おかしどろぼう

旦開野

第1話


 ぼくはおかしどろぼう。ママがこっそりかくしたおかしを、かれいにぬすみだす、わるいやつなのだ!


 今日のターゲットは、れいぞうこのプリン。おかいもののとき、ぼくは、ママがさりげなく、かいものカゴに3このそれを入れたのを、みのがさなかった。ママがぼくに何もいわずにおかしをかうときは、いつもママがたべるためだ。ぼくのじゃない。くやしいから、ぼくはおかしどろぼうにへんしんするんだ!


 さくせんはこう。ママはようちえんのおむかえからかえってくると、せんたくものをいれるために、ベランダにむかう。チャンスはそのとき。ママがみていないときをねらって、れいぞうこのなかのプリンを1こ、ぬすみだすんだ!


「ただいま! 」

 ぼくはようちえんからかえってくると、いつものように、げんきにただいまをする。

「ちゃんと手を洗いなさいよ」

 ママはいつもそういう。ぼくは、てをあらうばしょにいそいでむかって、いつもよりもはやく、てをあらう。おもったとおり、ママはベランダにいき、せんたくものをいれはじめた。

 いまだ!ぼくはれいぞうこにむかってはしり、とびらをあけた。

「あったぞ! 」

 ぼくは3つならんだ、カップのひとつをとりだす。けどあれ?なにかがちがう?これってもしかして……

「ちゃわんむし!? 」

 それはママとパパが、よくよるごはんにたべている、3こいりのちゃわんむしだった。プリンじゃなかった……れいぞうこのまえでがっかりしていると

「冷蔵庫の前で何してるの? 」

 ママが、せんたくものをいれおわったところだった。

「何?ひろくんは茶碗蒸しが食べたいの? 」

 ママはにやにやしながらいった。まるで、ぼくがすることをぜんぶわかってたみたいだ。

「ちがうの!ぼくは……プリンがたべたかったんだもん! ぼくは……ぼくはおかしどろぼうだから! 」

「あら。どろぼうさんじゃわるい人じゃない。じゃあこれから作るプリンはお預けかな? 」

「これからつくるの? 」

 がっかりしていたぼくは、それをきいて、とてもうれしくなった。

「もうどろぼうさんやめる! だからママ! プリンつくって! 」

 それをきくと、ママはぼくのあたまをなでてくれた。

「じゃあ一緒に作ろっか」

「うん! 」


 ぼくはおかしどろぼう。ううん。もと、おかしどろぼう。これからママといっしょに、おいしいプリンをつくるんだ!


(了)

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おかしどろぼう 旦開野 @asaakeno73

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