第30話 美月救出作戦 Phase4

俺達は血の海の中で立ち上がったが、裸足の美月は血のぬめりでよろけてしまい、思わず俺の胸に倒れこんだ・・・が、この時になってやっと美月が全裸だった事に気が付き、俺はあわてて美月から目を逸らす。

それは美月も同じだったようで、キャッと叫んで両手で胸を隠した。いや、下の方は隠さないのか!?

俺は無意識のうちに視線を下に向けてしまった。


「エッチ、どこ見てるんですかっ!!」


「い、いやいや、わざとじゃないって、そ、それよりも早く服着て!」


美月のハダカを見てしまった・・・いや、ついさっきまで全裸の美月に膝枕してもらってたのに、全然気にならなかった。やっぱりかなり動転していたんだろうな。


「飯田さん、あの、指が、爪剥がされちゃった指が痛くて・・・服着るの手伝ってもらえます?」


「あ、そうだね、気が付かなくてごめんな、じゃあ、ハイ」


俺は両手で美月のパンティーを広げてベッドに座っている美月の前に差し出した。


「ちょっと!あっち向いててくださいよ!見ちゃだめですよっ!」


「あーはいはい・・・・・ん!?」


廊下の方からかすかに足音が聞こえてくる。


「ヤバイ!美月、そのままベッドでうつ伏せになって死んだふりしてくれ!」


美月がベッドにうつ伏せに倒れると、血の付いた俺の顔を拭いたシーツと相まって、まるで死体のように見える。


俺は入口から死角になった柱の陰に隠れて息を殺す。そしてガチャリとドアが開く音が聞こえた。


「山下殿、お楽しみは終わりましたかー!次は私の番ですから!げへへへ!あああああああ、もう殺っちゃたんですか!?えー楽しみにしてたのになぁ、げへへへへ・・・あ?・・・あれ?は?」


ダミ声の男はゆっくりと部屋に入って来るとベッドの上に倒れている美月を見て下品に笑った。だが次の瞬間、血で真っ赤に染まった床の上に転がる山下の死体を見つけて呆然と立ちすくんだ。


俺はそいつの背後から忍び寄り、首筋にスタンガンを思い切り押し付けてスイッチを押す。男は一瞬で気を失ってその場に倒れた。

すぐに美月がベッドから起き上がり、しげしげと気絶した男を見ている。


「飯田さん、この人、死んじゃったんですか?」

「いや、スタンガンで気絶してるだけだ」

「そうかぁ・・・」


美月は山下の死体の傍に落ちていたサバイバルナイフを拾うと、両手で振りかぶって男の胸にナイフを突き刺した。刺された瞬間、男の身体はビクッと痙攣したが、すぐに息絶えたようだ。


「わっ!美月、いきなり何するんだ!」

「この人、私の爪を剥いだんですよ・・・飯田さん、この人もう死んじゃいましたよね?じゃあこれで私も飯田さんと同じ、人殺しだよ」


そう言った美月の口元がほんの少し微笑んだような気がして、俺はちょっと面食らった。

この子はいきなり大胆な行動をすることがある。心も身体もこんなにボロボロなのに・・・俺なんかよりもずっと肝が座っている。


いや、そんな事より早くここから脱出しないと、すぐにまた他の者が来るかもしれない。

美月の着替えを手伝い終えると、俺はポケットからトランシーバーを取り出してスイッチを入れた。


「イーグル、こちら月光、感明送れ」

「・・・#&@!%・・こち&*%$--おく・・%#@&&・・・」

「イーグル、こちら月光」

「げ%#@&-%・・・か*%#・・・」


どうやらこちらが地下に居るため、電波が届きにくいようだ。

会話は出来ないが、こちらが無事な事は確認できたはずだ。果たして川村達は突入してくれるだろうか?

だがこのままここに居てもいずれ捕まる。川村達が救出に来てくれる事を前提に行動するしかない。


「よし、美月、行くぞ!」

「はい」


山下にナイフで刺された右肩の痛みが酷くなってきた。歩くたびに振動でズキズキと痛みが走る。

美月も爪を剥がされた右手を庇いながらヨタヨタと歩いている。かなり激しい拷問を受けたようで、歩く事さえかなり辛そうだ。

俺は美月の腕を自分の肩に回し、彼女の体を支えながら階段を昇る。

その時、遠くで断続的な銃声が聞こえた。そして何かが激しくぶつかったような衝撃音。

来た!川村達のイーグルが突入したのだ!

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