第31話 美月救出作戦 Phase5

------- 静岡警察試験研究センターから300mの路上 イーグル車内(川村、田島、大谷) ---------


「遅いですね・・・」

イーグルの運転席で腕組みをしながら田島がつぶやいた。

飯田が静岡警察試験研究センター内に入ってから30分以上経っている。


「突入しますか?」

「いや、あと10分待ってみよう」


車内はピリピリした空気が充満していた。

田島が小刻みに貧乏ゆすりをしているせいで、シートの台座の金具がカチカチと小さな音を立てている。


「%$&@・・・こち・・##%+か&$#イーグル@%>&・・・」


突然助手席のダッシュボード上に置いてあったトランシーバーが音を立てた。雑音でうまく聞き取れないが、飯田からの連絡に違いない。


「こちらイーグル!月光、感明送れ!」

「@#$>>・・こちら・・&@$#>$!@#・・・」

「月光!感明送れ!」

「・・・・・・・・・・・」


ほとんど雑音でまったく聞き取れない。


「川村一佐どうしますか?間違いなく飯田君からですよね」

「そうだな、大谷、RWSはOKか?」

「熱線暗視映像装置感度よし、いつでも打てます!」

「よし、行くぞ!」

「了!」


田島がイーグルのエンジンをスタートさせてアクセルを一気に踏み込むと、V型8気筒液冷ディーゼルターボエンジンは低い唸りを上げながら5.5トンの車体をぐんぐん加速させてゆく。


「正面ゲート左に敵兵3名、右詰所前に1名!」


大谷が赤外線ナイトビジョンに映し出される映像を見ながら叫んだ。


「有効射程内に入り次第掃射!」

「射程内に入り次第掃射します!」


熱線暗視映像ディスプレイに映し出される人型の白い影がだんだん大きくなる。

大谷は右手でゲーム機のジョイスティックのようなレバーを操作し、画面上のレティクルを左の3人の敵影に合わせレバーのボタンを押した。

イーグル上部の小ぶりな砲塔右側に取り付けられた7.5mm機関銃が火を噴き、左側の3人の兵士はいとも簡単に地面へ倒れこむ。

次に大谷は右側に立つ兵士に照準を合わせ、掃射を浴びせた。


「正面ゲート前、敵影なし、クリア!」

「よし、ゲート前で徐行、手榴弾でゲートを破壊する」


田島がイーグルをゲート前で減速させると、川村が助手席の窓から手榴弾をゲートに向かって投げ込んだ。

眩い閃光と激しい爆発音、その爆破により飛び散ったゲートや石の破片がイーグルの車体に当たり、カンカンと音を立てる。

ゲートから20mほどの場所でイーグルはUターンし、手榴弾によって破壊されたゲートを乗り越えて施設内へ侵入した。

施設内の複数の建物から兵士がわらわらと飛び出してくるのが見える。その中の数名は銃を構え、イーグルに向かって発砲してくる。

大谷はディスプレイに映し出された映像を見ながら兵士を1人、また1人と7.5mm機関銃で正確に打ち倒してゆく。


「・・・こちら月光!こちら月光!美月確保!現在正面向かって左側の建物1階ロビー!」


トランシーバーから飯田の叫ぶ声が鳴り響いた。


「こちらイーグル!感明良し!10秒後に建物入口を掃射する、どこか物陰に隠れてろ!!」

「こちら月光、了解!え?10秒!?」

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