新たな仲間と目標
救出した外国人を連れ、俺はなんとか小洞窟へ戻ることができた。
中へ入ると早々、AK-47を向けられた。
「……啓くんでしたか。心配したんですよ。なにをしていたんですか」
「すまん、北上さん」
俺はみんなに対し、食人族に捕まっていた外国人のアベリアと青年のトムを紹介した。
「え、ええっ!? 早坂くん、この人達を助けたんだ」
驚く千年世だが、アベリアとトムと握手してフレンドリーだった。
「ちょっと早坂くん」
「お、おう。天音……そんな睨むなって」
「少し偵察するだけじゃなかったの」
「す、すまん。つい……」
「はぁ……。でも、生存者がいたんだね」
「そうだ。飛行機の墜落で無事だったらしい」
アベリアとトムは、飛行機の後部座席に座っていたらしい。それで奇跡的に助かったのだとか。
そういえば、日本航空123便墜落事故では、絶望的な事故であり墜落だったが……機体後部に四名の生存者がいたという。やはり、後部座席は助かりやすいということなのか。
――なんであれ、あの事件は風化してはならない。
「なるほど、そういうことですか」
「北上さん、この二人を保護したい」
「分かりました。それで、現場の状況は?」
「テロ組織が食人族に襲われているところさ。こっちは当分見つからないはず」
「ここに留まる方が良さそうですね」
俺はアベリアとトムに朝食を振舞った。
二人とも墜落事故後、なにも口にしていないという。そうだよな、あんな状況では食べている暇なんてなかったはず。
「はい、コーンスープ」
「ありがとうございます」
「アリガト」
二人とも涙を流しながらスープを味わっていた。
それから、しばらくして事情を聞くことにした。
「アベリア、聞かせてくれ。よく無事だったな」
「……わたしもビックリだよ。気づいたら炎に包まれていて……周りの人たちが死んでいて……」
当時の事故を思い出したのだろうか、アベリアは青ざめていた。
「それで……食人族に捕まったのか」
「はい。わたしとトム。それからイタリア人の方が……」
ああ、あの食われていた人か。
残念ながらもう帰らぬ人になってしまったが。
「そうか。アベリアもトムも観光客なのか」
「そうなんです。トムは日本の文化に憧れていたんですよ。それでしばらく旅行していたんですが……まさか、帰りでこんなことになるなんて……」
気を落とすアベリア。
それにしても、日本語が
「アベリアは日本は長いんだ?」
「そうですね、日本に住んでいますから」
それでこんなに話せるんだ。
外国人の美少女と話すなんてこれが初めてだ。なんだか楽しいな。なんて思っていると、北上さんと天音、それに千年世が俺を睨んでいた。
「「「…………」」」
おっと、いかん。
このままでは半殺しにされるな。
「そ、それで……二人ともアメリカ人なのか?」
「そうですよ。クイーンズ出身なんです」
ニューヨークか。
まさかアメリカ人が乗っていたとはな……いや、不思議なことでもないけど。
「ちょっといいですか、啓くん」
話し合っていると北上さんが俺の肩を叩いた。
「ど、どうしたんだい……北上さん」
「…………外国人の金髪の女の子が良いんですか」
「そ、そんなジト目で見ないでくれよ」
「あたしだって金髪ですよ」
「そこを気にしてるの!? 大丈夫だって、浮気なんてしないから」
「ならいいです」
ぷくっと膨れながらも北上さんは、引き下がってくれた。
普段は嫉妬なんてしないクセに、なんでアベリアに対しては対抗心を燃やしているんだか。金髪のせい?
「あ、あの……わたし、なにか粗相を?」
「いや、大丈夫だよ。それよりも、アベリアかトムはイスラム語って分かる?」
「わたしは分かりませんが、トムは通訳を目指しているのでイスラム語もある程度なら分かるかも」
「おぉ! 実は、この島にはISILも潜伏しているんだ」
「ええ……。ISILってイスラム国ですよね?」
「そうだ。さっき襲われていた覆面の男連中だよ」
「あれですか!」
「ヤツ等の目的を知る為にはイラスム語の分かる人が欲しかったところだ。トムに通訳してもらえないだろうか」
視線をトムに送ると、彼は頷いた。
「ワカッタ。マカセロ」
相変わらずカタコトの日本語だけど、サムズアップして自信満々だ。どうやら、俺の話していることを理解しているようだな。良かった、それなら話が早い!
当面はISILの目的を探ることだ。
場合によってはヤツ等の『船』を奪う……!
きっとあるはずだ。
この北センチネル島のどこかに。
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