた大谷が叫んだ。


「南東からの敵機軍、レーダー補足!ターゲットの数200以上。目標多数によりトラッキング不能、約20分で到達!」


何かマズイ事になったようだ。田島も艦橋からCICへ戻り、森本と一緒に壁に沿って並んだコンソールの機器を操作している。

俺と美月、凛子は石田の横に並んだコンソールの椅子に座り、ただただこの状況を指をくわえて見ているだけだ。吉野は小銃を胸のあたりに構えつつ、入口ドアの横の壁にもたれながら心配そうな面持ちで立ちすくんでいる。


「ねぇ、なんかヤバイ雰囲気だよね」


凛子が不安げに話しかけてきた。


「ああ、ヤバそうだよな・・・」


せっかくここまで頑張ってきたのに、どうやら最後の最後で躓いたみたいだ。いくらイージス艦と同等の火力を備えたこの艦でも400機を相手にすることは不可能だ。そして肝心の電磁波発生装置もうまく動かないらしい。

やっぱりダメだったか・・・まぁ、100%帰れると思っていたわけじゃないけど、こうして少しずつ希望が消えていくのはかなり凹む。


「みんな、ちょっと話を聞いてくれ」


川村がCICの中央に立ち、俺達に呼びかける。いつもに増して真剣な表情で。


「敵の航空機200機がこちらに向かって来ている。そして間もなく横田基地からもう200機が飛び立って向かってくる。総勢400機だ。これだけの数をこの艦一隻で相手にするのは不可能だ。そして電磁波発生装置だが、機器の損傷によりソフトウェアが適切に動作しない。通常はプログラムが行う動作を手動で行わなければならなくなったんだが、タイミングを合わせるのが非常に困難で、成功する確率はゼロに等しい・・・このままここに居れば爆撃によってこの艦は破壊されるだろう。それでもここで抵抗するか、それとも諦めて投降するか、そして・・・万が一の可能性を信じて電磁波発生装置を起動させるか、選択肢は3つだ。そこで・・・皆の意見を聞きたい」


川村の話を聞いて皆が静まり返った。機器から発せられるブーンと言う低い音が耳につく。


「あの、良く分かんないんですけど、電磁波発生装置って修理できないんですか?」

凛子が不安げに尋ねる。


「故障の原因がまだ特定できないんだ。もし特定できたとしても、修理できるかどうかわからない。それに、時間が無いんだ。あと15分足らずで敵の爆撃機がここへ到達する」


また皆黙り込んでしまった。

あと15分で、この空母の中で俺達は死ぬのかもしれない。

この世界へ転送されて来た日、川村達に救出された時の事、敵の装甲車を急襲して吉野を救出し、死にそうになった時の事、病院へ忍び込んだ時の事、そして美月を助け、山下を殺した時の事、病院の屋上で美月や凛子達と夜通し話した事、美月の部屋で皆で酒を飲んだ時の事・・・この世界での思い出が、次々と脳裏をよぎった。

楽しい事もあったし悲しい事もあった。本当に濃密な日々だった。この思い出は、ここで死ぬためにあるんじゃない。未来へ繋がる一本の糸なんだ。”必然”という名の、長い糸なんだ。その糸をここで切ってしまったら、もう未来へ行く事はできない。今の俺達にとって、未来とは俺達の元の世界の事なんだ。


「あの・・・俺はここで死ぬつもりもないし、投降して奴らに捕まるつもりもありません。こんな変な世界にいきなり転送されて来て、普通だったらマトモに生きていく事だって難しいんじゃないですか?でも俺達はこうして今ここに居る。皆で力を合わせてここまでやってきたんです。たったこれだけの人数で、奴らの軍隊を相手にここまでやってきたんです。美月が言ってたんです、こんな出来過ぎな事ってあるわけない、これは偶然や奇跡なんかじゃなくて必然だって。元の世界へ帰るために起きた必然なんだって。だから、だからここに居座って死を待つより、投降して帰るのを諦めるより、俺は万が一だとしても帰る道を選びたい・・・です」


居ても立ってもいられず、思わず喋ってしまった。横に座っていた美月が、俺の手をギュッと握りしめてきた。


「飯田君、ありがとう、君の意見は理解した。他に意見のある者はいないか?」


「このままここに居たら爆撃されて死んじゃうんですよね?降参してあいつらのトコに行ったら拷問とかされるんでしょ?そんなんどっちもイヤですよ!だったら私も飯田っちと同じ考えだなあ」


凛子が石田の乗った車いすの向きを変えながら、ぶっきらぼうに言った。


「そうか・・・他に意見がある者は?」


皆うつむいて黙っている。こんな事になるとは思っていなかった。この空母に入る事さえ出来れば、全員がすぐに元の世界へ帰れると思っていたのだ。


「よし・・・まず・・・このままこの空母に留まりたい者は居るか?」


「・・・・・・・・・」


「では、投降したい者・・・あ、いや、投降するんだったらもう時間が無い、行きたい者は今すぐここから出た方がいいぞ」


「・・・・・・・・・」


「という事は・・・全員、電磁波発生装置の起動に賭ける、って事でいいか?」


「まー、それしかないっしょー!」

「大丈夫ッスよー! 何とかなるって!オッケーオッケーオッケー!」

田島と朝倉が手をパンパン叩きながら叫んだ。皆の顔を見回すと、なぜか皆ニコニコしている。俺も不思議とホッとしたような、緊張が少しほぐれたような気持ちになった。


「敵航空機、到着まで5分、横田基地からも多数の航空機が向かってきます!」


CICのメインディスプレイに映されたレーダーには、西と南からものすごい数の輝点こちらに向かって来るのが見える。まるで集中豪雨の雨雲レーダーを見ているようだ。


「石田君、バッテリーはOKか?」

「充電率99.8%、これだけあれば問題無く起動できます。診断プログラムもすべてチェックOKでした。いつでも起動できます」

「じゃあ石田君、君のタイミングで起動してくれ」

「えっ!?自分がやるんですか?」

「そうだ、君以外に誰が居る?君は八島重工の、このプロジェクトのリーダーだろ?」

「え~~っ・・・わ、わかりました・・・」

「それからみんな・・・今日まで本当にありがとう。ここまで来る事が出来たのも、皆が協力してくれたからこそだ。俺達自衛隊員だけでは無理だったと思う。感謝してもしきれないくらいだ。あっちの世界に戻ったら、全員で集まって帰還パーティーをやろう!必ず全員出席だからな!忘れないでくれよ!・・・じゃあ石田君、起動してくれ」


「飯田さん、あの・・・ギュってしていい?」

美月が俺の手を握りながらつぶやく。そして俺の身体に両手を回し、肩に顔をうずめた。

「元の世界に帰ったら・・・また会おうね」

「ああ、美月に部屋の掃除しに来てもらわなきゃな」

「うん・・・」


かすかにブーンと言う低い唸り声のような音が聞こえてきたかと思うと、それはどんどん大きな音になり、その音の振動でテーブルに置いてあったカップやペンがビリビリと振動し始めた。

全身の力がスーッと抜けて行くような感覚・・・目の前がだんだん白くなり、終には視界が真っ白になった。

身体はどこからか落下しているような、しかし浮遊しているような不思議な感覚だった。

もうどれくらこうしているのだろう?数時間経ったようにも感じるし、わずか数秒にも感じる。そう言えば美月が抱きついていたはずだが・・・身体の感覚もまったく無い。

匂いも感じないし暑くも寒くも無い。何も聞こえないし何も見えない。どちらが上なのか下なのかも分からない。

ここは・・・どこだ・・・俺は・・・何を・・・俺は・・・誰だ・・・

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