第21話 女性の正体は……あの種族?
「あ、起きた」
温泉で倒れていた女性が目を覚ました。
「……」
と思ったら、何やら
まだ意識が
それとも……あれかな。
実は、意識があったとか?
そう考えると、段々不安になってくる。
そりゃ裸の状態で男に介抱されれば、心配もしたくなるというものだ。
「ごめんっ! 何も言わずにここへ連れて来てしまって! 本当に、体はなるべく見ていないから!」
俺は誠心誠意、謝った。
隣のリーシャさんの目もまだ大変怖いし。
「……」
「うぐっ」
リーシャは、俺の事をじっくりと見つめて
一応、女性が寝ている間に説明をして誤解は解いたはずだが、まだこの目なのだ。
もしかして、解けてないのか……?
と、リーシャと無言のやり取りをしていると、金髪の女性が口を開いた。
「あの……あなたが、わたしを助けてくれたのですか?」
「あ、うん、そうだよ」
「……では、わたしを看病してくれたのも、あなたですか?」
「そうですね」
助けるタイミングで女性に肩を貸した時、かなり体が火照っているのが分かった。
そこで俺は、風魔法で体を乾かしつつ、魔力で彼女の体温を調整していたのだ。
もちろん、やましいことはしておりません。
隣では腕を組むリーシャさんが、しっかりと俺の事を見張っていたからね。
手の甲をすこーしばかり触らせていただいて、調整していた。
そんな器用な魔法の使い方は、俺にしか出来ないし。
「それでは……」
「?」
女性は顔を赤くして、下に目を逸らして言い放った。
「どうか、もう一度わたしに魔力を!」
「……はい?」
「なるほど。たまたま見つけた温泉に、興味本位で入ったと」
「その通りです……」
それから少し。
女性はようやく冷静さを取り戻し、温泉に来た経緯を教えてくれた。
女性はちょうどこの辺に立ち寄っており、今言った通り、たまたま見つけて気付いたら浸かっていたのだと言う。
裸だったのは、単純に服が濡れるからだそう。
ちなみに現在進行形で、俺は彼女の手の甲に触れて魔力を送っている。
これ以上送っても意味がない事は分かっているのだが、
「あ、まだダメです! まだわたしには魔力が必要なのです!」
手を離そうとすると、これだ。
「……ちっ」
「……」
そして、リーシャは何故か機嫌が悪い。
『修羅場よのう』
「……何がだよ」
フクマロの呟きにもそう言い返すが、なんとなく意味は分かる。
おっと、そろそろ話の続きを聞こう。
「それで、あなたは一体何者なのですか?」
「何者? 何者……そうですね。一言で言うと『エルフ』です」
「エルフ!?」
「はい。それもエルフの中でも上位種の『ハイエルフ』です」
「ハイエルフ!? まじで!?」
「まじです」
にっこりと笑った顔がまた
でも内心、
まだ少し濡れた、彼女の綺麗な長い金髪は、女の子座りをしていると先の方が床についている。
立った時には、膝辺りまでありそうだ。
真っ白な肌の笑顔はさらに美人さんで、特徴的な長い耳が斜め上に伸びている。
おしゃれなのか、首にかけた輝くペンダントも相まって一層美しく見える。
さらに、俺が魔力を送り始めた時から、彼女の魔力の回復を表すように、薄く触れらない綺麗な羽が見え始めた。
そして、
「……」
リーシャが貸した服は、なんとも胸が
リーシャも人並み以上のものを持っているが……それ以上とは。
なにしろ、“あれ”だしなあ。
白色のにごり湯なんかはまだ導入していないので、それはもう──
「ルシオ、何かやましいこと考えてないでしょうね?」
「いいえ、決して」
あぶないあぶない、さっと紳士の目に戻した。
「それで……お名前と、この辺へは何をしにきたのか聞いても?」
「はい。わたしは『スフィル』といいます。ぜひそのまま、スフィルとお呼びください。ここへは、食材を探しに来たのです」
「わかった。じゃあ俺に対しても畏まらなくて良いからね。それでスフィル、君は食材を探しに?」
「そうです。ここから少し行ったところにわたしたちの里があるのですが、食料が足りなくなってきちゃいまして……」
なるほど、食糧危機か。
「そこでお願いがあるんです」
スフィルは俺のことをじっと見つめてきた。
美しいな。
「先程から感じられるこの魔力、そして扱い方。ルシオさんは魔力に精通しているのでは、と思うのです!」
「ま、まあ……」
自分で言うのもだけど、知ってる方ではあると思うよ。
「だから、わたしたちの里にきてもらえませんか!」
「!」
ふーむ、そういうことか。
この森の食材は、特に魔力と関係が深いみたいだからな。
そんな俺を呼びたくなるのも分かる。
が、
「あの、リーシャさんは、どうでしょうか……」
「別に、行ってあげてもいいけど」
お、お許しが出た!
リーシャも困っている人を前にすると、助けてしまう性格だからな。
俺としてはもちろん「行く」の一択だったんだけどね。
「じゃあその前に一つ。食糧危機の原因は分かっているの?」
「そ、それが……」
「?」
スフィルは、少し丸めた手を口元に当てて、恥ずかしそうに話した。
「わたしたちの里では、料理が大流行してまして……」
「料理!?」
「はい。経緯は説明すると長くなりますが、明らかに使う量は増えているかと」
なんじゃそりゃ。
てっきり、魔力の回路が壊れて大量にダメになったとか、そういう話かと思ったが……。
「……あの、それが原因なのではなくて?」
「ち、違うんです! それもある……とは思いますが、明らかに収穫量自体も減ってるんです」
「そうなのか」
そういうことなら、一応の納得は出来る。
「わかった。とりあえず里にお邪魔させてもらうよ」
「……!」
「それと」
俺はちらっとフクマロの方を確認すると、迷わず頷いてくれた。
「一旦、ここの食糧も分けるよ。収納できる魔法を持ってるから、どうぞお好きに選んで」
「そんな、あ、ありがとうございます!」
もちろん単なる厚意でもあるのだが、こういう時は持ちつ持たれつ。
ご近所さん(この森基準)でもあるみたいなので、仲良くなりたいと思う。
たしかに、この大自然
エルフさん達の食いっぷりを見てないから、はっきりとは言えないけど。
あとは……単純に楽しみ!
スフィルのようなエルフがたくさんいる里にご招待?
こんな機会、逃すはずがないだろう!
というわけで、いっちょ行きますか!
エルフの里!
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