生存者発見! 救出大作戦

 一日が経過して、なんとか朝を迎えた。

 テロ組織にも食人族にもバレることなく、洞窟で過ごせた。ここなら、安心して寝られそうだな。


 北上さんと千年世が戻ってきた。


 そう、あれから交代を繰り返して、彼女達が最後の番だった。


「いやぁ、眠いですね」

「……うぅ」


「もう大丈夫そうだし、寝なよ」


「そうしますね、啓くん。おやすみなさ……」

「ふぁぁ……」


 二人とも脱力するなり眠ってしまった。三時間で交代も疲れるな。もっと長くても良かったかもしれない。次回は考えよう。


 さて、朝食にでもするか。



 リュックからポケットサイズのガスコンロを取り出し、ガス缶にセット。チタンマグを取り出し、水溜りにある水を濾過ろかした上でカップに注いだ。


 沸騰後、コーンスープの粉末を入れて完成。



「出来たよ、天音」

「おぉ、コーンスープかぁ。寒い朝には丁度いいね」


「そうだろう。先に飲んでくれ」

「え? 早坂くんの分は?」

「節約しないとだからな。半分くれ」

「そ、そか。じゃあ、間接キスだね……」

「今更気にするなって」

「そ、それはそうかもしれないけど緊張するの……!」


 天音が飲み終わった後、カップを渡された。

 なるべく気にしないようにするつもりだったが、意識しちゃうじゃないか。


「……」

「そ、そんな見つめないでよ!?」

「す、すまん。じゃあ、貰うぞ」

「……うん」


 ゆっくりと口をつけていく。

 天音が顔を赤くしてこっちを見ている……。

 そんなに見られると飲み辛いのだがな。


 ……俺は思い切ってスープを飲んだ。

 ……うまい。

 体が温まるなぁ。



「ありがとね」

「なんで俺を言うんだよ?」

「コーンスープ美味しかったから」

「そっちかよ。まあいいや、天音。この器具の使い方は分かるよな」

「うん、この前教えてもらったから」


「じゃあ、北上さんと千年世の分も作ってやってくれ」

「え……早坂くんはどうするの?」

「俺はちょっと偵察に行ってくる。なぁに、少し様子を見に行くだけさ」

「で、でも……」



 突然、天音は心配そうに俺の手を引っ張ってきた。リスクが高いのは承知だ。でも、いつまでもここに留まっていられないし……。

 敵がいつ乗り込んでくるか分からないからな。



「天音、ここを守ってくれ」

「……無茶だけはしないでね」

「必ず戻ってくる」

「絶対だからね」



 指切りをして、俺はトラップを回避しつつ小洞窟を出た。



 * * *



 外は快晴。

 自然に支配されたこの島は、穏やか。

 とてもテロ組織や食人族のいる島とは思えない。


 AK-47を構えつつ、ゆっくりと前進していく俺。


 敵に見つかったら最後だからな。

 慎重に歩いていく。



 昨日、戦闘のあった現場へ向かったが、特に変化はなかった。

 そこから更に別の方角へ。



「……煙」



 よく見ると少し離れた場所で煙が見えた。

 三分程度歩くと集落が見えてきた。

 そうか、ここが食人族の拠点か。


 よく見ると赤い化粧をした現住民がウロついていた。


 まずいな、十人以上はいるっぽいぞ。


 しかも、謎の儀式をしているし。

 む……アイツ等、人間を食っているのか。


 よ~く見ると木製の牢の中に外国人が何人か閉じ込められていた。……テロ組織のメンバーには見えないな。


 もしかして、あの墜落した飛行機の生存者か!?


 まさか……生き残りがいたなんて。

 三人程度だが牢にいるのが確認できた。だが、ひとりは食人族に放り出され――そのまま調理されてしまった。


 アイツ等、人間を生で食うとか……!

 なんて下劣な。


 残り二人。

 外国人の金髪少女と青年だけ。


 仕方ない……助けてやるか。



 AK-47を構え、俺は食人族目掛けて発砲していく。


 ズドン、ズドン、ズドンと一発ずつ確実に命中させていった。……北上さんのキツイ訓練の賜物だな。



 次々に倒れていく食人族だが、家の中から更に増援が現れた。まてまて、食人族って何人いるんだよ。ワラワラ出てきやがって……!


 これでは弾がもったいない。


 予備のマガジンも一つだけ。


 残り約四十発と考えたら……心もとないな。


 しかもヤツ等、こっちに勘付いてやがる。

 一旦引くか。


 撤退しようとすると、ちょうどISILの連中が五人ほど現れてくれた。食人族は、ISILの連中がやったと勘違いし、槍を持って集団で襲い掛かっていった。



「ウ、ウアアアアアアアアアアアアアアア!!!」



 なんとグッドタイミング!

 俺はこの隙に牢に閉じ込められている生存者を救出した。



「助けていただき、ありがとうございます!」

「日本語が分かるのか」

「はい。わたし、アベリアという日本人とのハーフなんです!」


 この金髪の少女はハーフだったのか。道理で。


「僕モ、スコシ、日本語ワカリマス……!」


 青年の方もカタコトだが話せるようだ。どうやら、二人は友達同士らしい。



「よし、二人とも俺の拠点に案内する。今の内に行くぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る