好きにして……いいよ

 少し仮眠を取って――目覚めた。


 どうやら、まだみんな眠っているようだ。時間を確認すると時刻は午前五時。あれから二時間か。


 洞窟は相変わらず暗闇。

 水滴の滴る音が微かに響く。


 異常はないようだが……念のため、周囲を調べておくか。


 俺は立ち上がってヘッドライトを点灯。みんなを起こさないように慎重に歩き回った。


 ん……この先は分かれ道か。



 左右に這って通れるサイズの分岐点があった。どっちか罠じゃないだろうな。



「ちょっと覗いてみるか……ていうか、どっちなんだ」



 あの地図には変な文字が薄く書かれていたな。あれがもし、洞窟内部を示しているのなら……ああ、この左はドクロマークのようなものが書かれていたはず。だとすれば、それは罠だ。


 なんとなく正解っぽい『右』にしてみた。


 匍匐ほふく前進ぜんしんで恐る恐る先へ進む俺。

 奥は不気味なほど真っ暗で見えないが、どこかには通じているようだった。


 やがて。


 広々とした鍾乳洞が現れた。


 この先は闇かと思ったけど、宝石のようにキラキラした世界が広がっていた。……なんだこれ、こっちは異様に明るいな。


 これはもしや、光る苔・ヒカリゴケかな。


 エメラルドグリーンに光っていて……神秘的だ。


 目を奪われていると、背後に気配を感じた。



「ちょっと、早坂くん。こんなところにいたんだ」

「……天音! 起きていたのか」


「だって、どこか行っちゃう姿が見えたから」

「なんだ起きていたのか。普通声を掛けてくれよ」

「ごめんごめん。……でさ」


 頬を赤らめる天音は、もじもじとしながら……ややうつむく。


「ど、どうした」

「……今、二人きりじゃん。す……する?」


「は!?」


「今しかないでしょ。みんな寝ている今しか」


 そ、それって……そういうことなのか。

 天音が誘ってくれてるんだよな。まさか女子から……天音みたいな最強アイドルから誘われるとか。


「い、いいのか。こんな洞窟の奥で」

「こ……これ以上、女の子に言わせないでよ」


 震える天音を見て、俺は決心がついた。

 ゆっくりと手を伸ばして抱きしめた。天音は小さくて、良い匂いがした。髪の艶とかきめ細かさが芸術的だ。



「ひとつだけ教えてくれ、天音」

「うん」

「どうして俺なんかを好きになってくれたんだ。他にもいっぱい良い男はいるだろうに」

「ううん、いないよ。こんなにカッコ良くて、一緒にいてドキドキして、楽しいと思える男の子は中々いないもん。だからね、早坂くんは特別なんだよ」



 そこまで思ってくれていたとは……。

 俺は天音を抱きしめながら唇を奪った。

 天音は少し驚いていたけど、そこに抵抗はなかった。俺を受け入れてくれて、涙を零していた。


 次第に激しくなるキス。

 こんなに濃密で濃厚なキスははじめてだ。


 興奮して我慢できなくなった俺は、天音に触れていく。



「……天音」

「好きにして……いいよ」



 そんな甘く蕩けるような言葉に、俺は理性を失った。


 ゆっくりと天音の服を脱がして下着姿へ。



「綺麗だよ、天音」

「う、うぅ……恥ずかしいよぅ」



 腕で隠そうとするが、俺は腕を掴んだ。

 天音の最後の砦に手を掛けて、それをゆっくりと丁寧にはぎ取った――。



 それからは夢中だった。



 お互いに激しく求め合い、時には優しく触れ合った。



 俺は、天音のはじめてを貰った。

 逆に俺のはじめてを天音が奪ってくれた。


 幸せ過ぎて時間を忘れて、天音を愛し続けた。何度も何度も。



 * * *



「……は、早坂くん……。いきなり、ハッスルしすぎじゃないかな。あんな激しいと思わなかった」



 むぅっと膨れっ面で俺を睨む天音。可愛く怒ってる。



「悪い悪い。でも、天音こそ大胆すぎだろ」

「だ、だって……気持ち良かったんだもん」


 煙が出るほど顔を赤くする天音。可愛すぎて俺はもう一度、襲いたくなった。


 大人のマッサージって、こんなに楽しいんだな。知らなかった。


 俺は今日、キャプテン・キッドの財宝が眠ると思われる洞窟で大人の階段をのぼった。なんて場所でしてしまったんだ。


 もしかしたら、財宝よりも価値のあるものを手に入れてしまったかもしれない。


 いや、十分に価値がある。

 財宝よりも天音の方が最強だ。


 もし財宝がなかったとしても、俺は天音がいれば十分だ。



 天音と裸で抱き合っていると、奥から物音がした。



「――って、やべ。楽しみすぎたか」

「ちょ、誰か来る!」



 二人で慌てていると、奥から人が現れた。


 やっべ……!

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