三百億円を超える財宝!

 いったい、どこから俺たちをつけていたんだ……。まったく気づかなかった。


 そもそも、出入口は爆破して塞がっていたはずだ。別ルートがあるというのか。


 いやまてよ……。



「天音、北上さんの服を調べてくれ」

「え? 服を?」


「いいから早く」

「わ、分かった」



 天音に指示を出し、しばらくすると小さなチップが見つかった。……そういうことか。北上の服に『GPS』を仕込んでいやがった。

 それでこっちの位置はモロバレだったのか。


「やっと気づいたか」

「マーカス、お前の目的は財宝か」

「当然だ。これだけの数なら、あのアメリカのトレジャーハンター『メル・フィッシャー』の三百億を超える値段がつくだろう」


 さ、三百億だって……!?

 そんな価値があるのか、この財宝……凄すぎるな。


 一億だって十分凄いのに、三百億。ひとりなら使いきれない額だ。


 このマーカスは、独り占めしようって魂胆か。



「最初から騙していたのか」

「そうさ。お前しか知りえない場所だとキズナから聞いたからな」


「なるほど、それで裏切ったと」


「ああ……飛行機が正確に着陸できるようにして緻密に計算したんだ……。普通なら死んでいる。ありがたく思え」


「そりゃどうも。で、俺たちをどうする気だ? 殺す気か?」



 マーカスはUZIIウージーを向けつつ、俺たちに両手を頭の後ろに回すよう、強い口調で命令してきた。


 俺たちは素直に従うしかなかった。



「それでいい。無駄な抵抗は寿命を縮めるだけだぞ。……まあ、チャンスをやろう。素直に従い、財宝を運び出す手伝いをしろ。それで生かしてやる。もちろん、武装は解除だ」

「分かったよ」



 もちろん、従うはずなんてない。

 天音がこっそり『ネイルガン』を隠し持っていた。手を頭に回すとき、掴んでくれたようだ。これだ。これを使うしかない。


 まるで映画タイ・ハードのラストシーンじゃないか。



「よし、出入口は別に作ってある。そこから財宝を運搬するぞ」



 なるほど、掘削済みか。

 となると、あの“左ルート”か。


 なら、もうやるべき事は決まっている。


 俺はあのタイ・ハードさながら不敵に笑った。



「……フフ、フハハハハ。フハハハハハハハハハハ……!」

「なにがおかしい、ハヤサカ。死にたいのか」



 ――映画のようにはいかないか。これが現実だよね。ということで、別のプランだ。



「悪い悪い。ちょっと思い出し笑いしただけさ」

「まあいい。今から袋を渡す、それに財宝を詰め込め」



 マーカスが腰に手を伸ばした瞬間、俺はその隙を逃さなかった。



 いまだッ!!



 天音の持つネイルガンを手に取り、俺はマーカスの方へ突進していく。



「うおおおおおおおおおお!!」


「……! 死にたいのか、この愚か者が!!」



 UZIIウージーは軽量で連射力もある。

 だけど、俺の方だって、なにもこの一ヶ月ただ無駄に過ごしていたわけじゃない。北上から学べることを学び、生き抜く術を身に着けた。


 そうだ、俺はトレーニングをして肉体を鍛え上げたんだ。


 グリーンベレー式の超キツイメニューでな!



 向こうはUZIIウージーを連射してくるが、俺は水面を蹴り上げてマーカスに浴びせた。



「早坂くん、それだけじゃ足りない!!」



 草埜から『閃光弾』が飛んできた。助かったぜ。


 まばゆい光がフラッシュする。


 怯んだマーカスに対し、俺はネイルガンを打ち込んだ。



『ドン! ドン! ドン!!』



 釘が発射され、それがマーカスの腕や体にぶっ刺さる。



「ぐああああああああああああッッ!!!」



 隙を見て動いていた楓が更にネイルガンを撃ち続けた。……ナイス!



「これでも食らえッ」

「や、やめろおおおおお、うああああああああ……」



 グサグサと釘が肉を切り裂いていく。

 マーカスの体が釘塗れになった。


 俺はその隙にUZIIウージーを奪った。いや、武器はこれだけではないはずだ。ハンドガンやナイフもあるはず。


 武器を全て剥ぎ取ってやった。



 ハンドガンのUSPが一丁、コンバットナイフが一本、手榴弾が二つ。それに、C4爆弾もあるじゃないか。



「やるね、早坂くん」

「楓こそ、さすがサバゲー女子だな」

「一応、私も鍛えていたからね~」



 みんなで特訓した甲斐かいがあったな。

 あのスパルタ修行は死ぬかと思ったけど、思えばやっておいて良かった。こうして軍人相手にも通用するようになったのだから。



「北上さん、マーカスは倒した。死んではいないけど、勝手に自滅するだろう」

「いえ、ここはあたしが責任をもってトドメを刺します」



 左手でネイルガンを握る北上は、マーカスの頭を狙った。だが、ヤツは瀕死の状態で笑っていた。



「……フフ。これで勝ったと思うなよ……ハヤサカ……」

「なんだと?」


「もうじきだ……もうじき、プロの民間軍事会社・ホワイトウォーターがお前達を襲う」


 ホワイトウォーターだって!?

 アメリカの民間軍事会社だぞ。アフガンとかで活躍してるって耳にしたことがある。ガチのマジのプロ集団だ。



「なぜ、ホワイトウォーターが!」

「くはは……単純なことよ。ジョン・スミスもこの俺も……ホワイトウォーターの……人間だっということだ」



 そうか、橘川は民間軍事会社・ホワイトウォーターから軍人を雇ったんだ。そいつらが今度は大人数で押し寄せているってことか。


 つまり、昨晩の五人の方か。



「もういい、死んでください」



 北上がネイルガンを撃とうとするが――だが、その前にマーカスは胸を撃たれていた。



『――――――ドォン!!!』



 だ、誰だ……誰が撃った!?



 それとも、もうホワイトウォーターが……!

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