組織の恐ろしき警告
北上さんに大男を任せ、俺はスマホのメールをチェック。
【22ex042XXw0wjmX81xw2@xxxxx.xx.xxxx】
差出人不明の怪しいスパムのようなアドレスから、メールが送られていた。
なんだこれは?
明らかに開いてはダメなメールだ。下手すりゃウイルス感染してもおかしくない。
よく、こんなのを開く気になったな。
内容は……ふむ。
『
ピーチは、桃枝のことらしい。てか、なんでバレているんだよ。桃枝は日々バレないよう心がけていると聞いた。もちろん、IPアドレスだとか偽装しているし、俺たちの位置情報すらも彼女の手によって書き換えられている。
だから安心してスマホは使用できていた。
それなのに、なぜ――?
「こ、これは……驚いたね」
「桃枝。お前、バレてるみたいだぞ」
「おっかしーな。逆にハッキングとかされた覚えはないし、完璧なんだけどなぁ……」
相手はいったい何者だ?
もしや、桃枝を凌ぐ世界一のハッカーとかな。そんなのが相手なら、さすがの桃枝も分が悪い。
そんな中、中道は叫んだ。
「とにかく金を返せ! さもないと……」
なにかしようとしていたが、俺が持つ中道のスマホの画面がいきなり切り替わった。
【3:00】
な、なんだこの数字……?
急にカウントダウンがはじまり、数字が変わっていく。
あと三分ということか?
【2:50】
「お、おい。お前、このスマホはなんだ!?」
俺は中道に画面を見せて問いただした。
「し、知らねえ……。俺はなにも知らんぞ!!」
「マジかよ。なんのカウントなのかすら分からんのか」
「まったく身に覚えがない」
そして『シュゥゥゥゥ……』とスマホが音を立てていた。……なッ!?
「哲くん、そのスマホ……爆発するかもしれません!」
「なんだって!?」
俺は急いで外へダッシュ。海の方へ向かい、スマホを放り投げた。直後――。
『バァンッ!!』
乾いた音がした。
マジでスマホが爆発したようだ。こんなこと……ないわけじゃないが、滅多に起こらない現象だ。いったい、どうして……?
「IoTテロってヤツだね」
駆けつけてきた桃枝がつぶやいた。
IoTテロ? 馴染みのない単語だな。
俺は桃枝にその概要を聞いた。
「簡単に教えてくれ」
「スマホとかネットに繋がるモノにハッキングして悪さすることだね。今みたいな爆発とか、そういうの」
さすが詳しいな。そうか、そんな方法で爆発させるとはな。かなり腕のハッカーってことか。
「まさかIoTテロをこの間近で見るとは……」
北上さんでさえ驚いていた。普段、スマホの爆発を目にすることはないからな。
「お、俺のスマホが……」
がくっとうなだれる中道。
コイツをどうしようかな。警察に突き出すか……? いや、今のところ現行犯ではないけれど。
「命が惜しいなら帰れ。俺たちと関わると死ぬぞ」
「……ぐ、うぅ。分かった。あんな爆発を見ちまって俺はゾッとしたよ。関わっちゃいけないものに関わってしまったってな……」
背を向けトボトボと歩く中道に対し、俺は聞いた。
「中道、お前はメールの差出人に覚えはあるか?」
「ねぇよ。誰かも知らん」
そう言い残し、彼は去っていく。
「そうか」
その直後だった。
大型トラックが接近してきていた。ん……なんか猛スピードじゃないか? って、おいおい。トラックが突っ込んできて――中道を容赦なく
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
ぐしゃりと音がして俺は戦慄した。
「……て、てっちゃん。あの人、轢かれちゃったよ!?」
しかもトラックはそのまま逃げ去った。ひき逃げ!? いや、違う……。
「あの男は消されたようですね」
そう、北上さんの言う通りだ。アイツは“消された”ようだ。
俺たちは直ぐに救急車と警察を呼んだ。
だが、中道はその場で死亡が確認された。……即死だったようだ。
◆
「IoTテロに、中道の抹殺……どうなってんだよ」
部屋に戻り、俺は海を眺めながら考えていた。北上さんが背後から声を掛けてきた。
「おそらく、これは『警告』でしょうね」
「警告……」
「ええ。どの組織か分かりませんが、いつでもあたし達を殺せるという意思表示ではないでしょうか」
「直ぐに手を下さない理由は?」
「それは分かりません。ですが、なにか狙っていることは確かでしょう」
もう対馬に滞在するのは危険かもしれない。いや、そもそも日本いること自体がリスクだ。もはや、この国に居場所はないのだろうか……。
だが、少なくとも天音たちの治療が終わるまではいなければならない。
それまで謎の組織――おそらく『八咫烏』との闘いが続きそうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます