絶体絶命の大ピンチ!

 銃を向けられて絶体絶命の大ピンチ。

 こっちはナイフ一本しかないぞ。

 千年世も人質にされてるし、迂闊うかつには動けない。


 どうする……?


「……啓くん、ここはわたしが」

「し、しかしだな」


 北上さんがナイフで応戦するつもりらしい。確かに、以前ナイフで弾丸を真っ二つにしたことがあったけど、相手は四人だぞ。さすがの北上さんもこの人数を相手にはできないはずだ。


 となると、大人しく投降する方が得策か。……いや、その前に殺される可能性の方が高そうだけど。


「どうしますか?」

「戦っても厳しそうだ。両手を頭の後ろにして投降の意思を示した方が延命できそうだ」

「そうですね。その間に対策を方法を考えましょう」



 プランは決まった。

 俺たちはテロ組織に対し白旗を上げた。

 すると彼らは銃口を突きつけながらも、地面に膝をつくようにジェスチャーで指示してきた。


 指示に従うと、ひとりの男が俺の後頭部に銃をつきつけた。……げっ、まさか。



「……! …………! ……!」



 なに言ってるか分からねえ。

 やべぇ、殺される!?


「ちょ、早坂くん……!」

「天音……俺はここまでかもしれない」

「そんな! なんとか抵抗しようよ!」

「この状況では無理だ」



 撃たれて死ぬんだ……そう絶望しかけたその時だった。俺の背後にいた男が叫んだ。



「ガアアアアアアア!?」


「な、なんだぁ!?」



 振り向くと、テロ組織の男の腹部に『槍』のようなものがぶっ刺さっていたのだ。い、いったい誰がこんなことを!


 男はぶっ倒れて……恐らく死んだ。



「啓くん、これはいったい」

「俺にも分からん。北上さんの罠じゃないのか?」

「こんなものを設置している暇なんてなかったですよ」



 じゃあ、いったい何が起きたんだ?

 実は千年世が立ち回ってくれていたとか……そんな奇跡が起きたのか。


 そうではなかった。


 残ったテロ組織の三人が周囲を警戒して、いきなり発砲を始めた。


 けれど、それでも別の場所から槍やら矢が飛んできて、それが次々にテロ組織の男たちの頭部や体を貫いた。


 マジかよ!!


 俺たちは姿勢を低くしていた為、なんとか助かった。



「な、なにが起きてるの、これ!!」



 天音は泣きながら混乱していた。

 一体全体、これはなんの攻撃なんだ。


 男達が全員倒れた直後、茂みから人間が姿を現した。しかも、ただの人間ではない。わらの民族衣装に身をまとい、真っ赤な化粧をした男が複数現れた。


 その手には槍やら弓やら原始的な武器を持っていたんだ。


 こいつら……先住民族ということか。



 まさか、島に人間が住んでいたのか。


 先住民らしき男たちは、俺、天音、北上さんを縛り上げた。くそ、テロ組織から解放されたと思ったら、次は民族かよ!



 * * *



 崖の上に小さな集落があった。


「こんな場所に小さな村があったんですね」

「ああ、この島には人間が住んでいたんだ。テロ組織の目的は分からないけど」


 俺たちは今、先住民族の作ったらしい木製の牢屋に閉じ込められていた。逃げ出そうにも、トゲトゲの植物が張り巡らされていて脱出不可能だ。手で触れようものなら、血塗れの大怪我だろうな。


「言葉は通じないし、なんなのここ」

「天音、俺の無駄知識トリビアでよければ仮説を立ててやろうか」

「早坂くん、なにか知ってるの?」


「ああ、噂に聞いた事がある。世界一危険な島『北センチネル島』という島をね。そこには文明とは切り離された非接触部族がいるらしいんだ」



 俺がそう説明すると北上さんも知っていたようだ。



「ああ、それなら知っています。アメリカの宣教師が殺害されたとニュースになっていましたね」

「うん。住民と接触しようとして殺されたんだ。つまり、ここの部族は『北センチネル島』の者の可能性が高い」


 あくまで仮説だが。


「でもさ、それだとなんで、わたしたちまだ生かされてるの?」

「俺たちを食べる為・・・・じゃないか」

「た、食べる……!?」


「多分、コイツ等は“食人族”なのさ」


「……え。ええッ!?」



 天音は顔を真っ青にしていた。

 俺だって信じたくはないが、そこら辺に人骨が転がっているし……多分、そうだろうな。


「参りましたね。普通に殺されるよりも最悪な状況です」


 北上さんの言う通りだ。

 なんとかして脱出せねばな……。

 ここは、唯一捕まっていない千年世に期待しよう。

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