国内掲示板の怪しい情報 ※掲示板あり

「二人ともなにやってるのさ」


 突然声を掛けられ、俺も北上さんも“ビクッ”となった。桃枝が起きたようだ。……ていうか、めっちゃ呆れ顔。


「あー…いや、これは」

「分かってるよ。てっちゃんが絆ちゃんを襲ってるところだよね」


「ちゃうわ! 逆、逆ぅ!」



 正確には俺が襲われているんだが。

 危うくズボンを脱がされるところだったが、ギリギリセーフ。桃枝が起きてしまった以上はもう無理だ。

 非常に残念だが、断念! また今度。


「…………」


 北上さんは惜しそうに俺を見つめる。

 そんな見られても!?


 ちょっと気まずいぞ。どうしようか脳をフル回転させていると、桃枝が手をパンと叩いた。



「あ、そうだ。てっちゃん」

「ど、どうした?」

「あのさ~、国内掲示板でいろいろ調べたんだよね」

「ほお?」

「そしたら気になる書き込みがあって」



 タブレットの画面を見せてくれる桃枝。俺と北上さんは覗き込む。




 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:39:16 ID:d2N


 ワイの知り合いの刑事がある事件を追って全国回ってる



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:46:93 ID:eka


 バカなこと言ってねぇで働け



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:51:47 ID:ySp


 刑事が全国?

 そんな大事件あったっけ……



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:52:23 ID:VV1


 闇バイト



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:55:71 ID:d2N


 >>VV1

 違う

 前にあった島の事件が関係しているらしい



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:57:33 ID:can


 宝島か?

 あそこはナニモなかっただろ!

 それよりロシア人が日本国内で戦争してたって話だ

 知らんけど



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:58:88 ID:24y


 戦争?ww

 そんなのあったらとっくに動画とか拡散してるだろうが! 証拠を出せ! 証拠を!



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 12:59:10 ID:d2N


 知り合いの刑事は今日対馬に向かった

 理由は分からん

 公安も動いているって話だ



 名無しさん XX/XX/XX(Sun) 13:03:94 ID:eka


 よろしい、ならば戦争だ!



 クロウ XX/XX/XX(Sun) 13:05:59 ID:101


 帰還者に警告する

 お前たちの行動は常に監視されている

 故郷を去るというのならば近いうちに裁きが下るであろう

 死を恐れるのなら宝を放棄せよ

 慈悲を与える

 期限は三日だ




「な、なんだこりゃ……! 刑事も気になるが、最後の書き込み」

「クロウ。コイツ、なんか怪しいよ」


 桃枝の指さす書き込み。

 その『クロウ』という人物、明らかに俺たちに向けたようなメッセージだった。……そんな、まさか。

 俺たちを監視している?

 確かに妙な気配を感じていたが、それなのか。だとしたらマズい。


「故郷を去る、というのは日本のことでしょうか」

「北上さん、そういう意味ならゾッとするぞ」


 すでに俺は鳥肌がヤバいことになっていた。

 これはつまり『八咫烏』の書き込みという可能性が高い。俺たちは監視されているかもしれないということだ。


「ねえ、てっちゃん。宝って財宝のことだよね。もう売っちゃってないし、どうしよう」

「期限は三日らしいな。過ぎるとどうなるんだろうな……」



 どのみち手元にある財宝は『ピンクダイヤモンド』のみだ。これだけは残していた。もともと、櫛家にあげるものだったからだ。

 だが、決裂した今は俺たちのもの。


「まずいですね。櫛家や刑事、公安に八咫烏……かなりの数の組織に狙われているということです」


「そう聞くとやべえな……」



 そこに更に他の組織も――いや、これ以上は想像もしたくない。


「移住した方がいいんじゃない?」

「そうだな、桃枝。明日にはみんなで話し合おう」

「決まりだね~!」


 桃枝はタブレットをポイッと放り投げた。

 そして、そのまま寝落ちした。……ね、寝ただと!?


 寝落ちするの早ぇな。

 風邪をひかないよう、俺は布団をかけた。



「北上さん、明日また病院へ行こう」

「そうですね。早急にミーティングを行い、今後の方針を固めましょう」


 決まりだ。早起きして天音たちと合流。どこへ移住するか決める。

 このままダラダラしていると命を狙われる。

 また誰かが傷つくかもしれない。

 それは嫌だ。


 もちろん戦闘になるなら俺は戦う。みんなを守るために。

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