キャプテン・キッドの財宝
「ところで大伊さんたち、どうして“右”だって分かったんだ?」
北上は後を付けてきたようだけど、大伊さんたちは偶然なのか。
「あー、それね。目印があったから」
「目印?」
どうやら、北上が右の通路に何かしらの目印をつけてくれたようだ。それで分かったのか。納得した。
なら、このまま先を行くだけだ。
準備を整え、歩き出す。
時刻は朝七時となった。
そろそろプロ集団の動きも気になるところだ。
「啓くん、財宝の場所は掴めそうですか?」
「どうだろう。あの地図は地下洞窟を薄っすら書いてあるだけだった。この先がゴールだとは思うけど、ほとんど未知数だよ」
「なるほど。では、いよいよですかね」
北上は、ツルハシを持ちながら先導してくれた。いよいよ鍾乳洞の奥へ向かう。
懐中電灯の明かりを頼りに闇を突き進む。
進めば進むほど、川のせせらぎのような音が強くなっていった。
もしかして、地底湖でもあるのか?
「なんか、異様に広くなってきたね」
俺の後方を歩く天音がそうつぶやいた。
「そうだな。ガチのゴール地点かもな」
「あるといいね、お宝」
「見つけたら、俺たちは金持ちになれる」
「うん、ここまで来たんだもん。がんばろ」
ひたすら洞窟を進むと、かなり開けてきた。
奥は巨大な空洞になっていたんだ。
「こ、これは凄いね……!」
大伊さんが叫ぶ。
その声が洞窟内に響き渡らなかった。この感じ、どういうことだ?
なんであれ、島の地下にこんな大空洞があるだなんて……信じられないな。
まるで地下シェルターみたいだ。
興味深く探っていると、北上がツルハシで地面を掘っていた。
「なにしているんだい、北上さん」
「地質を確認しているんですよ。ここから急に変化しましたからね」
「そんなの分かるの?」
「ある程度ですが」
さすがだな。地質学の才能もあったとはね。本当、北上は二十二世紀からやってきた猫型ロボットのように便利だ。
「どうだった?」
「これは溶岩ですね。つまりここは『
「溶岩洞って?」
俺よりも先に琴吹が聞いてくれた。
「簡単なことです。火山噴火の溶岩流で形成された洞窟ということです。富士山の付近にも有名な『富岳風穴』、『鳴沢氷穴』、『西湖コウモリ穴』といくつも溶岩洞があるんです」
詳しすぎるだろうッ!
静岡出身でもないだろうに、よく知ってるな。そんなの授業でも習わない気がする。
「さすが、絆」
「いえいえ、それほどでも。楓、この先は冷えますので防寒アルミシートを皆に配布してください」
「分かった」
確かに、少し冷えてきたな。
ただでさえ地下洞窟で冷気に当てられているが、この辺りになって寒くなってきた。調べてみると、0度だった。そりゃ、寒いわ。
多少着込んでいるとはいえ、風邪を引いちゃうな。
防寒アルミシートを貰い、肩にかけていく。なかなか暖かいな。
溶岩洞の中を突き進むと、浅い湖があった。
青く透き通るような水面が広がっていた。……なんて幻想的なんだ。
「みんな、足元に気を付けて」
「ねえ、早坂くん」
「どうした、草埜さん。耳打ちでコソコソと」
「ちょっと聞きたいんだけどさ」
「うん?」
「絆とは愛人なんでしょ?」
「――ッ! そ、それは……まあ、そういうことになってるな」
「なら、私は早坂くんのメイドさんになってあげる」
「メイド……メイドぉ!?」
「これでもコスプレイヤーなんだ、私」
琴吹ってそうだったのか。ボーイッシュの見かけによらず、そういう趣味があったとは。でも、コスしたら美人メイドだろうなあ。
「いいの?」
「もちろんだよ。いつでもご奉仕するね」
「ありがとう、琴吹さん」
「私のことは楓って呼んでね、ご主人様」
とても良い笑顔を貰った。なんだろう、幸せだ。
上機嫌で先へ進むと、なんだか奥の輝きが増したような。
「……こ、これは」
「どうした、北上さん!」
足元から何か拾った北上は、それを見つめた。なんかの硬貨? って、これは……まさか!!
「金貨ですよ、これ」
「な、なんだって!?」
俺もだが、みんな驚いた。
水面を照らすと、そこにはキラキラ光る金貨が無数に散らばっていた。……これ、全部が金貨なのか。
俺も拾ってみると、それは間違いなく金貨だった。
「ちょ、たくさん落ちてるじゃん!!」
天音も拾って、続くようにみんなも収集していく。こんな場所だけで、これほどの金貨があるのかよ。これで、いったい幾らになるんだ?
だが、これだけじゃないはずだ。
「みんな、待て。奥に何かありそうだぞ」
俺は懐中電灯を向けた。
すると、突き当りには金銀財宝が山積みされていた。
……あった。
本当に財宝がありやがったぞ!!
「こ、これがキャプテン・キッドの財宝……実在したんだ」
「ああ、天音。これで俺たち、大金持ちだぞ!!」
「やったあああああ!!」「やりましたね、啓くん!」「これで一生働かなくていいね!」「良かった。良かった……!」「うぉぉぉ、テンション上がるぅ!」
みんなと喜びを分かち合う。
こんな膨大な数があれば、一生遊んで暮らせるぞ!! これなら、みんなと幸せになれる。
未来を思い浮かべていると――。
『ドオオオオオオオオォォォ……ン!!!!』
急に銃声が響いて、北上が倒れた。
「…………ぁッ!!」
「北上さん、嘘だろ!!!」
「…………ぐ。右肩を撃たれただけです。こんなこともあろうかと、モルヒネを持ってきて良かった」
器用に注射器を取り出して、傷口より離れた場所に打ち込む北上。まるで戦争慣れしているみたいだ。衛生兵要らずとはな。
いや、そんなことよりも。
闇の方を睨むと、そこには見覚えのある顔がいた。
「フハハ。ようやく追いついたぞ、ハヤサカ」
「てめぇ……マーカス!!」
たった一人でマーカスは現れた。どこに潜んでいるかと思ったら、やっぱり尾行していたのか。
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