ハーレムサバイバル 死闘編④(生存者)
真っ暗だ。
なにも見えないし、どこに何があるのか分からない。
スマホを取り出して電源を入れた。
ピカッと光る画面のおかげで周囲が少し照らされた。
それでも真っ暗だ。
いったい、ここはどこなんだ?
「おい、北上さん! どこにいる!」
「……シッ。こっちです」
「ん? そっちか……」
どうやら岩陰に隠れているらしい。無事でよかったけど、なにか警戒しているようだな。
「啓くん、そのまま静かに」
「その前にここはどこだ?」
「地下洞窟でしょうね。さっきいた丘は、丘というか泥が蓄積していた場所だったようですね。我々が踏み入ったことで地盤沈下を起こしたのでしょう」
「そうなのか?」
「恐らくですが。それより、大変ですよ」
「大変?」
「向こうに人の気配が三つ。篠山さんもいるかもです」
「そうだ。篠山さんどこに……。って、なんだ、ありゃ」
岩陰から顔を出すと、向こうには広場があった。そこでは焚火をしている男二人の姿があった。
「チッ、また崩落かよ。ここも危ねぇな。なあ、アキラ」
「ああ……倉島のヤツ、ハーレム帝国を作るとか何とか言っていたが……。俺たちは橘川の話に乗った。だから、こうして地下を永遠にぐるぐる探検しているわけだが、いい加減に飽きたな」
「つかよ。この無人島って洞窟広すぎねぇ~? 本当に財宝なんてあんのかよ」
……な、なんだあの男達。
学生服だから、うちの生徒で間違いなさそうだが……男の生存者がいたのかよ。しかも、こんな薄気味悪い洞窟に。
「なあ、北上さん」
「ええ、彼等は生存者でしょう。ですが、話からして倉島か橘川の関係者でもありそうです」
「ということは、俺たちの敵か」
「そういうことになりますね。もし、鉢合わせれば戦いになるかも」
それもそうだが、篠山が心配だ。
どこにいった……?
周囲を見渡しても暗すぎて分からない。
唯一、あの男達の焚火が周辺を照らす。見渡す限り、なかなか広いようだけど……川というか海の流れもあるようだ。
どうしたものかと悩んでいると、男達が行動に出ていた。
ん……なんだ?
「おいおい、マジかよ。こんな洞窟に人がいるとかさ」
「ラッキーだな、田中。まさかの女子だぜ。泥まみれだけど」
「ああ、あれは同じ学年の女だ。倉島が言っていたのは、これか」
「地上は女だらけって本当だったかよ」
「こんな空気の悪い洞窟にいるより、地上にいる方がいいわけか。女とヤりたい放題ってわけ!? アキラ、もう地上に出ようぜ」
「興奮すんな、田中。それより、この女だ。地味だが、悪くない。……食事にピッタリだ」
ギロッと篠山を睨む二人組。
野郎、俺の仲間に手を出したら容赦しないぞ。
「……や、止めて!」
「止めて~だってさ、アキラ」
「可愛い。こりゃ、楽しみ甲斐がありそうだなァ」
田中とアキラという二人組が篠山に近づいていく。奴等、無防備の篠山を襲う気か!
「北上さん、俺は助けに出る」
「気を付けてください、啓くん。あの二人も武装しているかも」
「……まさか。銃を持っていると?」
「倉島、橘川の名が出た時点で怪しいでしょうね」
おいおい、だとしたら……どんだけ銃が出回っているんだよ。少なくとも、倉島のせいだろうがな。アイツのバックがヤバすぎるんだ。
「デザートイーグルでは重いでしょう。あたしの……というか元々は久保のものですが、“FZ
さすがサバゲー女子。詳しいな。
小型ドットサイトとLEDライトまで付いているし、なにげに装備が充実した銃だな。
「それは使いやすそうだな」
「はい。しかも弾はPP90と同じ5.7x28mm弾。ボディアーマーを貫通するほどの威力を持つんです」
「マジかよ! それは凄いな」
「ええ。あまりに危険なので流通はしていないはずなのですが、闇市から流れてきたのでしょう」
倉島の組織の仕業だろうな……。
とにかく、俺はファイブセブンを北上から借りた。
「でも俺でいいのか、北上さんがやった方がいいんじゃ」
「あたしは別方向から補助します」
頷く俺は、再び現場を注視する。
すると田中とアキラが篠山に飛びつこうとしていた。だが、俺は叫んで飛び出した。
「やめろ!!!」
止めると、田中とアキラが驚いてこちらに振り向いた。
「な、なんだお前!?」
「もう一人いたのかよ。しかも男かよ」
「一度しか言わないぞ。篠山さんから離れろ。さもなければ撃つ」
「撃つだぁ? ――って、アキラ! あの野郎、銃を持ってやがるぞ!!」
「馬鹿。あんなの偽物。エアガンに決まってるだろ」
ということは、コイツ等は武器は持っていないのか?
「これは本物の銃だ」
「嘘つけ。てか、雑魚はすっこんでろ!!」
田中がこちらに向かってきた。
仕方ない、弾もったいないが……警告射撃だ。
俺は田中の頬をギリギリを狙った。
『――――ドォン!!!』
凄まじい音と共に弾丸が発射され、ヤツの頬を掠めた。
「――へ? うああああああああああ!!!」
田中の頬から少し血が出ていた。
本物と知り、田中はビビって逃げていく。アキラというヤツも「マジかよ!!」と叫んで逃げ出した。
「あれ……たいしたことなかったな」
「早坂くん! 助けに来てくれたんだ」
「ああ。当たり前だろ」
「ありがとう! 本当にありがとう……」
ほっとした様子で泣き出す篠山。
無事でなによりだ。
「北上さん、こっちは状況終了だ」
「お疲れ様です、啓くん。ですが、警戒は怠らずに」
「了解。とりあえず……どうやって帰ろうか」
落ちて来た穴は、結構深くて戻れそうになかった。無理矢理登ろうとすれば、泥で滑って転倒するだろうし……危険だ。
「あの男達とは反対方向の奥へ進みましょう」
「そうだな。追い掛けてくるようなら、容赦なく反撃する」
「ええ。こちらには銃がありますから」
そんなわけで洞窟探検を開始。
ヤツ等とは別の方向へ向かっていく。
「…………」
無言のまま三十分は歩いただろうか。
地下洞窟は果てしなく続いており、相当な距離があるようだな。馬鹿みたいに広いし、本当にどなっているんだ。
疲れも出始めていると、なにやら気配を感じた。
「む……誰かいるぞ。また危険人物じゃないだろうな」
「啓くん。あそこに女の子が二人いますね。疲れて座っているようですが」
「え? って、千年世と桃瀬じゃないか!?」
あんなところにいたのか……!
やっぱり流されていたんだな。無事で良かった。
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