怪しい小屋を見つけた

 見張りを交代にして一夜を過ごした。

 日が昇ってようやく視界が良好に。


「ふぅ、動物も現れなかったし、危険は少ないようだな」

「お疲れ様です、啓くん」


 アツアツのコーヒーカップを受け取る。

 今回はこういう日用品も結構あるし、不便は少ない。食料も缶詰とかそれなりにあるし、飛行機の荷台から散らばったものが多数あった。


 しばらく自給自足の必要はなさそうだ。



「ん~…、おはよぉー」



 天音も起きた。眠たそうに目元を擦り、周囲を確認していた。



「おはよ、天音」

「ここってどこだっけ……」

「謎の無人島さ。忘れたのか?」


「あぁ……そうだった。わたしたち、まだ脱出できていないんだよね」

「残念ながらね。とにかく、朝食を済ませたら千年世を探しにいくぞ」

「そうだね。一人ぼっちで寂しいと思うし」



 チョコレートとコーヒーで朝食を済ませ、さっそく千年世を探しに出た。

 崖を降り、草木の生い茂る道なき道へ。


 さすがに虫がいるな。

 気にせず前へ進んでいくと、道のような場所に出た。



「これは……」



 北上さんが腰を下ろし、地面を確認。

 俺も道らしき場所を注視していく。

 人間の足跡っぽいのもある。

 いや、これは間違いなく。



「えっ、これって誰かが作った道?」

「そうっぽいですよ、天音さん」

「ウソ、マジ!?」


 俺も驚いた。

 最初は獣道かと疑ったが、これは明らかに人の手によって作られた道だ。まさか、先住民がいるとでもいうのか? それとも漂流者が?


 様々な可能性が浮かび上がるが、謎は謎のまま。



「これを辿っていくしかないか」

「啓くん、この先には人間がいる可能性が非常に高い。用心してください」

「千年世ということもあるかな」

「どうでしょうか。この道はかなり前に作られたようですから」

「となると、千年世ではないかもしれないな」

「はい……少し先へ進みましょう」



 ゆっくりと歩いていくと、北上さんは直ぐに足を止めた。



「どうしたよ?」

「靴跡がクッキリありましたよ」

「本当だな。こっちは泥もあるから分かりやすいな」


 泥の部分に靴の型が残っていた。

 再び腰を下ろす北上さんは、その形を見極めていた。まさか、それで特定できるとでも?



「これは軍靴特有の足跡です。間違いありません」

「ちょ……まさか、軍人がいるとでも?」

「まずいですね。プロが潜んでいるのかも」



 おいおい、簡便してくれ!

 宝島でも散々な目に遭ったんだぞ。

 しかも今回、こっちに銃器はないぞ。

 銃を向けられたらその時点で負けだ。敗北だ。



「なんであれ、千年世の救出が最優先事項だ」

「そうですね。一刻も早く彼女と合流しましょう」



 道に沿って先へ進んでいく。

 しばらく歩くと何か見えてきた。


 街中にある公園ほどのスペースに小屋があった。



「「「…………!」」」



 俺もみんなも、小屋を見て震えた。

 この謎の島に誰かが住んでいるんだ。



「小屋に入ってみるか?」

「正面からは危険です。手榴弾が仕掛けられていたらお陀仏ですからね。この場合、先に窓から覗く方がいいです」


 さすがプロの北上さん。

 彼女は素早しい足取りで小屋の窓を覗いだ。


 すると、絶句していた。


「どうした」

「……いましたよ、千年世さん」



「「え!?」」



「いたのか、千年世!」

「千年世ちゃん、中にいるの!?」



 まさか、小屋の中にいたとは。避難していたのかな。



「よし、直ぐに助けよう」

「ダメです。千年世さんは縄は縛られて、目隠しもされています。罠ですね」

「なに!? 北上さん、それはどういうことだ」


「恐らく、誰かに捕らえられたのでしょう。このまま小屋に入れば、見えぬ敵に襲われる可能性が。つまり、千年世さんは“人質”なんですよ」



 ……千年世が人質?

 いったい、誰が……!


 その時だった。


 小屋の陰から複数の覆面が現れ、俺たちは取り囲まれてしまった。



「…………!!」「…………!!」「…………!!」「…………!!」



 男らしき覆面は四人。

 どいつもこいつも目出し帽で素顔が分からない。

 しかも話している言葉も英語ではなさそうだぞ。もしかして、アラビア語……?


「北上さん、コイツ等……」

「これは大変です……。奴らは『イスラム国ISIL』……テロ組織のメンバーですよ」



 テ、テロ組織……!?

 こんなところになんでいるんだよ……!!

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