第10話 現れた小動物(?)
「リーシャ!?」
果物の実がなるエリアに駆けつけると、腰を抜かすリーシャがいた。
「ル、ルシオ……あれ……」
「ん?」
恐ろしいものを見る目で、その場に座り込むリーシャ。
そんなに怯えて、一体何がいるって言うんだ……。
俺は、覚悟を決めてゆっくりとその方向を振り向く。
彼女が指差した方向には、なんと……
『モグモグ』
「あらまあ」
なんとも可愛らしい“リス”が木の実をモグモグしていた。
前世と変わらず、茶色の体毛に黒のしましまは顕在で、体長は50cmぐらいかな?
前世のリスと比べるとかなり大きいが、生命の源である魔力の濃さから考えると、十分に考えられるサイズである。
『モグモグ、ボリボリ、モグモグ……』
可愛らしいリスちゃんは、俺が来ても木の実を一心に食べ続ける。
まるで俺やリーシャの事が目に入っていない様だ。
その様子は、その様子は……
「なんて可愛いんだ!」
俺はもうメロメロになり、足が自然にリスちゃんに向く。
「ちょ、ちょっとルシオ!?」
「大丈夫だって」
リーシャは魔獣だと思って恐れたのだろうが、俺にはそうは見えない。
どう見ても愛すべき可愛い奴なのだ。
「おーいリスちゃん。こっちへ──」
バチッ!
「いてっ! ……なんだ?」
リスちゃんへ触れようと手を伸ばすと、体に触れる直前に静電気のようなものが走った。
っていうかあれ……この森って、こんなに寒かったっけ。
なんだか急に、今までは感じなかった肌寒さを感じる。
そう思って肌寒い風が来る場所を探ると……
「あ!」
さっきの電撃も、この肌寒さも、全てこのリスちゃんからだ!
『お主、ここにいたのか。って、そいつから離れろ!』
「へ?」
俺を視界に入れたフェンリルが急に声を上げるが……
ちりっ。
「ん?」
時すでに遅し。
気づいた時には……
「なあ!? あちゃ、あちゃ! あっつ!」
俺の服が燃えていた。
ぐっ、『水魔法』、『回復魔法』!
しかし、パンツ以外の服が燃えてしまった。
一体なんなんだよ……。
『モグモグ……ごっくん。あー、美味しかった。あれ、どうしたのですか。それにその格好……変態ですか?』
食事は終わったらしいリスちゃんがこちらを向き、不思議そうな顔をした。
本人は何の自覚もないようだ。
……俺が言いたいことは一つ。
「お前のせいだよー!」
俺の声は森中に響き渡った。
『そうだったのですね。私がやっちゃたんですね、ごめんなさい』
それから、俺はとりあえず替えの服を着て、リスちゃんをコテージ前に招いた。
コテージ内は入れられない、燃えると危ないからな。
「俺もただのツッコミだから。怖がらせちゃっていたら、ごめんね」
『ツッコミ? よく分かりませんが、怒ってないなら良かったです』
「うん」
さて、一応和解は成立。
少し話を聞くと、このリスちゃんはたまにここへ木の実を食べに来たり、食料を漁りに来るそうで、フェンリルとは知り合いだった。
所有権とかいう面倒なものもなく、心も広いフェンリルはリスちゃんに自由にさせていたそうだ。
そこまで聞いたところで……。
さて、次はどこからツッコもうか。
「ていうかまず、しゃべれるんだね」
『膨大な魔力を吸っていますからね。知能が発達しています』
「そ、そう……」
可愛いが言葉遣いがしっかりしているな。
なんだこれ、さっきからギャップ萌えが止まらない。
改めて、魔の大森林の偉大さがよく分かる。
「名前は? いや、あるのかな」
『私は『モグりん』と言います』
ほう、このリスちゃんには名前があるのか。
モグりん、可愛い名前だ。
それなら、次は一番気になる事を聞く。
「じゃあ、さっきの色んな攻撃は? 魔法にも見えたけど」
『それなのですが……」
「?」
モグりんはちょっと気まずそうにしたため、代わりにフェンリルが口を開いた。
『我から話そう。何しろ、
「無意識?」
『そう。モグりんは、食事に夢中になり過ぎると、無意識に様々な属性魔法を周囲に放ってしまうのだ』
「ええ……」
どういうことだよ。
魔の大森林、偉大どころかやっぱり怖くなってきたよ。
『すみません、最近は抑えられるようになってきたのですが……』
「あ、いや、ううん。そういうことなら良いんだよ」
良いのかは分からないけど。
それより、そうなってくると別の心配が生まれる。
「さっきの火属性魔法とか、森に移って山火事になったりしないの?」
『その心配は無い。濃すぎる魔力によって、逆に火の方が消されてしまうからな』
「そう、なんだ……」
山火事が起きない森って、不気味だけどすごいな。
そういうことなら、一応の納得は出来る。
俺の服には耐性など無いし、簡単に燃えてしまったってわけだ。
『本当にごめんなさい』
「ははっ、いいよいいよ」
モグりんは本当に申し訳なさそうにしている。
俺も怒っていないし、あれこれ聞くのもここまでにしてあげよう。
なんて考えながらその愛らしい姿を見ていると、
『その代わりと言っちゃなんですが』
「ん?」
『私に……料理を提供させていただけませんか!』
モグりんが謎の提案をしてきた。
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