第18話 奪還作戦 ミーティング

「まず1号車だが、運転は田島、同乗者は大谷と美月、2号車は俺が運転、同乗者は飯田君と凛子、吉野さん」

いつものように川村が中心となってミーティングが始まる。いよいよ静岡の病院に隔離されている2名の奪還計画が始まるのだ。

今回も自衛官の3人が作戦の立案を行った。


ここから現地までは車2台に分乗して全員で向かう。この世界の車はスピードが出ないため、静岡までは約4時間ほどかかるようだ。

奥多摩の病院を出発後、八王子へ。八王子から国道16号線、国道129号線を走り厚木ICから東名高速道路へ入る。そのまま東名高速道路下り線を走り、静岡ICで東名高速を降りるのだが、ここから1号車と2号車は別行動になる。

2号車は静岡市内の静岡共立病院へ、1号車は国道150号線方面へ向かい、南安倍川橋近くの静岡愛徳会病院裏口そばの路地で”静清医療リネンサービス”のトラックを待ち伏せする。この静清医療リネンサービスと言う会社は病院のシーツやタオルなどのリネン類を洗浄消毒するサービスを行っている会社だ。

静清医療リネンサービスのトラックは静岡愛徳会病院でのリネン集荷を終えると、ターゲットが入院している静岡共立病院へ向かう事になっている。

1号車はそのトラックを急襲して奪い、田島、大谷、美月の3人は静清医療リネンサービスの職員になりすまして静岡共立病院へ侵入する。

一方、俺の乗った2号車は静岡共立病院の隣に立つ”しずおかクラウンプラザビル”の裏手に車を停め、俺と川村一佐、凛子の3人が横の非常階段からしずおかクラウンプラザビルの屋上へ昇る。

非常階段は建物の3階部分から取り付けられているため、まず俺がジャンプして非常階段に登り、そこからロープを垂らして川村一佐と凛子を引き上げる。


屋上にたどり着いたら路地を挟んで約15m隣の静岡共立病院の屋上へ俺がロープを持ってジャンプする。しずおかクラウンプラザビルは12階建て、静岡共立病院は10階建てなので、十分な助走距離があれば問題無くジャンプできるはずだ。

しずおかクラウンプラザビルと静岡共立病院の間にロープを渡し、それを伝って川村一佐と凛子が静岡共立病院屋上へ。川村一佐は自衛隊員なので心配無いが、凛子はうまく渡れるだろうか?もちろん何回もトレーニングして出来るようになっているのは知っているが・・・


首尾よく静岡共立病院の屋上に到達できたら、次はターゲットが隔離されている病室のベランダへ侵入する。

幸いにもターゲットが入院しているのは最上階の10階の部屋。屋上からであれば難なくベランダへ降りることができるだろう。

そしてここからが正念場だ。

ガラスカッターでベランダの窓ガラスに穴をあけ、内側のロックを外して病室内に入る。ターゲットの2人は同じ病室に隔離されているのでそのまま2人を確保して病室から脱出するのだが、1名は両足欠損、もう1名は脊椎損傷で自力では全く動けないらしい。そのため、ストレッチャーに乗せて移動することになるのだが、ストレッチャーがすぐそばに用意されているとは限らない。もしストレッチャーが見つからなければ2人を抱えて脱出しなければならず、その役目は間違いなく俺だ・・・


病室前の廊下には常時監視が2名張り付いている。この監視との戦闘は免れないはずだ。

大きな音が出る銃は使えないのでスタンガンを使う事になっている。しかし、監視は2名なのにスタンガンは1台しかない・・・


無事に監視を倒すことが出来たら、我々はエレベーターで地下1階へ向かう。地下1階にはリネン類の集積室があり、そこで静清医療リネンサービスの係員に扮した2号車の面々と落ち合う。リネン収集カートにターゲットの2人を隠して脱出し、俺達は医療関係者の服装に着替え、夜間受付口から病院を出て車に向かう。


とまあ、こんな計画なのだが、こんなスパイ映画みたいな作戦が成功するのだろうか?

この作戦のために川村と田島、大谷は何度も静岡に下見に行ったらしい。

ちなみに病院やリネン収集に関する情報は、院長先生が医者仲間の伝手で探り出してくれたものだ。


作戦決行は2日後。

真夏がすぐそこまで近づいて来ていた。

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