第四十一話『観客席の奴ら』


「チケット、いい感じの奴取れたな!」


「ん。観戦する」


一週間前から既に、観客席の予約が始まっていた。抽選販売だが、リジュとリルの二人は、既にチケットを入手していた。ちなみにガルとリンの二人は、チケットを入手出来ていなかった。


「どうしよお兄ちゃん……」


「まぁ一応無い訳じゃないから。大丈夫でしょ。それに、まだチケットはある」


一般席もあるが、そちらも同じように観客でいっぱい、一種のお祭りのような物であるから、当たり前ではある。観客用の入り口は人で満員、もはや何人いるかは分からない。


「そう言えば今回、他の高校から来るって聞いたが?パンフレットに載っているが……」


「知らないのある」


「だよね?この学園……あったっけ?」


名前のある学校、もしくは学園が軒を連ねるのだが、その一つによくわからない学校が混じっていた。名前は『イカミ高校』。初戦でヤノカら率いる学園と対決する所である。


「記憶にない。でも新しくできた可能性」


「そうだよね……。あっそろそろ始まるぞ!」


「……キャラブレブレ」


色々と言いたいことがあるが、リジュはあの中二病キャラを最近辞めようとしているらしい。中々友人が出来ない理由を、あの無駄な中二病であると最近気が付いたらしい。


そして二人が席に着いたと同時に、各選手入場が終了したようであった。そのまま第一試合が始まる。第一試合の内容は、ヤノカらの学園VSイカミ高校。


『さぁ始まりました他校対決交流試合!今回は選りすぐりの八校が戦う、かなり激しい戦いになるでしょうね!』


『そうだな。あぁ解説のシャードだ。今日はよろしく頼む』


解説席にいるのはシャードともう一人『エグゼ・ティブ』。司会役としてよくイベントにいる奴である。我流魔法は『拡声器ハイ・ボイス』。声をメチャクチャデカくする事が出来るだけの我流魔法。


『さて!えー今回まず戦う事になったのは……。イカミ高校と……コレなんて読むんですか?』


『さぁな。ウチの学校名前分かんねぇんだよ。まぁ校長が言うには『ホフリ』って言うらしい。今度からそれで頼むよ』


『はぁ。……ではイカミ高校VSホフリ学園の対戦に入ります!各選手前へ!』


そして第一試合が始まる。対戦する場所に転送されたヤノカらは、早速ヤノカ一人を敵陣に向かわせる。その間に、フィルはスターに気になっていた事を質問する。


「なぁ」


「なんですわ?」


「……色々聞きたかったんだけどさ。なんでお前そこまであいつの事が嫌いなんだ?」


「平民が嫌いなんですわ」


それは、スターの平民嫌いについて。あまりにも嫌いのドが過ぎるのではないか?と常々思っていた。と言う訳でこの際直接聞いてしまえと、そういう事になった。


「だからって、お前は明らかに異常だ。その嫌い方は何か……過去に、あったのか?」


「……」


黙り込むスター。まぁ言いたく無い事もあるか……と、言わなくていいと言おうとした時、スターが口を開いた。


「私は……」


一方のヤノカは、一人で三人を相手に大立ち回りをしていた。クロクで剣を作ると、それで三人をひたすらボコボコにしていた。


「この野郎!くらえ『散弾銃ショットガン』!」


三人の一人が我流魔法で散弾銃を作るが、銃口にクロクを詰め込み暴発、二人目は既にクロクで拘束されており動けない。三人目ももう戦意を喪失しているようであった。


『あーあもう一方的ですねこりゃ』


『まぁ。そもそも普通の対戦なら、あいつに勝てる奴はほとんどいないしな。舐めプって言うか、合理的戦闘だ』


『実際全然ダメージすら与えられていません!なぜ勝ち残ったのかイカミ高校!』


そしてたった五分で、三人は敗北していた。終わったのでヤノカがフィルらの元に戻ると、なんというか少し虚しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「……色々あってな。まぁお前が何を言いたいかは分かった」


「……えぇ。そういう事ですわ」


「?」


全く話に付いていけないヤノカ。初めから聞いていないのだから、そりゃそうである。とは言えこれで一回戦を無事勝利。これで次戦に臨めると言うものである。


『さぁと言う訳で……ホフリ学園の勝利!さぁ次の戦闘へ向かいましょう!』


『次はえー……コレなんて読むんです?』


『これはシンクだ。じゃ次』


『ではシンク高校VSトトリ高校となります!えー十分間の休憩入ります!』


戦闘が終わったところで、早速控室に戻る三人。次の相手は先ほどヤノカに絡んできたランゲイジ率いるシンク高校。一体どういう戦法を取るのかと、見逃せない戦いとなっている。


「そう言えばお茶無いね」


「ですわね。まぁ私は自前の茶がありますので。では」


「あっそう……。まぁ僕も持ってきてるけど」


「……あれ?もしかして俺だけ飲み水持って来てない感じ?」


「んまぁ、そう」


仕方なくフィルだけ水を買いに行き、そのまま試合が始まってしまう。

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