無人島を探せ

 急いで向かい、扉をノックする俺。

 直ぐに反応があって北上さんが部屋の扉を開けてくれた。


「……どうしました?」

「北上さん、大至急で話があるんだ」

「それより、下着姿の天音さんを連れて……何事です?」


 ジロッと見られ、俺は今になって天音が下着姿であることに気づいた。……うわっ!!


「早坂くん!! ちょっとぉ!!」

「す、すまん!! まったく気づかなかった!」

「ばかばかばか!!」


 ポカポカ殴られるが痛くはない。

 けど、これは非常にまずい。

 幸い廊下に誰もいないから、天音の肌を見られることはなかった。

 急いで部屋の中へ入れてもらった。


「北上さん、悪いんだけど天音に服を貸してあげてくれ」

「構いませんが、黒のタンクトップしかないのです」


 カバンから取り出す北上さん。

 軍人らしい服装だな。

 というか、今の北上さん自体が迷彩のタンクトップ。意識高すぎだよ。


「下着姿よりはいいよ。ありがとね」

「いえいえ。しかし、胸のサイズが……」

「……うぅ。北上さんって大きいんだね。ぶかぶか……」


 敗北を感じているのか天音は、ちょっとショックを受けていた。そうだったのか……北上さんの方が胸が大きいのか。知らなかったぞ。


「へ~」

「ちょ、どこ見てるの、早坂くん!」

「いや、すまん」

「もー!!」


 また怒られそうなので、俺は見ていないと誤魔化した。


 いやいや、そんな場合ではない!!

 それよりも重要なことがある。


「北上さん、ロシア人だ! 俺の部屋に仮面の男がいたんだよ!」

「なんですって? いつの間に侵入を……つまり尾行されていたということであり、非常に危険ですね」

「ああ、さっき北上さんの部屋を訪ねて、その後に俺の部屋に男がいたんだよ。ミグで撃つと脅されてね」

「戦闘機とは、戦争でも起こす気ですか」

「目的は分からんが、俺たちを監視しているとも言っていた」

「……逃げられない、ということですか」

「多分な」


 とはいえ、ホテルを特定されてしまってはな。もうここにはいられない気もしていた。少なくとも俺は、あの部屋で一泊はしたくないな。


「これからどうする?」


 不安気に天音が声を漏らす。そうだな、移動するしか――ないよなぁ。


「啓くん、その男は警告だけで他は特に何も言っていなかったんですね?」

「あ、ああ……。それだけだった」

「なるほど。なにかしらの方法で我々の行動を読み取っているようですね。それが何か、今のところは分かりませんが」


「ホテルはどうする?」


「このままでいいでしょう。その男が正しいのなら、どのみち監視されているのですから」

「でも、俺はあの部屋に戻りたくないぞ」

「部屋は変えてもらいましょう」


 そうか、そうればいいのか。

 俺はフロントへ向かい、他の客とトラブルになったと事情を説明し、部屋を変えて貰うことにした。偶然にも他の階が空いていたので、そちらへ移動することに。


 今度は六階だ。


 これで少しは一安心かな。


 ようやく落ち着ける……。

 北上さんの言う通り、監視されているというのなら堂々としていよう。もちろん、機会を伺って、その監視方法を特定してやるけどな。

 今はこれでいい。


 その後、飯を食ったり、シャワーを浴びたりした。

 スマホに千年世や桃枝から連絡が入っていた。あとで確認しよう。


 しばらくすると扉をノックする音が響く。誰だ?


 念のため覗き穴から確認する。

 天音だった。

 俺は扉を開けて天音を部屋に招いた。


「どうした?」

「そ、そのぉ、ひとりだと心細くて」

「ちょうど良かった。俺もだよ。しばらく一緒に居てくれ」

「良かったぁ~。早坂くんと一緒なら安心だよ~」


 ベッドへ向かい、腰掛けると天音も隣に座った。


「さっき連絡があったんだが、千年世とかみんなも合流するかもしれない」

「ああ、わたしにもメッセージ来てたよ。博多に来るかもって」

「でもなぁ、危険がなぁ……」

「そうだよね。またどこか無人島へ行こうか?」

「それもありかもな。街にいると民間人を巻き込んでしまう」


 今晩は、天音と無人島の候補でも探そうかな。

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