【完結】魔法才能マンの自由気ままな辺境スローライフ~王族を追放されましたが、前世の知識で未開の森を自分好みに開拓していきます。あれ、なんだか伝説の存在も次々に近づいて来るぞ?〜
第35話 精霊さんは絶世の美女(あとちょっとわがまま)
第35話 精霊さんは絶世の美女(あとちょっとわがまま)
「大変、大変失礼いたしました!」
スフィルが精霊さんに服を貸すなり、すぐに土下座。
やってしまったことには、あれこれ言わずすぐに謝罪。
元社会人たるもの、これは心得ていることである。
『……まさか、こんな人だとは思いませんでした』
「言い訳はございません……」
俺は頭を下げたままの姿勢を崩さない。
精霊さん側からすれば、急に具現化させられたかと思えば、裸の姿だったのだ。
恥ずかしいどころではないだろう。
ただ、そんな気まずい雰囲気の中で声をかけてくれるのがスフィルだ。
「あのっ! 精霊様、ですよね?」
『……ええ。
「それは! いつもお世話になってます! 今回の件はこの人も悪気は無かったようですので、その……」
『しょうがないわね』
そう言うと、精霊さんは両手でスフィルの肌をそっと
『あなたに免じて、今回だけは許してあげるわ』
「!」
俺はスフィルとバッと顔を見合わせ、
「「ありがとうございます!」」
一斉に頭を下げた。
そうなれば、ようやく本命のことを尋ねられる。
俺から言うとまた機嫌を損ねるかもしれないので、スフィルに目で合図を送る。
「あの、精霊さんっ!」
『何かしら』
「実は、精霊さんをこうしてお呼びしたのは、ある許可を欲しくてなのです!」
『言ってみなさい』
「わたしたちに、この住処を中心として大規模に開拓する許可をください!」
『開拓ねえ……』
グッジョブ、スフィル。
お願いする役を任せてしまったので、後で何か埋め合わせをしようと思う。
『良いでしょう。ただし条件があるわ』
「なんでも聞きます」
これに答えるのは俺だ。
そうして、目をキッとさせた精霊さんは言い放った。
『今日一日、この
えええ……、そういう感じで良いの。
こうして突如始まった、精霊さんを楽しませる一日。
★
「スフィル! スープ出来たら持ってきて!」
「はいよ! リーシャ!」
キッチンとテーブルを、うちの二人のシェフが
それもそのはず、
『んん~。美味しいわね~!』
精霊さんが、ものすっごい勢いで料理を
それはもう、野菜から肉、高級マグロだったあの湖の主など、今日までの森での生活全てを表したような、料理オールスターだ。
昨日リーシャとスフィルが料理に関して和解しておいて、本当に良かったな。
『
リーシャに今回の事情を話すと、持ち前の優秀さから、まずは胃袋を掴むことからということに行き着いたらしい。
そうして今に至る。
まあ、リーシャもまさか精霊さんがここまで食べるとは思わなかったろうが。
しかし、出るとこは出ているものの、その細い体のどこに入っていくのだろう。
外から見る限り、大きさはリーシャ<精霊さん<スフィル……って、何を考察してるんだ俺。
俺が使った魔法道具では、正確に体を表現出来るはずなので、普段見えていない精霊さんはおそらくこのまんまの姿なのだろう。
というか、俺たちのことしっかり見てたのかよ。
「精霊さん。け、結構食べられますね~……」
『まだまだいけますよ!』
「まだ、まだ……?」
この言葉に、あの料理大好きな二人が
おいおいまじかよ、って顔だ。
幸いなことは、ドラノアがいないことだけか。
ドラノアがここに加われば、「あたしも!」などど言って、絶対に
そうして、ようやく俺たちを落ち着かせる言葉が聞ける。
『はあ~。さすがの
よかった。
聞こえたわけではないが、俺・リーシャ・スフィルの心の声は同じ言葉を発したことだろう。
『では、次は温泉に入りたいです!』
「「「……」」」
そしておそらく、こちらも全員同じ事を考えた。
結構自由だなあ、この人。
『はあ~。とても気持ちよかったです~』
「それは良かったです」
温泉から精霊さん、それにリーシャとスフィルが戻ってきた。
格好もとても素晴らしいもので、最近女性陣の器用さも借りてようやく導入できた「浴衣」だ。
なお、リーシャ・スフィルも付き合わされて浴衣姿だ。
まだ日中なので、三人の格好には違和感がありまくりだが、精霊さんが着たいと言ったので黙っておこう。
……大変、眼福でもあるしな。
『ここは本当に素晴らしいですね』
「気に入ってもらえたなら嬉しいです」
すっかり気分が良いのか、俺にも普通に話しかけてくれる。
と、そんな軽い話の中で
『そういえば、開拓の件でしたね』
「!」
告げられたのは、突如の本目的の話。
『良いですよ』
「本当ですか!?」
『はい』
にっこり笑った精霊さんの笑顔を横目に、ガッツポーズ。
これで、何の罪悪感もなく開拓を進められる!
「けど、本当にこんなことで?」
『用心深いのですね。そもそも、木をたくさん切り倒したからと言って、実はこの森への影響はほとんどありません』
「と、言いますと?」
『この膨大な森の魔力。切り倒した木の分は、また新たな場所ですぐに木を生やします。一つや二つ、新たな
「じゃ、じゃあ、楽しませてみせなさいと言ったのは……」
『羨ましかったのです。普段見ているあなた方が、
「なんだあ……」
どっと、肩の荷が下りた気分だ。
わがままな感じといい、そういうことだったのか。
と、軽く一息ついた後で、今度は精霊さんの方から尋ねられる。
『そ、それでなのですが……』
「はい、なんでしょう」
『もしよかったら、今後定期的に今日のように体を具現化させてもらえませんか」
「!」
さすがというべきか。
精霊さんは体の寿命に気付いているようである。
実は、俺のこの魔法道具は永久ではない。
今の道具の限界というべきか、おそらくもうすぐ体を留めることが出来なくなって、また精霊さんは姿を見えなくなってしまうのだ。
そんな、少し悲しげな答えには
「もちろんです。その内、ずっと体を保っていられるようなものも必ず開発してみせます」
『……! はい、ぜひよろしくお願いします!』
そんな挨拶を皮切りに、少しづつ精霊さんの体が光となっていく。
最後のお願いだったのだろう。
「「うるうる……」
リーシャやスフィルは涙ぐんだ顔を見せる。
なんだかんだ言って、意気投合したのかもしれないな。
でも大丈夫。
「あの人なら、いつでも見守っててくれそうだからさ。俺もまた、すぐに呼び寄せてあげようと思う」
「うん」
「はい」
そう言うと、二人も笑顔で精霊さんを見送っていた。
よし、これで気持ちよく開拓も出来る。
明日からもやることがたくさんあるぞー!
★
<三人称視点>
ルシオ達が精霊さんをもてなしている頃、森の奥深く。
少女の見た目をしたドラゴンが、一匹の小動物に向かい合う。
『探したわよ』
『……』
『聞かせてもらうわ。あなたが一体、何者なのか』
ドラノアは、小動物に対して意味深な事を問う。
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