ハーレムサバイバル 死闘編②(チーム編成)

 みんな鋭い目つきを向け、俺の方へ寄って来る。

 今にも襲われる気配しかなかった。


 普通、男としては嬉しいところなのだが――なんだか底知れぬ恐怖を感じた。



「ま、待て! 待つんだ、みんな!!」



 俺が“待った”をかけるが、女子たちは一斉に俺に飛びついてきた。後はもう揉みくちゃ。柔らかいものに囲まれ、俺は鼻血が噴き出そうになるほど顔が真っ赤になった。



 わ、わ、わああああああ~~~ッ!?



 こんな、おしくらまんじゅうみたいにギュウギュウされては――!!


 取り囲まれた圧迫感に目をグルグル回す俺。


 だめだ、息が苦しすぎて気絶しそうだ……うぅ。



「ちょっと、みんな! 早坂くんが苦しそうだよ。離れて!」



 そんな中、天音の止める声。

 おかげで全員がピタリと動きを止めてくれた。……ナイス、天音!



「…………きゅぅ」

「……あ、ごめん」



 野茂、篠山、大塚が離れてくれた。

 そして、北上も。

 そしてそして、さりげなく張り付いてきた琴吹も。君もかい……。



「はぁ、助かったよ。天音」


「いいのいいの。それよりさ、前から聞きたかったんだけど野茂さん、篠山さん、大塚さんって……早坂くんをなんで狙うの?」



 俺の疑問を代わりに天音が聞いてくれた。そうなんだよな、ちょっと不思議に思ってはいた。こんな陰キャレベル99の俺に構ってくれるとか、普通ありえない。


 まずは、野茂さんが答えてくれた。


「そりゃ、男の子が早坂くんしかいないからだよ。彼氏欲しいじゃん」


 そんな単純な理由だった。

 三つ編み女子の野茂さんは、第一印象と違ってかなり積極的だ。それに、スタイルも良い方だ。胸は控えめだが……あのムッチリとしたふとももは非常に魅力的。



 次に篠山が率直に言った。



「私は子供が欲しいから」



 その一言に場が凍った。

 そういえば、たまに変なことを言う女子がいると思ったが、篠山だったのか。彼女は少し地味で母性的というか、甘えさせてくれそうなタイプではある。童顔なのになぁ。


 ……さて、最後は大塚だ。


 咳払いする天音は、大塚に聞いた。


「教えて、大塚さん」

「わたくしは……その、えっと……恋しちゃったからです。いいでしょ、別に恋くらい!」



 顔を真っ赤にする大塚。

 そ、そうだったのか……意外すぎてビックリした。おっとり系の彼女が俺を……? うそでしょ。俺と大塚では釣り合わない気が……いや、それを言ったら天音とかもそうだけど。



「そ、そうなんだ。でもね、わたしだって一緒よ」

「天音……」

「早坂くんが好きなの!」


 キッパリと言う天音。

 まさか皆のいる前で言うとはな。

 この際だからハッキリさせたかったのだろうか。


 だが、この状況に黙っていられない人物がいた。


 そうだ、北上だ。



「異議あり! 天音さん、みなさん。哲くん、あたしのモノです。もう付き合っていますし、特別な夜だって過ごしました」



「「「「「えええええ!?」」」」」



 琴吹ですら混じって驚いていた。


 って、おぉぉぉおい!!


 特別な夜って……!

 そりゃ、ドラム缶風呂には一緒に入ったけど、あれを言っているんだよな!?



「早坂くん、どういうことなの!!」

「あ、天音……落ち着け。顔が近い!」

「落ち着いてなんていられないよ。北上さんと……その、しちゃったの!?」


「はぁ!? 天音、顔を真っ赤にして何を言っているんだ」


「……ぅ。そ、そ、それは……えっと、言わせないでよ馬鹿!!」



 え~…なぜか怒られた。

 言おうとしていることは分かるけど……誤解だ! 俺は北上とはお風呂しか入っていない! 断じて!



「みんな、俺と北上さんは付き合って――うわッ!!!」



 その刹那、俺の胸部にナイフが迫っていた!

 俺は緊急回避して事なきを得た。あっぶねぇ……死ぬかと思ったぞ。



「……啓くん、それ以上言ったら……ぶち転がします!」

「ヒッ……。分かった分かった。言わないから、ナイフを閉まってくれ」

「分かればよろしい」



 このままでは命がいくつあっても足りないぞ。俺はいつか北上に殺される気がしてならない。気のせいなら良いけど……。



「みんな、今は八重樫さんや大伊さんを探す方が先決だ。そうだろう?」



 ひとりひとりに目線を合わせていくと、みんな落ち着いて納得してくれた。

 そうか、最初が俺がまとめていけば良かったんだ。


 もう少し、リーダーシップ的なものを発揮してもいいのかもしれない。……とはいえ、俺はリーダーってタイプじゃないんだけどねえ。



 * * *



 ようやく浜から歩きだし、八重樫たちの捜索が始まった。



「みんなで回るより、三人・四人で別れた方がいいだろ」



 現在、俺、天音、北上、琴吹、篠山、野茂、大塚というメンバーだ。毎度お馴染み、グーパーでチームに別れよう。


 パパっと決めたところ――。



 Aチーム:早坂、北上、篠山

 Bチーム:天音、琴吹、野茂、大塚



 こんな感じになった。



「うそ~…早坂くん」

「そんな子犬みたいに見つめてくれるな、天音。仕方ないだろ」

「……他の女の子に変なことしないでよ。特に北上さんは要注意」


 ボソッと耳打ちしてくる天音。


「心配性だなぁ。俺なら大丈夫だ」

「心配すぎるんだけど……」


 俺たちはゴツゴツとした大岩地帯へ。

 天音たちは海沿いをずっと探してくれるようだ。



「北上さん、篠山さん、よろしく」



「はい、よろしくお願いしますね、啓くん」

「私もがんばりますからね!」



 二人とも俺の腕に絡みついてきた。

 な、なんでそんな風に!


 まさに両手に花状態だけど、これは……近い。近すぎる。二人の胸が俺の腕に接触している――気がする。


 緊張あまり、感触を味わっている余裕はなかった。



「き、北上さんも篠山さんも近いデスヨ!?」



「お気になさらず。啓くんをずっと癒して差し上げますから」



 ぎゅっと絡みつかれて俺は頭が爆発しそうだった。



「き、北上さぁぁん!?」

「良い反応ですね、啓くん。ふふ……」



 ふふ、じゃなくて!!



 更に、篠山も大胆に俺の腕をその谷間に!!



 あ……、


 あ……、



 ああああああああああああああああああああああああ……!!!



「早坂くんって、冷静を装っているみたいだけど、さすがに顔が真っ赤だね」


「…………」(←二人から胸を押し付けられてブルブルに震えている俺)



 無人島って、すげぇや……。

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