俺だけが知る財宝の在り処...女子たちが狙ってくる!
山折りと谷折りを繰り返すと――それは。
「……そういうことか」
「どういうこと?」
天音が不思議そうに見つめてくるが、俺もまだ確信があるわけではない。百パーセントとは言い切れないが、ほぼ完全に財宝の在り処を示していた。
だけど、天音が知りたそうにしていた。
どうしようかな。
せめて天音だけには教えておくべきか。
一応、口は堅そうだし。
「えっと、宝の地図をこうして波状に折る。すると、宝の在り処が……あ」
気づけば、女子全員が俺に注目していた。やっべ、危うく答えを言ってしまうところだった。
説明を止めていると、桃瀬が悪魔っぽく微笑んだ。
「早坂くん、もしかしてお宝の在り処を発見したんだ?」
「い、いや……そういうわけでは」
「みんな、早坂くんが財宝の場所を見つけたって!」
「ちょ、桃瀬さん!?」
その瞬間、俺は取り囲まれてしまった。
みんな目がお金になってるー!?
おいおい、マジかよ。
今度は千年世がこう言った。
「つまり、早坂くんをモノにできれば……大金持ちになれるってことですよね」
騒然となるみんな。
な、なんだか嫌な予感が!
いや、独り占めするつもりはないのだが、混乱を招くと思い俺は自分の脳内だけに留めておこうと思ったんだ。
「ていうか、その地図を私たちにも見せてよ」
強引に奪ってくる野茂だったが、手を滑らせて……『焚火』に落としてしまった。一瞬で燃えてしまう宝の地図。
「あああああああああああああああああああああああ……!!! 宝の地図があああああああああああああ!!!」
全員で叫んだ。
嘘だろ!!
あの地図だけでも億の価値があるのに……一瞬で炭になっちまった。……これで財宝の在り処は、俺の“脳内”だけに記憶されていることになった。
瞬間、女子たちは距離を取って俺を囲った。
「へ!? お、おい。みんなどうした!?」
北上がこう説明してくれた。
「たった今、啓くんを除く全員が敵になりました」
「なぜ!?」
「だってそうでしょう。お宝の情報は啓くんだけが知っている。あなたは何十億、何百億もの財産を手に出来る男。つまり、この中の誰かが啓くんをモノにできたら、幸せになれるということです」
は!?
は!?
はあああああああああああ!?
ちょ、待て……いつのまにそんなデスゲームが始まった!!!
俺は許可していないぞぉ!?
「お金だけではない。わたしは早坂くんが欲しいの!」
「あ、天音……。戦う必要なんてないだろ。財宝は分け合えばいい!」
けれど、天音は首を横に振った。
「……そのラインは超えてしまったの。幸せになれるのは、たった一人だけ。早坂くんを手に入れた女の子だけが全てを手に入れられる」
だから、ここからは『戦争』だと、天音は言った。
「どうしてそうなる! 俺は仲間内で戦って欲しくはないぞ」
だめだ。みんな聞く耳持たずだ。
今にも衝突しそうなほど睨み合っている。
ここは俺がなんとかしないと、本当に血みどろの戦がはじまってしまう。
まさか殺し合いなんて始まらないだろうな……!
やべえと焦っていると、森の方からガサガサ音がした。
突然の事態に全員が凍り付いた。
良かった、これで戦争は回避された――が。
茂みの中から出てきた人物に全員が驚いた。
「八重樫さん!! ほっきー! リコ! 大伊さんまで!!」
まさか、全員が返ってくるなんて!
しかし……なんだか様子がおかしかった。
四人とも俺を一瞬見て、
いきなり対立した。
って、お前達もかよ!!
これで完全に全員揃ったというのに……気持ちがバラバラだ。いや、ある意味、目標が一致しているけど。
俺だ。
俺を巡って不毛な戦いが始まろうとしていた。
「みんなストップ! こんなことしても体力を無駄に消耗するだけだ。戦いはよそう」
すると全員の殺意とか殺気が消えた。
殺す気マンマンすぎだろ。
女子はこういう時、おっかないな。
とりあえず、全員俺の言葉を聞き入れてくれた。
「仕方ないですね、啓くんの命令は絶対です。少なくとも、あたしは従います」
北上は戦意を失い、その場に座った。続くように、みんなも座っていく。
「よかった。今は、八重樫さんたちとの再会を喜ぼう」
『し~~~ん……』
誰も喜ばねえ!!!
なんだこの空気……。謎の緊張感。どうしてこうピリピリしているんだ。
そんな中、リコが笑った。
「みんな、お金に目が眩み過ぎじゃない? リコは、早坂くんが純粋に好きなんだけどね~。ただお金だけとか、そんなの本当の愛じゃない」
きゃはっと笑うリコ。
余裕あるな~。
そう言ってくれるのも嬉しいし……そうだな、俺を思ってくれる人になら、信用できる。
でも、現状では財宝の在り処は教えられない。
こうなってしまったら……火種にしかならない。なら、俺の脳内に留めておく方がいいのかも。
戦こそ回避できたが、今度は女子たちが俺に寄ってきた。
「ちょ、みんな寄り過ぎ!!」
総勢十三名が俺の腕や首、膝などにすり寄ってきた。……って、あれ、あれ……あれえええええええ!?
これでは倉島が目指していたハーレム帝国では……!?
この中には財宝目当ての女子もいるだろう。でも、天音や北上、リコのように純粋に俺を好きになってくれた女子もいる。
俺はどちらかと言えば、思ってくれる女の子が好きだ。
だから俺は決めた。
戦争になって死人が出るくらいなら、信頼できる者と分け合うと。
疑似ハーレムで済むのなら……とりあえず、現状維持だ。
こうなるとは思わなかったけど、今はこれでいい。
今夜以降、女子たちは自分の“あらゆる武器”を使って、俺を誘惑しまくってくるようになった。
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